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Part1 頭頸部領域
02
中心溝を同定するツボ

前項では脳葉の解剖について述べたが,本項ではその際に最も重要な中心溝の同定について述べる.

中心溝の同定
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中心溝は「前頭葉と頭頂葉の境界」であり,また中心溝の前は運動野で後ろは体性感覚野という機能解剖のうえでも重要な境界線となる.
- 中心溝を同定する実用的なポイントは3つある.すなわち①中心溝の直前の脳回(中心前回)が直後の脳回(中心後回)よりも厚い,②中心前回や中心後回は前後方向(前頭部-後頭部方向)に走行するほかの脳溝と交わらない,③中心前回のうち,ホムンクルスの手指に相当する部分は特に厚く,逆Ω(オメガ)形,あるいは横ε(イプシロン)形となる.
前項01「脳のvascular territoryと脳葉の画像解剖」でも述べたように,頭部CTやMRIの横断像(軸位断像)の撮像は,CTではOM line(orbitomeatal line:眼窩耳孔線),MRIではAC-PC line(anterior commissure-posterior commissure line:前交連-後交連結合線)が基準線である.これらの基準線で撮像された場合 ,頭頂寄りのスライスでは「前半分が前頭葉,後ろ半分が頭頂葉」という分布となる(01図4の⑩~⑫).この「前半分の前頭葉」と「後ろ半分の頭頂葉」を境界しているのが「中心溝」である.この中心溝を同定する実用的なポイントは3つあり,以下に詳細を述べる.
① 中心溝の直前の脳回(中心前回)が直後の脳回(中心後回)よりも厚い2)
図1において,中心溝(➤)の前に存在する中心前回()は,中心後回(
)よりも厚いことが確認できる.

図1 中心溝の同定(T2強調軸位断像)
脳回を矢印,脳溝を矢頭で示す.
②中心前回や中心後回は,前後方向(前頭部-後頭部方向)に走行するほかの脳溝と交わらない
中心溝付近を前後方向に存在する脳溝の代表例として,上前頭溝や頭頂間溝があげられる.図1において,上前頭溝(➤)は中心前回()の前縁に接した部分で終わっており,中心前回とは交わっていない.また頭頂間溝(
)は同様に中心後回(
)の後縁に接した部分で終わっており,中心後回とは交わっていない.
③中心前回のうち,ホムンクルスの手指に相当する部分は特に厚く,逆Ω(オメガ)形,あるいは横ε(イプシロン)形となる2)
医学部の学生のときに必ず習う,古典的に有名なペンフィールドのホムンクルスの図(図2)において,右側の「運動野」が中心前回に相当するが,手指は巧緻運動(食事,更衣,筆記などの細かい動き)を司るため,その中心前回の手指に相当する部分(図2 )が図1の に示すように厚くなっている.この状態を逆Ω(オメガ)形,あるいは横ε(イプシロン)形と表現し,逆Ωに関しては,「inverted omega sign」という用語も存在する.盛り上がりの「山」が1つなら逆Ω,2つなら横εである.図1は左右とも逆Ω形である.

図2 ペンフィールドのホムンクルス
ペンフィールドのホムンクルスは大脳皮質の運動野,感覚野における身体の対応を示した図として世界的に有名である(「ホムンクルス」はラテン語で,本来は「小人」の意). は筆者による.
文献3より引用.
中心溝の同定は,まずちゃんとした基準線で撮像されているかを確認した後に,3つのポイントを使って確認していく.