第81回 画像診断クイズ(頭部)
正解
正解は選択肢2 可逆性脳血管攣縮症候群(reversible cerebral vasoconstriction syndrome : RCVS)
所見
両側後頭葉の脳表の小血管がFLAIRで高信号を示し、脳血流のslow flowを反映した所見と考えられる。また、MRAでは両側後大脳動脈に分節状の狭窄が散見される。拡散強調像およびADC mapでは異常所見を認めない。患者背景や突発性の強い頭痛症状も考慮すると、可逆性脳血管攣縮症候群(reversible cerebral vasoconstriction syndrome : RCVS)が最も考えられる。
診断
可逆性脳血管攣縮症候群(reversible cerebral vasoconstriction syndrome : RCVS)
解説
可逆性脳血管攣縮症候群(reversible cerebral vasoconstriction syndrome : RCVS)は突発性の激しい頭痛(雷鳴様頭痛)を主徴とし、一過性で多発する脳血管攣縮を認める症候群である。攣縮の多くは3ヶ月以内に改善する。基本病態は頭蓋内の交感神経過活動、血管内皮細胞機能異常に起因する脳血管緊張の調節障害と推定されているが、完全には解明されていない。産褥、輸血、薬剤などが発症の誘因とされている。患者の平均年齢は45歳前後で、女性に多い。
画像所見としては、MRAで攣縮を示唆する分節状の血管狭窄と拡張を認める。また、発症初期には末梢血管のみに認められ、経時的に近位側に攣縮が移行することが特徴的である1) 。そのため、発症1週間以内の場合、MRAでは所見が不明瞭なことがあるが、FLAIRでは脳表血管の高信号(hyperintense vessel sign)を捉えられることがある2) 。また、本症例では認めなかったが、合併することがあるくも膜下出血は円蓋部の脳溝に限局する少量の出血が多く、この検出にもFLAIRは有用である。他の合併症としては、皮質下出血、分水嶺脳梗塞、可逆性後頭葉白質脳症(posterior reversible encephalopathy syndrome : PRES)が知られている。なお、原発性中枢神経系血管炎(Primary angiitis of the central nervous system)との画像での区別は難しいが、本症例では若年女性、産褥期、突発性の強い頭痛症状を考慮すると、RCVSの方が考えやすい。
参考文献
- Shimoda M, et al. 2016. “Centripetal Propagation of Vasoconstriction at the Time of Headache Resolution in Patients with Reversible Cerebral Vasoconstriction Syndrome.” AJNR. American Journal of Neuroradiology 37 (9): 1594–98.
- Chen SP, et al. 2012. “Hyperintense Vessels on Flair Imaging in Reversible Cerebral Vasoconstriction Syndrome.” Cephalalgia: An International Journal of Headache 32 (4): 271–78.
出題者からのコメント
RCVSに特徴的とされるMRAでの血管攣縮とその経時的変化に加え、FLAIRでの血管内高信号にも目を向けていただきたいという意図で作成いたしました。