第79回 画像診断クイズ(胆嚢)
正解
正解は、選択肢3
解説
胆嚢捻転の典型的症例である。単純CTと造影CTを比較すると、胆嚢粘膜は全周にわたって造影効果がほぼ消失している。胆嚢頸部は右下にあり、体部~底部は心窩部に存在しており、不自然に偏位している。この時点で胆嚢捻転が非常に疑わしく、胆嚢頸部に注目すると、図3や図5の矢印で示した部位で捻転しているように見える。
胆嚢捻転は、通常は肝床部に固定されている胆嚢が、固定が不十分な遊走胆嚢の状態を背景として胆嚢頸部~胆嚢管で捻転を起こし,高度の血行障害を生じる急性腹症である。高齢のやせ型の女性に多く、先天的に遊走胆嚢の患者だけでなく、羸痩の強い患者の腹圧上昇や姿勢(前屈位)・亀背・脂肪減少などの影響で後天的に不完全な遊走状態になるとも推測されている。遊走胆嚢を背景としているため、経皮的胆嚢ドレナージは胆汁漏出の可能性があり推奨されない。緊急での胆摘術の適応となる。
出題者からのコメント
本症例では読影で胆嚢捻転の可能性を指摘し、すみやかに腹腔鏡下胆摘術が施行された。胆嚢頸部は180度ほど反時計周りに捻転しており、摘出標本では胆嚢粘膜はほぼ全周性の黒色壊死を認めた。特に術後トラブルなく、術後8日目に退院となった。
胆嚢捻転は術前CTで強く疑うことができれば、PTGBDを考慮することなく、すみやかに腹腔鏡下胆摘術を施行することができ、治療方針に大きく寄与する。忘れたころにやって来るので、確実に診断したい。