第77回 画像診断クイズ(頭部)
正解
正解は選択肢4 脳室拡大の改善に関連する。
診断:サイホン効果による硬膜下血腫。
画像所見
画像1,画像2: 橋前槽、小脳橋角槽に,くも膜下出血を認める。Luschka孔を経由して第4脳室から,第3脳室,両側の側脳室に及ぶ脳室内の血腫を認める。
3: Evans index=0.38の脳室拡大が出現している。右の前頭葉には,急性期の脳室ドレナージの瘢痕が低吸収として認められます。
4: 右の頭頂部から,脳室-腹腔短絡術のシャントのチューブが挿入されている。脳室拡大は改善しているが,右の前頭部頭頂部に、硬膜下血腫の出現を認める。
疾患の解説
サイホン効果による硬膜下血腫
水頭症に対する治療として,脳室と腹腔や心房とを短絡させて脳脊髄液を排出させる,シャント術が広く行われています。シャント術の合併症には,感染,閉塞,そして脳脊髄液の過剰流出があります。過剰流出は,立位,座位の体位の変化によって,また小児の活発な体動によって,サイホン効果により生じ,脳表血管へのストレスなどから,硬膜下血腫が出現する事があります。現在のシステムでは,シャントチューブの途中に髄液排出を調整するバルブが設けられており,流出圧を調整したり,過剰な髄液流出を防ぐ機能がありますが,サイホン効果を完全に防ぐことは難しいようです。治療としては,シャントバルブ圧を高く設定して人為的に水頭症を増悪させる方法、硬膜下血腫に対する穿頭洗浄術が行われます。
選択肢の解説
1, 頭蓋骨の線状骨折では,中硬膜動脈破綻による急性硬膜外血腫を生じることがあります。
2, 頭部外傷後,時間経過を経て慢性硬膜下血腫が出現することがあります。
3, シャント挿入の直後には,手術操作により生じた硬膜下血腫を認めることがあります。
経過の画像
画像5,頭部CT シャントバルブの圧を高めに設定変更し,人為的に脳室拡大の状態とした。
画像6,頭部CT 硬膜下血腫の消失を認める。
参考文献
1) 水頭症ガイドブック2002.編集:佐藤修 監修:山下泰司.発行者:日本水頭症協会,2002
2) 小林一夫.サイフォン効果防止装置を付け加えたシャントシステムの使用経験.医療44:907-911,1990
出題者からのコメント
ある遠隔読影サービスでは、多くの先生方が「慢性硬膜下血腫」と診断されていました。シャント後に発生する合併症として留意が必要です。