正解は選択肢4 硬化性肝血管腫
造影CT:肝S7に径50mmの腫瘤があり、腫瘤の中心部に若干の造影効果がみられるが、全体として内部不均一な乏血性腫瘤である。
EOB-MRI:肝S7の腫瘤はT2延長、T1短縮を呈しており、拡散制限は見られない。Dynamic-studyでは早期から後期相にかけて増強効果は乏しい。肝細胞相ではEOBの取り込み低下を認める。
肝硬化性血管腫
肝硬化性血管腫は海綿状血管腫が線維性置換、ヒアリン変性によって退行変性をきたした、まれな良性腫瘍である¹。
変化が部分的なものをsclerosing cavernous hemangioma: SCH、広範なものをhepatic sclerosed hemangioma: HCHと分類している¹ 。
肝硬化性血管腫は海綿状血管腫の典型的な画像所見を欠く場合があり、画像のスペクトラムは多彩である。肝悪性腫瘍との鑑別が困難になる場合があり、切除検体の病理学的検査によって発覚する例が多い。本症例もEOB-MRIでは典型的な転移性肝腫瘍の画像所見ではなかったが、患者背景から否定できず、外科的加療となり今回の診断に至った。
以下、別例を提示するが、こちらの症例では腫瘤辺縁から漸増性の造影効果が目立ち、海綿状血管腫としての所見が目立っている(参考図)。このような硬化性血管腫の画像所見の多彩さは、海綿状血管腫の残存程度や変性の程度が影響していると考えられている¹ ²。
参考図: a:単純CT、b:造影CT 動脈相、c:門脈相、d:平衡相
出題者からのコメント
肝血管腫は日常診療でよく目にする疾患ですが、本症例のように非典型な画像所見を呈する症例もたびたび見られます。典型的な血管腫とも肝悪性腫瘍とも言い難い症例では、硬化性血管腫も鑑別疾患に挙げられるという意図で出題しました。