正解は選択肢1 (拡大)血管周囲腔
血管周囲腔は軟膜に覆われた間質液の貯留腔であり、実質内を走行する穿通枝を囲んでいる。Virchow-Robin腔とも呼ばれる。基底核下部、中脳、大脳深部白質や島皮質下でしばしば認められる。上側頭回前部においては画像上自然消退する血管周囲腔の存在が知られていたが、Rawalらの組織学的検討を加えた報告以降、広く認知されるようになった。画像所見ではいずれのシーケンスにても脳脊髄液と同等の信号強度を呈し、内部に連続する脈管様構造が同定される事もある。Limらの検討では周囲にT2延長域を伴う事が多いとされ(31/39, 79%)、RawalらおよびLimらの組織学的検討では反応性のastrocyteや脱髄、gliosisを反映するとしている。自然消退する事や退縮後に再度出現する事があり興味深い。Glymphatic systemとの関連も近年相次いで報告されており古くから知られている概念ではあるが未解明の領域である。
右上側頭回前部に、全てのシーケンスにて脳脊髄液と同等の信号強度を呈する構造を認める(図矢印)。周囲には後方優位にT2強調像・FLAIRにて高信号を呈する構造を認める(図矢頭)。ADCは周囲実質より高値を示す。いずれの構造も増強効果はみられない。
画像1: T2強調像
画像2: 拡散強調像(b値=1000 s/mm2)
画像3: ADC map
画像4: FLAIR像
画像5: T1強調像
画像6: 造影T1強調像
出題者からのコメント
脳実質内“腫瘤”の一つで、局在・画像所見が特徴的であるため症例提示を致しました。生検など不要な侵襲を防ぐ事で患者さんに有益であるだけでなく、主治医との信頼関係構築に繋がる事が期待されます。