第67回 画像診断クイズ(頭部)
正解
正解は選択肢1 蝸牛内神経鞘腫
画像所見
heavy T2WIにて蝸牛の基底回転と中回転内部に限局性の低信号域があり(画像1、2矢印)、造影後の脂肪抑制併用T1WIで同部位は均一に増強される(画像3、4矢印)。病変の境界は明瞭である。
診断
蝸牛内神経鞘腫(intracochlear schwannoma)
解説
蝸牛内神経鞘腫(intracochlear schwannoma)は迷路内神経鞘腫瘍intralabyrinthine schwannoma (ILS)のうちの一つであり、蝸牛神経、上・下前庭神経末梢端部から発生する良性腫瘍である。Kennedyらは病変の局在と進展範囲からILSを7つに分類している。病変の多くは10 mm以内と小さく、以前は剖検や人工内耳手術時に発見されていたが、MRIの高分解能化により発見される頻度が増えている。一側性の難聴(進行性難聴、突発性難聴、変動性難聴のパターンがある)と耳鳴り、めまいを呈するため、メニエール病と診断されていることもあり、MRIでの適切な撮像と診断が必要になる。しかし、症状発症初期にはMRIで指摘ができない場合があるため、初回MRI時に異常が指摘できなくても難聴の進行が見られた場合にはMRIの再検を検討する必要がある。主な鑑別疾患に迷路炎と肉芽腫が挙げられる。迷路炎は迷路全体にわたる異常信号と境界不明瞭な増強効果を示す。迷路内肉芽腫は迷路内神経鞘腫との厳密な鑑別は難しい。
手術により聴力は犠牲になるため基本は経過観察であるが、有用聴力の消失(平均聴力50 dB未満または語音明瞭度50%以下)、重度のめまい、小脳橋角部や中耳への進展では手術適応(外科的摘出手術、定位放射線照射)となる。
出題者からのコメント
聴神経腫瘍を疑ってMRI検査を行う際は、constructive interference in steady state (CISS)やthin sliceheavy T2WI、thin sliceの造影 T1WIなど適切な撮像法を選択し、内耳道や小脳橋角部だけではなく迷路内も確認することが必要。