画像診断クイズ

画像診断クイズ

第64回 画像診断クイズ(頭部)

正解

正解は選択肢3 内耳道内限局型聴神経腫瘍
 

解説

よく見るとT2強調像横断像で内耳道内に左右差があり,右側で小さな結節を認めます.ただし,横断像は往々にして,わずかに傾きがちです.その場合は,本症例のように左右の構造が同一平面上に描出されておらず,直接の比較が難しいため,見逃しの原因となります.

また,管腔構造の内腔を見るには,長軸方向だけでなく短軸の断層像が欠かせません.管腔構造が弯曲していたり,断層面に対して斜めに横切ることがあると,内腔の描出が修飾されるからです.T1強調矢状断像では,内耳道に対して短軸断面に近くなるため,横断像よりも内耳道内の評価は容易となります(画像2ab).

さらに,健診/検診では病歴や身体所見を精確に調べていないことも多く,これもうっかり見逃しの原因となります.この場合には,自分なりに画像を見る手順を決め,それをスキップせずに必ず守るというのが対策となります(画像上での名前,年齢などIDの確認→脳実質→脳室系→脳動脈→脳静脈→内耳道→乳突蜂巣→顎関節→頚椎→副鼻腔→眼窩→頭皮など視点の移動手順を守る).

本症例では2年の経過で緩徐に増大していますが,症状も無いため,引き続き慎重に経過観察されています(画像3).
 

第64回 画像診断クイズ(頭部)

画像1g: T2強調像(再掲)
画像2a, 2b: T1強調矢状断像(再掲)
画像3: CISS(constructive interference in steady state)(2年後)

出題者からのコメント

①画像は多方向から立体的に観察しましょう
②臨床情報から予断をもって演繹的に画像を見るだけでなく,前情報を一次保留にして真っ新な気持ちで画像所見のみから診断に迫る帰納的な視点も大事です
という症例提示でした(単なる自戒です,はい).