第63回 画像診断クイズ(肺)
正解
正解は選択肢2 術後数週間後に発症することが多い
解説
胸部単純写真では右上中肺野に辺縁明瞭な透過性低下領域を認める(図1)。胸部造影CTでは肺門部で中葉の気管支・肺動脈・肺静脈の途絶を認める(図2-4:円)。中葉は膨張し、全体にすりガラス影、consolidation、小葉間隔壁肥厚を認める(図5)。中葉では末梢の肺動静脈が造影されていない(図6)。中葉捻転による肺うっ血・肺出血・肺虚血の状態である。緊急で開胸手術となり術中所見で中葉は色調が変化しており、肺梗塞の状態と判断され、捻転解除ではなく切除術が施行された。術後病理所見では中葉に肺うっ血・出血の所見がみられたが、梗塞には至っていなかった。
本症例は肺葉捻転の症例で、肺葉気管支の捻れと、それに伴う肺動静脈の血流障害が病態である。肺葉切除後の0.09%~0.4%に発症し、胸部外傷や自然気胸後に発症した報告もある。術中から術後1-2日目に発症することが多く、選択枝2は正しくない。上葉切除後の中葉捻転が最多である。危険因子としては解剖学的因子として肺気腫等による胸郭の拡大、肺分葉が完全で癒着が少ない、肺門が狭小で気管や血管が長い場合が挙げられる。手術因子としては肺靭帯や葉間の過剰切離、胸水や無気肺の存在が要因となり得る。症状は発熱、血痰、咳嗽など非特異的であり、臨床症状のみでの診断は難しく、造影CTによる画像診断が重要な役割を果たす。治療は手術で捻転解除を行う。合併症として肺静脈内に生じた血栓が捻転の解除によって流出し、脳梗塞を発症した報告例があり、術前に肺静脈内血栓の有無を確認しておくのが良い。
出題者からのコメント
肺葉捻転はまれな合併症ですが、画像診断の果たす役割が大きく、すべての放射線科診断医が知っておくべき緊急疾患の一つと考え、出題しました。皆様の日々の診療にお役に立てば幸いです。