第58回 画像診断クイズ(肺)
正解
正解は選択肢2 非結核性抗酸菌症
所見
両肺に多巣性にすりガラス陰影やconsolidationが存在し、細気管支病巣や樹枝状影も認められます。また気管支壁はびまん性に肥厚しています。胸膜や静脈に沿った病巣は認められません。有意な肺門・縦隔リンパ節腫大は指摘できません。
診断
当初、細菌感染が疑われましたが、3連痰が行われ、Mycobacterium avium が検出され、抗MAC抗体陽性が確認され、MAC 症の診断となりました。適切な抗生剤治療が行われた結果、単純写真で陰影は改善し、炎症反応や呼吸困難感もすぐに改善し、1週間後に退院となりました。
ポイント
細菌性肺炎としては、両側ほぼ対称性の分布を呈することから非典型的な印象を受けます。細かな細気管支病巣は過敏性肺臓炎で見られうる所見ですが、通常はびまん性ないし広範に認められます。本症では気道散布病巣を呈しており、経気道感染症のなかで、この様な広範で多彩な陰影を呈し得る病態に何があるだろうと、考えることが重要かと思われます。その中で、外すことができないのが抗酸菌感染症ということになります。結核に特異的な細葉性陰影(呼吸細気管支~肺胞管にわたって乾酪性炎症が起こり、周囲肺胞までには滲出性炎症が拡大せず肉芽で分界される像)があれば、抗酸菌の中でもとりわけ結核を想起しやすいですが、認められない場合、結核と非結核性抗酸菌症の鑑別は困難なことも多いので、両者を含めて確認してもらうのが better と思われます。サルコイドーシスでも多彩な陰影を呈しますが、胸膜や静脈など明らかな広義間質と言える領域に病巣はなく、縦隔・肺門リンパ節腫大も認められないことから、疑う根拠に欠けます。薬剤性肺炎も多彩ですが、細気管支病巣が混在する場合は、仮に薬剤性肺炎が背景にあったとしても、別個の感染症が混在していないか、2元的に考える必要が出てきます。
出題者からのコメント
多巣性のconsolidation をきたす疾患は多岐に渡りますが、散在する気道散布病巣を認めた場合は抗酸菌感染症を疑う根拠となりますので、出題いたしました。