第56回 画像診断クイズ(骨、心血管系、肺、腎臓)
正解
正解は選択肢4 Erdheim-Chester病
画像所見
造影CTで右房や右冠動脈周囲、両側腎門部、腹部大動脈周囲などに造影される軟部像が認められる。
FDG PET/CTでは両側上肢の長管骨遠位端に異常集積が認められる。
これらの画像所見を一元的に考えると、Erdheim-Chester病を初めとする組織球症が考えられる。
解説
Erdheim-Chester病は中年男性に発症するまれな非ランゲルハンス組織球症の一病型で、様々な症候を特徴とする多系統疾患であり、心血管系の異常、腎障害、骨痛を伴う骨格異常、眼球突出、尿崩症などが認められる。
組織学的に、泡沫状の組織球が黄色腫として組織に浸潤している。生検検体の免疫組織化学染色では、CD68やCD163の陽性およびCD1aやCD207の陰性が特徴である。
腹部CTでは、腎周囲に浸潤する軟部像「hairy sign」が半数の症例で認められ、同病変は生検が可能である。また、骨のX線撮影では長管骨に両側対称性の骨皮質硬化が認められ、骨シンチグラフィーでは症例の80%~95%に下肢(時には上肢)の長管骨遠位端に対称性の異常集積が認められる。本症例でも、後日に骨シンチグラフィーが撮像され、四肢の異常集積が認められた(図)。
参考文献
Kenneth N Huynh, Ba D Nguyen. (2021), Histiocytosis and Neoplasms of Macrophage-Dendritic Cell Lineages: Multimodality Imaging with Emphasis on PET/CT. Radiographics.2021 Mar-Apr;41(2):576-594
出題者からのコメント
ECD の原因は長らく不明でしたが、近年になり癌遺伝子である BRAF 遺伝子や NRAS 遺伝子などの変異が認められると報告されています。長管骨遠位端の病変が80%~95%の頻度で認められるため、これらの病変をFDG PET / CTまたは骨シンチグラフィーで評価することが重要です。