第44回 画像診断クイズ(胸部)
正解
正解は選択肢3
解説
肺原発腫瘍は肺癌が大部分を占め、悪性リンパ腫は1%以下と稀である。
本症例は、気管支鏡で右上幹に見られた隆起性病変より経気管支生検を行い、悪性リンパ腫(aggressive B-cell lineage lymphoma, DLBCL相当)と診断した。単純X線写真上、右胸水の貯留と右肺門腫瘤影を認め、右上幹が不明瞭である。CTで右肺門に広がる不整形腫瘤で縦隔リンパ節と連続している。肺癌を鑑別から排除できる画像ではないが、CT angiogram signが見られ、肺動静脈が腫瘤を貫いている。また、気管支も狭小化はしているが、残存し、末梢肺の含気も保たれている。この程度の大きさの肺癌ではこれらの脈管に浸潤し、閉塞していることが多く、非典型的な印象を受ける。ここで疑念を持ち、悪性リンパ腫などのリンパ増殖性疾患の可能性を想起することが重要である。悪性リンパ腫では、腫瘍内を正常血管が貫くことは、他臓器においてもしばしば経験するところである。
出題者からのコメント
悪性リンパ腫の分類は、病理組織検査に加え、免疫組織およびフローサイトメトリーを用いた免疫学的検索、さらには分子・細胞遺伝学的検索が重要となっている。このため、肺癌を疑い行う通常の病理組織検査では不十分であり、一度、悪性リンパ腫が病理診断された後で再生検が必要となることがある。この事態を避けるために、画像診断の段階で悪性リンパ腫を鑑別に上げ、血液内科との連携を呼吸器科に想起させることが肝要である。