第30回 画像診断クイズ(骨盤)
正解
正解は選択肢1
解説
画像所見
子宮左側壁漿膜下筋層に単房性腫瘤を認めた。嚢胞内はT1強調像で低信号(非表示)、T2強調像で高信号を呈し、嚢胞内腔表面壁在にはT2強調像で軽度高信号、拡散強調像で高信号(ADC低下)を示す充実部を認めた。この充実部は造影にて均一な造影効果を認めた。この充実部の近傍の子宮左側壁には子宮腺筋症を示すT2強調像で境界不明瞭な低信号域を認めた。左卵巣に異常は認められなかった。
診断
子宮アデノマトイド腫瘍
問題を解く上でのポイント
アデノマトイド腫瘍は子宮漿膜や筋層に発生する中皮細胞由来の良性腫瘍である1-3)。多くは筋腫に類似した境界明瞭な結節を漿膜下筋層に形成する。発育速度は緩徐でほとんどは無症状である3)。子宮における発生頻度はおよそ0.12~1.2%とされているが1)、多くは子宮筋腫や子宮腺筋症の診断で手術された際に偶然的に発見され、実際に報告されているよりも頻度は高いと考えられている。文献では、solid type、adenoid type、angiomatoid type、嚢胞主体のcystic typeの4型に分類され、adenoid type、angiomatoid typeの頻度は高く、cystic typeの頻度が最も低い1)。画像所見に関する報告は少ないが、adenoid type、angiomatoid type、solid typeでは子宮筋腫のMRI所見に類似し、Cystic typeでは多房性で、T1強調像で低信号、T2強調像で高信号の嚢胞と充実部を有する場合はT2強調像で子宮筋層と等信号~軽度高信号を呈していたとの報告が多く2-5)、単房性は稀である。本例のように一見すると卵巣上皮性悪性腫瘍のように壁在結節を有する子宮アデノマトイド腫瘍も存在するため、子宮に接する嚢胞性腫瘤を認めた場合は正確な由来臓器の特定と子宮に嚢胞を形成する疾患への理解が大切である。
今回の問題では、充実部が接する子宮筋層に子宮腺筋症を認め、同部位から発生したポリープ状子宮内膜症(Polypoid endometriosis)という選択肢も作成したが、Polypoid endometriosisはADC低下を示さないと報告され6)、誤りの選択肢とした。卵巣明細胞癌は造影にて子宮由来の病変と判定でき(卵巣実質は子宮筋層に比して造影効果は低く7)、卵巣実質と子宮筋層との間で増強効果の程度に差を認め)、誤りの選択肢とした。
Accessory cavitated uterine mass(ACUM)は子宮に嚢胞を形成する点で合致するが、内部は出血性変化を示し、辺縁の子宮筋層にJunctional zoneと同等信号強度のring状の領域を認めることが特徴と報告され8)、誤りの選択肢とした。
参考文献
- Quigley JC et al. Adenomatoid tumors of the uterus. AJCP. Nov 1981;76(5):627-635.
- Mitsumori A et al. MR appearance of adenomatoid tumor of the uterus. JCAT. Jul-Aug 2000;24(4):610-613.
- Kim JY et al. Cystic adenomatoid tumor of the uterus. AJR. Oct 2002;179(4):1068-1070.
- Matsuhashi T et al. Laparoscopic Excision of a Uterine Adenomatoid Tumor and a Coexisting Ovarian Teratoma: A Case Report and Literature Review. Journal of Nippon Medical School. 2017;84(3):139-143.
- Meng Q et al. Magnetic Resonance Imaging and Pathologic Findings of 26 Cases With Uterine Adenomatoid Tumors. JCAT. Jul-Aug 2015;39(4):499-505.
- Kozawa E et al. MR imaging of polypoid endometriosis of the ovary. MRMS. 2012;11(3):201-204.
- Outwater EK, Mitchell DG. Normal ovaries and functional cysts: MR appearance. Radiology. Feb 1996;198(2):397-402.
- Peyron N et al. Accessory cavitated uterine mass: MRI features and surgical correlations of a rare but under-recognised entity. European radiology. Mar 2019;29(3):1144-1152.
出題者からのコメント
子宮アデノマトイド腫瘍は子宮漿膜下筋層から発生することが多いため、嚢胞を形成した場合、卵巣腫瘍との鑑別を要する場合があります。Cystic typeの頻度は低いものの、充実部を有する卵巣腫瘍と評価されれば、過剰な治療法が選択される場合も考えられ、本疾患の理解が診断の一助になると考え、問題を作成しました。