第26回 画像診断クイズ(下肢)
正解
正解は選択肢3
解説
画像所見
右大腿骨骨幹のほぼ中央に横骨折が認めら、骨片の転位を伴っている。この骨折とほぼ同じ高さの左大腿骨骨幹に、外側骨皮質の肥厚(beaking)が認められる(→)。非定型骨折(atypical femoral fractures : AFF)の所見であり、右側は完全骨折、左側は不完全骨折である。
解説
非定型大腿骨骨折(atypical femoral fractures : AFF)とは、大腿骨骨幹部に発生する横骨折または短斜骨折である。片側のみの場合もあるが、この症例のように両側に見られる事が少なくない。外傷がないか、ごく軽微な外傷で発症する。AFFは高齢者の大腿骨頸部骨折に比べ稀であるが、ビスホスホネート製剤(BPs)の長期投与で発生頻度が上昇する。BPs長期投与による骨リモデリング抑制下のストレス骨折もしくは脆弱性骨折によるものと考えられている。その他、ステロイドやデノスマブ、自己免疫疾患との関連も示唆されている。この症例は8年間のビスホスホネート製剤の投与歴があった。
骨折は外側骨皮質の横骨折から始まり、内側寄りでは斜骨折になる傾向がある。完全骨折における斜骨折の断端は、スパイク(spike)と呼ばれる尖った形態を示す。大腿骨骨幹外側の横骨折は限局的またはびまん性の骨膜反応を伴う、限局性のものはくちばし状・フレア状の突出を示す (beaking/flaring)。不完全骨折は大腿骨外側に限局してみられ、MRIで限局的な骨髄浮腫が認められる(参考画像)。
治療としてはBPs投与中止のうえで、完全・非完全骨折ともに髄内釘による内固定が行われるが、癒合遅延や非癒合のリスクが高いことが報告されている。
参考画像1 : 術後CT 冠状断像 骨条件
参考画像2 : 術後MRI STIR冠状断像
参考文献
Starr J, et al. Current Understanding of Epidemiology, Pathophysiology, and Management of Atypical Femur Fractures. Current Osteoporosis Reports 16:519-529,2018
出題者からのコメント
骨粗鬆症治療におけるビスホスホネートの合併症として、顎骨壊死に並び非定型骨折も認知されてきており、骨軟部領域を専門としない場合でも臨床で遭遇する機会があると思います。単純X線の特徴的な所見を知っておくことが重要です。