第36回 画像診断クイズ(頭頸部)
正解
正解は選択肢4
解説
中学生男児に生じた下顎骨体部の膨張性腫瘤。
パントモグラフィで左第2小臼歯と第1大臼歯が離解しているが、膨張性に増大する透瞭性腫瘤による根尖吸収は認められない。MRI、T1強調像で均一な低信号、T2強調像で強い高信号を呈する。拡散強調像(非提示)でも強い高信号、ADC map(非提示)でも軽度高信号を呈し、拡散低下は推定されない。CTで腫瘍の器質に骨化、石灰化は認められず、皮質骨の菲薄化が顕著であるが、造影後、強い斑状の増強効果が認められる。MRIで頬粘膜外皮下組織に反応性変化が見られるが、骨外性軟部腫瘤は指摘できない。大きさのわりに歯根吸収がなく、エナメル上皮腫は否定的。FDGの集積が乏しく、腫瘍性類骨を示唆する硬化巣が見られず、骨外軟部腫瘤も認められないことから骨肉腫は除外。造影パターンから神経鞘腫より(顎骨中心性)血管腫がより疑われる。
摘出、開放療法が施行され、組織学的に血管腫が確認された。
顎骨中心性血管腫は多房性X線透過像を示す多数の病変との鑑別が必要なまれな疾患であるが、CT、MRIで比較的特徴的な増強効果、信号パターンを呈することから診断可能な場合がある。
出題者からのコメント
顎骨病変は歯科医以外にはなじみなく、放射線診断医には敬遠されがちですが、画像診断の基本はかわりありません。日常よく経験する肝海綿状血管腫との類似性に気づけば、診断にたどりつけるでしょう。