第19回 画像診断クイズ(肝臓)
正解
正解は選択肢2
解説
画像所見
ダイナミックCT動脈優位相では、肝S4背側に最大径31mmの多血性腫瘤を認める。内部には拡張した動脈構造が見られる。後期相で腫瘤は背景肝より低吸収を示す。後期相で被膜様濃染は認めない。ダイナミックCT動脈優位相のcoronal MIP像では腫瘤近傍の中肝静脈への造影剤の早期静脈灌流(early venous return)所見を認める。MRIのT1強調像のout of phaseで腫瘤内に明らかな信号の低下は指摘できず、明確な脂肪の含有は証明できない。逆にin phaseで腫瘤内の信号が低下しており、内部に鉄の沈着が示唆される。ガドキセト酸ナトリウム投与20分後の肝細胞造影相では、腫瘤は著明な低信号を示す。
鑑別診断
肝血管筋脂肪腫、限局性結節性過形成、肝細胞癌、転移性肝腫瘍
診断
肝生検にて肝血管筋脂肪腫と病理診断された。
解説
肝腫瘤の質的評価には、背景肝疾患の有無、形態、血流動態の評価、脂肪含有の有無、MRI信号、肝細胞造影相の信号の評価などが有用となる。本症例はまず、背景に慢性肝障害を有していないことが特徴の1つである。本症例の肝腫瘤の血行動態の特徴としては多血性であること、早期静脈灌流所見(early venous return)を有することである。早期静脈灌流所見(early venous return)を呈している点からは、肝細胞癌と転移性肝腫瘍は考えにくく、肝限局性結節性過形成(Focal nodular hyperplasia:FNH)と血管筋脂肪腫(angiomyolipoma)が鑑別診断の上位に挙げられる。
これら2つの腫瘤の血行動態は類似するが、肝限局性結節性過形成(FNH)は、肝細胞造影相で等~高信号を呈するのが典型的である。本症例は肝細胞造影相で著明な低信号を示し、肝限局性結節性過形成(FNH)は考えにくい。以上より、術前に血管筋脂肪腫(angiomyolipoma)を疑い得た症例である。肝血管筋脂肪腫は良性の間葉系腫瘍で、中年女性に多い。脂肪、血管、筋が様々な割合で混在する腫瘤である。本症例では画像上は明確な脂肪含有を証明できなかったが、肝血管筋脂肪腫では本症例のように脂肪含有の乏しいタイプも多いとされており、この点にも注意が必要である。肝血管筋脂肪腫は稀な肝腫瘤ではあるが、血行動態の特徴(多血性、早期静脈灌流所見)や肝細胞造影相所見(低信号)から典型例では術前画像診断が可能な肝腫瘤の1つであると思われる。
出題者からのコメント
この問題は肝腫瘤の質的診断にあたり、血行動態の評価、肝細胞相造影相の評価の有用性を示した問題です。これらの所見を正しく読影することで、肝腫瘤の質的診断が向上すると思い、出題しました。