第15回 画像診断クイズ(肝臓)
正解
正解は選択肢4: カルチノイド
解説
CT所見
背景肝は脂肪肝である。肝S7に単純CTで低吸収を示す腫瘤性病変を認める。被膜は明らかではない。動脈相から辺縁優位に強い増強効果を持ち、染まり抜けははっきりせず、遷延性に増強される。中心部は造影されず、壊死が疑われる。その他肝両葉に同様の造影パターンを示す複数の結節性、腫瘤性病変を認める(非掲載)。
腹腔動脈撮影
肝両葉に多発腫瘍膿染を認める。肝S7の最大病変は早期から均一に濃染される。栄養血管は微細なものが多数認められる。らせん蛇行や広狭不整を示す腫瘍血管を思わせる血管の描出はみられない。
上部内視鏡検査
胃穹隆部になだらかな立ち上がりを示す表面平滑な隆起性病変あり。表面に発赤と細血管網を認める。陥凹や潰瘍形成なし。背景に慢性胃炎あり。
MRI所見(非掲載)
T2強調像では不均一な高信号、T1強調像で低信号を示す。拡散強調像では辺縁優位に高信号、ADCマップ低信号で拡散制限を伴う。造影パターンは肝S7病変では造影CTと同様で、それより小さな病変は早期相で均一な染まりを示す。肝細胞相では明瞭なEOB取り込み低下を認める。
臨床経過
上部消化管内視鏡検査で胃に原発巣が見つかり、胃カルチノイドの多発肝転移の診断となった。原発巣は小さく、CT上では同定困難だった。
重要事項
肝に多発する多血性腫瘍を認め、原発巣が明らかではなかった場合、消化管原発のカルチノイドの転移が鑑別に挙がる。
参考文献
Takayasu K, et al. (1992), Finding in Primary Hepatic Carcinoid Tumor: US, CT, MRI, and Angiography. Journal of Computer Assisted Tomography.1992 Jan 1; 99-102
Sako M, et al. (1982), Angiographic and Computed Tomographic Appearance of Secondary Carcinoid of the Liver. Cardiovascular and Interventional Radiology. 1982 5; 90-96
出題者からのコメント
診断目的で行った血管撮影の所見がカルチノイドが積極的に疑われる所見であったため、出題しました。