第12回 画像診断クイズ(肺・消化管)
正解
手術が施行され、病理学的に肺腫瘍は軟骨腫、胃壁に発生した腫瘍はGIST(Gastrointestinal Stromal Tumor)と診断され、左横隔膜下の病変はGISTの播種であった。若年女性に発生した肺軟骨腫とGISTより、不完全Carney triadの症例である。
正解は選択肢4:本疾患で認められる消化管腫瘍にはイマチニブが奏功する。
Carney triadに合併するGISTは、KIT geneの変異のないwild typeが多く、イマチニブが効かないと言われる。
解説
Carney triadは、GIST、肺軟骨腫、副腎外傍神経節腫を合併する症候群で、1977年にCarney JAが初めて報告しており、これまで約130例の報告がある。日本人では13例の報告がある。他に、副腎皮質腺腫、食道平滑筋腫、褐色細胞腫、乳癌の合併が知られているが、本症例の様に2病変を有する不完全型(78%、GISTと肺軟骨腫)が多い。
病因はコハク酸脱水素酵素(SDH)変異、染色体1q12-q21のメチル化が報告されている。疫学的には、85~95%が女性で、82%が30歳未満で第1徴候を指摘される。GISTの好発部位は胃であり、本症例のようにリンパ節転移や腹膜播種を伴う。治療方針は手術が第一選択であり、予後は比較的良好である。播種や転移により手術困難な症例では分子標的薬が選択されるが、後述のようにイマチニブの感受性は低い。
また、GISTの中で、KIT gene変異がないwild type GISTは約10%あり、イマチニブの感受性が低いと言われる。SDH 変異を伴う本疾患のGISTもwild typeであり、イマチニブの感受性は低い。画像所見については非特異的である。しかし、本疾患のGISTでは病理学的に通常のGISTに比べて epithelioid typeの細胞増殖が特徴的とされる。本疾患のGISTも単純CT(非提示)で若干高吸収を示しており、これを反映している可能性がある。
出題者からのコメント
本症例は検診胸部写真と胸部単純CTを契機としており、検診に携わる医師ならば誰でも遭遇しうる疾患であるといえよう。また、wild typeのGISTについても理解を深めてもらいたいと考え、出題させていただいた。今後の診療に少しでも役立ててもらえれば幸いである。