腎臓の腫瘤性病変はまず嚢胞性病変,限局性の充実性腫瘤,浸潤性の腫瘤に分けて鑑別を考える.
腎嚢胞は非常にありふれた疾患で頻度も高く,臨床的に問題とならないことが多いが,時に悪性腫瘍でも嚢胞性を呈することがあり,注意が必要である.一方,遺伝性のもの,発生異常,後天性全身性疾患の一部などの腎嚢胞は,臨床所見ならびに特異的な画像所見から診断は比較的容易である.
境界明瞭な充実性腫瘍で最も頻度が高いものは腎細胞癌である.その他,良性の血管筋脂肪腫がこれに次ぐ.また,多くの転移性腫瘍も境界明瞭なことが多い.その他,oncocytomaや悪性リンパ腫などが鑑別として挙がる.また,限局性の腎盂腎炎や膿瘍も限局性の腫瘤としての所見を呈することがある.一方,血管筋脂肪腫やoncocytoma以外の良性の腫瘍はきわめて稀であるが,腎細胞由来以外にWilms腫瘍 (Wilms’ tumor)の分化型である後腎由来の腫瘤,間葉系腫瘤,上皮と間葉系の混合腫瘍などが発生母地となりうる5).多くの限局性腫瘤は単発性のことが多いが,多発性の場合は表3のような鑑別疾患を考える.以下の画像所見が診断の手助けとなる6).
腎の浸潤性発育を示す腫瘤性病変は,造影CTにて単発あるいは多発の病変として見られる.病変の分布も単発のものから多発のものまであり,鑑別も多彩であるが11),3Iと覚えておくと良い.つまりinfiltrating neoplasms(浸潤性腫瘍),inflammatory lesions(炎症性腫瘍),およびinfarction(腎梗塞)である.
小児の充実性腎腫瘤の大部分は悪性でWilms腫瘍の頻度が高い.Wilms腫瘍の多くは5歳以下で見られる.それ以外に悪性のもので比較的頻度が高いものとしてnephrogenic restよりなる腎芽腫症(びまん性と多発性)で,Wilms腫瘍が発生することもあり,両側性のこともある.一部は,腎細胞癌,悪性リンパ腫,白血病などが見られる.
一方,良性の腫瘍として新生児期から見られる後腎由来の先天性間葉芽腎腫(congenital mesoblastic nephroma)以外 に血管筋脂肪腫,後腎性腺腫(metanephric adenoma),ossifying renal tumor of infacyなどが鑑別として挙げられるが,血管筋脂肪腫以外多くの場合Wilms腫瘍と画像のみでの診断は困難である.
参考文献
注)本文中・表内の参照ページは画像診断別冊KEY BOOKシリーズ「知っておきたい泌尿器のCT・MRI」に該当する。