バイエル画像検査室

MR室

GRE Sequence(T1強調像用)

GRE法では多彩なコントラストの画像が得られますが、撮像パラメータを設定する時に気をつけることはありますか。

そうだね。まずはT1強調画像を適切に撮像するため設計されたパルスシーケンスで考えてみようか。

バイエル画像検査室

現在、臨床応用されているGRE(Gradient Echo)シーケンスは多数あります。それらGREシーケンスは各々目的を持って開発されています。その目的(用途)にあった撮像パラメータを設定しなければ、得たい画像コントラストと異なった画像になってしまいます。
臨床応用においては、用いるGREシーケンスの特徴を理解したうえで、多様な画像コントラスト(本来の設計目的とはちょっと違う)を得ることがあります。今回は、T1強調画像をより有効に撮像するために開発された、コヒーレント型GREシーケンスについて考えてみます。

コヒーレント型GREシーケンスといえば、Haaseらが報告したFLASH(Fast Low Angle Shot)が代表格ではないでしょうか1)。基本的にFLASHと同様の目的で設計されたGREシーケンスは他にも多数あり、SPGR, T1-FFE, Fast FE, SARGEなど装置メーカーにより異なる名称が付いています。これらのGREシーケンスを基に用途別に進化・発展し多くの名称(Turbo-FLASH, MP-RAGE, VIBE, LAVA, THRIVE, TIGRE等々)で呼ばれていますが、原点は「T1強調像を短時間に撮像する」ことではないでしょうか。

GRE法ではSE法に比べ、極端に短いTE,TRを設定し小さなFA(Flip Angle)にて信号を取り出すことになります。極端に短いTRのもとでは、この3つのパラメータの組み合わせでT1強調像を有効に撮像することは難しく、アーチファクト(FLASH band)も発生してしまいます。
コントラストの面から考えた場合、理由の一つとしてX-Y面に展開した磁化がそのまま残り、次以降の信号収集時に残留磁化としてコントラストに影響します。X-Y面の残留磁化はT2値が長いものになりますから、T1強調像を得る目的としては消し去りたい信号にとなります。
そこで考え出されたのがスポイラーです(図1)。信号読み取り後に残留磁化をスポイル(消去)してから、α°パルスで励起して縦磁化をきれいな(残留磁化の無い)X-Y面に展開して信号収集することで解決しました。

バイエル画像検査室

図1

スポイラーには2種類あり、傾斜磁場(Gradient Spoil)を用いるものとRFを用いるものがあります。現在どちらも選択できるMRI装置もありますが、RF Spoilingを用いて撮像されるのが一般的のようです。

このように改良を加えることで、極端に短いTRの環境下でも有効にT1強調像が撮像できるようになりました。しかし、MRIでは撮像パラメータを変更することで多様なコントラストを得ることができます。極端に短いTE,TRを設定し小さなFA(Flip Angle)を用いて有効なT1強調像を撮像するために設計されたGREシーケンスにおいても同様です。
図2では2D FLASHを用いて、TE=10 msec固定としTRとFAを変化させています。右上の4つぐらいが本シーケンスの設計目的を反映しているコントラストと云えるのではないでしょうか。3D撮像なら更に短いTRを設定するためFAはもっと小さくなります(例:TE/TR=1/3 msec, FA=10 deg)。

バイエル画像検査室

図2

ボランティア撮像による自験例

左下に向かうほどT2*強調像になっていきます。普段、臨床で撮像されるT2*強調像の多くは、T1強調像を有効に撮像できるように設計されたシーケンスを用いて、撮像パラメータを変更することにより得られています。

なるほど。パルスシーケンスの設計思想をイメージしながら、適切な撮像パラメータを設定することで最適なコントラストが得られるのですね。

【参考文献】

1) Haase, A., et al. : FLASH imaging ; Rapid NMR imaging using low filip-angle pulses. JMR., 67, 258-266, 1986.