バイエル画像検査室

MR室

MT効果が画像に与える影響

高速SE法でturbo factorを増やしたら画像コントラストが不良になったのですが、なぜですか?

幾つかの理由が考えられるけど、一番影響があったのはMT効果だと考えられるよ。普通に撮像しているマルチスライスでもMT効果の影響は受けているんだよ。

ええー。そうなんですか!

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MT(Magnetization Transfer)またはMTC(MT Contrast),MTS((MT Saturation)効果によりコントラストが低下することは広く知られています。意識してMT効果を付加した撮像をする場合は、得られるコントラストが想像できます。

それでは普通に撮像しているConventional SE法によるマルチスライスではどうでしょうか。クロストークによる影響もありますが、MTによるコントラスト低下も起こっています。図1に示す画像はそれぞれマルチスライス数とスライスギャップの幅を変化させています。ダイナミックレンジを同じにして表示すると、右下のシングルスライスで撮像した画像が最もコントラストが優れていると云えるのではないでしょうか。

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図1

どんなにコントラストが優れていても臨床で施行するには限界があります。そのためマルチスライスによる撮像を行うわけですが、その際にコントラストを犠牲にしていることに留意したいところです。
検査時間と画質のバランスはMRI検査における大きなテーマと云えるでしょう。高速SE法においてはETL数の増加に伴い、更にMT効果の影響を受けることになります(今回、J値は考えないとします)。むやみにELT数を増やさずにコントラスト維持する撮像パラメータが望まれます。

近年ではMT効果を利用したCEST(Chemical Exchange Saturation Transfer)法が応用され、腫瘍の悪性度の判定に有用であるとの報告がなされています。他にもMT効果を生かした撮像法があります。1.5T装置における頭部TOF-MRAで脳実質の信号を落とし、血流信号とのコントラスト差を大きくすることに応用されています。同様に脳実質の信号を落とすことで転移性脳腫瘍の検索における造影後の画像で、より微細な腫瘍を描出する事が期待できます(図2)。

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図2

技師長、MT効果が画像に与える影響を理解できました!