バイエル画像検査室
線量管理室
DRLs 2020と血管造影分野における線量管理
血管造影の線量管理が義務化されて久しいですが、線量管理システムでの管理状況はどうですか?
手技情報の記録が一番の課題でしたが、今は最適なフローが確立できています。
線量管理のためには、2020年にJ-RIMEから公開された、DRLs 2020を参考に、線量の評価を行うことが一般的となっています※1。
そのDRLs 2020の中で、血管造影の分野においては透視の線量率を評価することと合わせ、特定の手技ごとにKa.r(患者照射基準点における空気カーマ)やPKA(面積線量)に対する線量基準レベルが設定されています。(「Japan DRLs 2020の概要とシステムを用いた線量管理」を合わせてご覧ください。)
評価すべき線量情報に関しては、RDSRもしくは線量レポート画像から概ね問題なく取得されるものですが、DRLを活用する上で手技名情報を取得・記録していくことも重要になります。手技名情報を線量情報システム上に記録させるためには、次の様な方法が考えられます。
1. RDSRやDICOM画像に記録されている情報(DICOM TAG情報等)から取得する。
2. 線量管理システム上でタグ付け機能等を用いて記録する(図1)。
3. オーダリングシステムやRIS等から手技情報を取得する。
1.はモダリティ側で患者登録を行う際に、スタディディスクリプション等の項目に手技情報を登録し、RDSRやDICOM画像のTAGからそれらの情報を線量管理システム側が取得するという流れです。手技を通して手技の内容が変わることも想定し、手技終了後にモダリティ側の検査登録情報を修正する手順も考慮しておくと良いです。
2.は線量管理システム上に後で記録することになるため、実際の手技内容を知ったうえで正しい手技名を記録できることがメリットです。
3.は院内の情報システム側に記録される情報がキーとなります。DRLとの比較に用いるべき手技名が正しく記録されているか、またその情報を線量管理システムに反映させることが可能であるかを確認しておくことが、この方法を選択する上で重要になります。
図1.Radimetricsの検査タグ付け機能
これらの方法で記録された手技情報を用いて統計処理を行うことによって、DRLとの比較を行うことが可能になります。図2は線量管理システムであるRadimetricsを用いて作成した、成人心臓領域における線量管理のためのページです。各手技におけるKa.rの中央値を、月ごとに色分けして表示することで、線量の傾向を確認することができます。この例では、1月、2月におけるカテ室1の非PVI RFCAとPVI RFCAの線量が、DRLと比較してそれなりに高い値を示していたことがわかります。また、プロトコルの見直しなどの線量最適化アクションを実施したことで、3月、4月にはDRLの値以下に収まったという結果も見て取れます。もちろん手技の難易度や被験者の体格、統計の母数を考慮する必要はありますので、フィルタ機能を駆使したり集計期間を半年などにまとめたりすることで、線量評価や線量最適化アクションの効果判定により役立つグラフを作成することもできます。
図2.成人心臓領域における線量解析ページ
線量管理システムのタグ付け機能を活用する事で、しっかりとした線量管理・線量記録ができています。