バイエル画像検査室
線量管理室
散布図と回帰直線を用いた線量評価
線量評価で散布図を見ることがありますが、これは何を表しているのでしょうか?
散布図は2つの要素の関係性を表すグラフです。線量管理ではどのように使うのかを見てみましょう。
散布図
散布図(プロット)はデータの集合を点で表現しており、ひとつひとつの点は各観測値を表しています。二次元の散布図では、この観測値の持つ要素から相関を調べたいもの2つを抽出し、縦軸と横軸に取ってその点を打つ位置を決めます。もし2つの要素の相関が強い場合、点の集合は直線に近い形状を取ります。右肩上がりなら正の相関、右肩下がりなら負の相関を示します。逆に点の集合がまんべんなく分布している場合は、相関が低いことが示唆されます。
図1. 被検者の実効直径 [mm](X軸)とCTDIvol [mGy](Y軸)の関係を示す散布図
散布図の層別化と回帰直線
実例として、線量(CTDIvol等)と被検者の実効直径(Effective Diameter)の相関を見ることを考えましょう。実臨床では被検者の体格を考慮して線量決定されることが多く、SSDEのような線量計算の手法もあることから、CTDIvolと実効直径は強い相関を持つことが期待されます。その関係性を示す上で、散布図を描くことは有効な手法ですが、さらに確実に評価するためには回帰分析を行います。回帰分析の結果として、データの分布を一次関数で表した回帰直線を導くことができます。
回帰分析によってCTDIvolと実効直径の相関が示されたとしても、それはどのプロトコルでも、どの機器でも当てはまるのだろうかという疑問があるかもしれません。その場合は、層別化という手法を用います。図は機器ごとに点の色を変えた散布図です。赤の点で示した機器と、緑の点で示した機器とでは、若干分布が異なるように見え、線量と実効直径の関係性に違いがあるかもしれません。このような場合は、回帰分析を赤の点で示した機器と、緑の点で示した機器とで分けて行い、分析結果の違いを比較することで機器による違いを考察することができます。
強い相関を持つ集合体から外れている点に対しては、その原因が機器やプロトコルの特性に起因することであるのか、プロトコルの選択やポジショニングなどのプロセスに起因するのかを分析することによって、それが改善できる事象であるのかそうでないのかを判断することができます。このような外れ値を定期的に分析していくことは、線量最適化の一助となります。
図2. 図1に装置毎の色分けと回帰直線を表示した散布図
散布図は線量管理に影響を与えそうな要素の関係性と、その関係性の違いを調べるために有効活用できそうですね。