バイエル画像検査室
線量管理室
棒グラフを用いた経時的な線量評価と診断参考レベル
うちの施設でも線量最適化の取り組みを続けていて、次第に効果が出ているように思います。
時系列のデータを取って、実際にどの程度効果が出ているのかを確認してみましょう。
トレンド(傾向)と周期性
線量低減アクションが功を奏していることを確認する場合、最も確実な方法はアクションを取る前と取った後の線量を比較することです。しかし、このような取り組みは翌日からすぐ効果が現れるとは限らず、徐々に浸透していくケースのほうが多いと考えられるため、ある程度の期間をとって比較することが必要です。
このように効果が傾向となって現れるとき、重要なのはどのように時間を区分してデータを見るかということです。この場合1時間単位でデータをとっても意味がありませんし、1年単位だと期間が長すぎて効果が埋没してしまいかねません。現実的には日にち単位での比較となるでしょうが、傾向を正確に見るためには、周期性の影響を排除する必要があります。例えば、ある日の線量のデータを前日と比較するとき、それが日曜日だったとしたらその比較に意味はあるでしょうか? つまり、医療行為のデータは曜日の影響を強く受ける可能性があるため、違う曜日と比較してもそれが本当に線量低減アクションの効果を反映しているかどうかはわかりません。一方で、医療は季節や月の影響は受けにくいと考えられるので、四半期単位や月単位、週単位のデータを用いるのが良さそうです。検定をすることなどを考えるなら、週あたりのサンプルが数例しかないような場合は月間や四半期間、1週間で十分な数のサンプルがある場合は週間でデータを分析するという考え方で効果を図ることができるでしょう。
中央値と診断参考レベル
自施設における代表的な線量値と診断参考レベルとを比較する際には、特定のプロトコルを用いた検査群における中央値を用いると良いとされています。例えば、CTにおける「上腹部~骨盤 1相」の検査30例を線量が高い順に並べた場合、15番目と16番目の検査における線量の平均値が中央値、すなわち自施設における代表的な線量値となります。統計を取る際には被験者の年齢や体格も加味する必要もあります。
サンプルの数にもよりますが、下図の様にひと月ごとの「上腹部~骨盤 1相」検査におけるCTDIvolの中央値を、装置別に描出することで、それぞれの装置における線量レベルがどれくらいであるのかを時系列に沿って評価することができます。
図1. 月間の「上腹部~骨盤 1相」検査におけるCTDIvolの
中央値を装置毎に表した棒グラフ(成人50kg~70kg)
線量低減の取り組みを行ったら、時系列でデータを確認して、低減効果が出ているかを見ながら次のアクションを考えていくと良いですね。