バイエル画像検査室
線量管理室
核医学領域における線量管理
核医学検査での線量管理って、どうすればいいんですか?
放射線薬剤の実投与量の管理がメジャーだけど、被ばく線量を総合的に管理するために、実効線量も管理できるといいね。
CT検査や血管造影検査と共に、線量管理の分野で話題にあがるのは核医学検査です。PETやSPECT検査に用いる放射性薬剤による内部被ばく線量は1〜15mSv程度とされています1)。PET/CTやSPECT/CTを用いた検査の場合は、放射性薬剤だけでなくCTスキャンによる被ばくも生じます。ICRP(: International Commission on Radiological Protection)は、典型的な代謝の被検者に対して、コンパートメントモデルに従った各臓器の平均吸収線量や実効線量を算出するための方法を公表しており、投与した薬剤のエネルギー量と薬剤毎にここで定義された変換係数とを掛け合わせることで、被ばく線量を求めることができます2) 3)。薬物動態の個体差を考慮する場合には特別なソフトウエアを用いて推計することもでき、投与した放射性医薬品が血管外に漏れた場合など特別な場合には、個別の線量推計が行われることもあります。
被検者の被ばく線量を管理するためにはこれらの方法を用いて臓器吸収線量や実効線量を算出する必要がありますが、放射線防護の最適化といった観点では、投与薬剤名と実投与量(MBq)の管理が推奨されています4)。標識済みの製剤を使用する場合は、検定日時における放射能量が放射性医薬品基準によって定められているため、物理学的な半減期の補正から実投与量を求めることがメジャーです。
線量管理システムの中には、核医学検査装置等から出力されるRRDSR(Radiopharmaceutical Radiation Structured Report)やDICOM(Digital Imaging and Communications in Medicine)画像から、投与薬剤名および実投与量の情報を自動的に取得・記録し、臓器吸収線量や実効線量を計算するものがあります。CTにおける実効線量計測機能を組み合わせることで、PET/CTやSPECT/CT検査における被検者の被ばく線量を総合的に管理することも可能としています。
国内において、実効線量による被ばく管理を行うための明確な指針は出ていませんが、実投与量の管理だけでなく実効線量を管理することにより、より被検者の心的ケアと検査の最適化に貢献できるのではないでしょうか。
【文献】
1) | 日本アイソトープ協会: 核医学検査Q&A. |
2) | ICRP Publication 106: Radiation Dose to Patients from Radiopharmaceuticals ; A third amendment to ICRP Publication 53. |
3) | ICRP Publication 128: Radiation Dose to Patients from Radiopharmaceuticals ; A compendium of current information related to frequently used substances. |
4) | J-RIME: 最新の国内実態調査結果に基づく診断参考レベルの設定. |