バイエル画像検査室
線量管理室
小児被ばくと線量の最適化
小児に対するX線検査時に、線量に注意するのはなぜですか?
小児と成人では放射線の感受性に違いがあるためです。
日本では日本医学放射線学会、日本放射線技術学会、日本小児放射線学会から合同で「小児CT ガイドライン―被ばく低減のために―」として、小児被ばく低減のためのガイドラインが発行されています。
要約として以下の通り記載されています。
- 小児は放射線に対する感受性が成人の数倍高い。
- 小児は体格が小さいため、成人と同様の撮影条件では、臓器あたりの被ばく量は2倍から5倍になる。
- CT 検査に当たっては、適応を厳密に検討し、小児のための撮影プロトコルを適用する。
また、CT 装置の品質管理に努める。 -
医師は検査の必要性を患児、家族に十分説明する。 1)
英国において22歳以下でCT検査を受けた17万人を調査した研究では、50mGyの累積線量で脳腫瘍と白血病のリスクが2〜3倍になったと報告されています。2)
小児被ばく線量の適正化とは
上記の通り、小児は放射線の感受性が高く、成人と同様の撮影条件では臓器線量が大きくなるため、CT装置に搭載されている被ばく低減機能(AEC・逐次近似画像再構成等)の使用、低管電圧撮影などを使用して、小児専用のプロトコルを作成する必要があります。2015年に発表された日本の診断参考レベル(以下DRL)は小児・新生児用についてもDRLを発表しています。
国際的な小児の被ばく低減のための取り組みとして、子供の体の大きさや厚みに合わせて条件を工夫し、なるべく低い線量で(ただし必要な画質を損なわない範囲で)撮影をするように働きかける「Image Gently」というキャンペーンが展開されています。
米国では、American College of Radiology (ACR:米国放射線学会)は線量データの蓄積を目的にCT DIR (Dose Index Registry)を行っており、2013年1〜8月の期間で150万件の成人と80万件の小児検査の線量データを収集し、解析をしています。
EUではEuropean Society of Radiology (ESR:欧州放射線学会)より、PiDRL – European Diagnostic Reference Levels for Paediatric Imaging、が2015年10月に発表されています。 これらは小児の線量適正化を行うための手段として、撮影条件の最適化支援に、小児撮影条件作成用の支援ツールや、小児専用のDRLを調査・発表を行っています。
小児検査に対する適正化や最適化は世界中で重要視されているのですね。
【参考文献】
1) | 小児 CT ガイドライン 被ばく低減のために,日本医学放射線学会,日本放射線技術学会,日本小児放射線学会 |
2) | Radiation exposure from CT scans in childhood and subsequent risk of leukaemia and brain tumours: a retrospective cohort study:THE LANCET Volume 380, Issue 9840, 4–10 August 2012, Pages 499–505 |