バイエル画像検査室
線量管理室
米国放射線専門医会(ACR)提唱のImaging3.0
ACRではimaging3.0イニシアチブという取り組みが行われているって聞きました!これってどういう事ですか?
放射線科の業務価値を高め、患者ケアにつなげるための取り組みのことですね。
American College of Radiology:米国放射線専門医会(以下ACR)は、放射線科医の価値向上のため、医療改革における放射線科医の課題として、「Provide better care at low cost:低コストでより良いケアを提供する」「Improve the health of the population:国民の健康維持促進に寄与する」「Empower patients in their healthcare:患者のヘルスケアのために直接的な力となる」と掲げています。
ACRが提唱するこの取組は「Imaging 3.0」と題され、「Evolution in Patient Care:患者ケアにおける進化の必要性」がテーマとなっています。
「Imaging 1.0」 1920年〜1990年
造影剤や新規検査装置の登場による新たな画像診断時代
「Imaging 2.0」 1990年〜2012年
技術の爆発的進歩における検査装置及びPACSの進化、参照医へのコンサルテーションなど、放射線科医の需要が急速に増加した時代。
読影の報酬は読影量に応じたものであり、「Interpretation:読影業務」が中心の時代。
「Imaging3.0」 2013年〜
放射線医は「beyond Interpretation:読影業務を超えた」範囲についても網羅する必要があり、ヘルスケアにおける自分達の関わり方を再定義すべきとしています。
読影業務のみにとらわれず次の4項目に注力することにより、放射線科医の価値を最大限高めるとともに、主治医との協調を通して画像診断を改善し、患者に対して力を与えることを目標としている。
- Assure that what we do is appropriate:行為が適切であることを保証する
- Document our quality and safety:品質と安全性を文書化する
- Ensure actionable ways to report our results and evidence-based recommendations:読影結果と、その結果を元に根拠に基づいた次の処置を推奨することを実践する
- We must empower our patients:患者に対して力を与えなければならない
「Imaging 2.0」から「Imaging 3.0」への変化は、量から質への変革であり、「Imaging 2.0」では生産性や利益の向上を実現できたが、「Imaging 3.0」では更に実績や存在意義を高めることを目的としています。この「Imaging 3.0」を実現するための技術革新については「Imaging Sharing:データ共有」、「Structured Report:構造化レポート」及び「Communication Tech:情報技術」などがあり、これらを用いて主治医への迅速で的確なレポートを行うことによって、患者のより良いケアの向上に寄与することが期待されています。
このような「Imaging 3.0」を実現するための技術での「Imaging Sharing:データ共有」に関して、撮影装置の検査記録は装置本体、RISなどで管理されてきましたが、最近では造影検査での注入実施記録(図2)をPACS上でデータ共有できる機能が発売されています。この機能を用いることにより、読影を行いながら造影が適切に行われたかどうかの判断がPACSで行え、検査の記録と管理を同時に行い、診断能の向上も期待できます。
図2)造影検査での注入実施記録のデータフロー例
「Structured Report:構造化レポート」に関しては、CT装置等でのばく射した線量情報を自動的にRDSR「Radiation Dose Structured Report」(図3)に変換してPACSへ送信する機能をもった線量管理システムも世界的に導入が進んでいます。
図3)RDSR(Radiation Dose Structured Report)の例
患者さんのために、撮影や診断だけでなく品質や安全性を記録することも大切なんですね。
【参考文献】
1) | American College of Radiology |
2) | ラドファン2014年7月号 米国放射線部門の今後の方向性とPACS |