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米国における医療被ばくと線量管理の歴史

アメリカではかなり以前から線量管理に注目が集まっていたみたいですね。

CTの過剰照射問題や、IAEA等の国際機関による指針が影響しているのでしょうね。

米国における医療被ばくと線量管理の歴史

米国における医療被ばくの現状

米国放射線防護審議会(NCRP)Report No.160(1)によると、米国民が1年間に受ける放射線量は、1人あたり6.2mSvと報告されており、そのうちの約半分の48%が医療検査装置から発生した放射線量で、CTが24%と最も高い割合になっています。CT以下は、核医学が12%、IVRが7%、一般X線・透視撮影が5%となっています。また、このレポートには、1993〜2006年までの継時データもあり、CT検査数が年々増加していることも示されています。

医療放射線管理の国際的な動向

放射線検査による線量の増加を受けて、国際的な動きとして、IAEA(International Atomic Energy Agency: 国際原子力機関)から米国を含む先進国の主要団体に放射線被ばく管理(Patient Radiation Exposure Tracking: PRET(2)が推進されています。PRETの主な概要は以下の通りです。

  • 放射線検査手順の確認、個人線量管理、検査の正当化、照射線量の最適化、DRL(Diagnostic Reference Level: 診断参考レベル)の確立、臨床評価等
  • 優先モダリティは、CT装置、IVR装置、核医学装置
  • HIS/RISやPACSなどのIT技術に関連する標準単位系での線量情報や医療情報の利用推進

米国では、2007年に発生したX線CT装置による過剰照射問題を契機に、米国食品医薬品局(FDA)の要請で、関連団体による検討会議が開催されました。そこで提案された対応策の一つとして被検者の被ばく線量管理も挙げられました。その後、患者の被ばく線量管理を促進するために、DICOMでの線量レポート(DICOM RDSR)やIHE(:Integrating Healthcare Enterprise) REM(:Radiation Exposure Monitoring)プロファイルでの標準規格化が進んでいます。また、ACR(:American College of Radiology)では、線量データの蓄積と評価を目的として2011年4月からACR DIR(:Dose Index Registry)が始まっています。2013年時点では500施設以上、2016年には1300施設以上が参加し、数千万件以上のデータが登録済であると報告されています。

ACR DIRのようなプロジェクトが日本でも推進されていくのでしょうかね。

【参考文献】

1) NCRP Report No. 160, Ionizing Radiation Exposure of the Population of the United States
2) Joint Position Statement on the IAEA Patient Radiation Exposure Tracking