バイエル画像検査室

CT室 検査

撮影の最適なタイミングがわからない?

時間濃度曲線(TEC)から撮影タイミングを考えてみよう。

撮影の最適なタイミングがわからない?

ボーラストラッキング(BT法)をしようしていると、被検者ごとに造影剤到達時間のばらつきがあります。そんなときは、テストインジェクション法(TI法)で時間濃度曲線(Time enhancement curve:TEC(以下TEC)を測定することで、造影剤到達時間がわかり、最適な撮影開始タイミングを調べることができます。

造影CT検査では、適切に造影剤を注入し、最適なタイミングで撮影をおこないます。しかし、被検者ごとに異なる撮影タイミングを把握することは容易ではありません。そのため、血管内に投与された造影剤濃度の変化を把握するために、CT装置のボーラストラッキング機能(以下BT機能)や、少量の造影剤をあらかじめ注入するテストインジェクション法(以下TI法)でTECを取得します。これらの方法は、投与された造影剤がモニタリング部位において経時的にどのように変化していくかを計測し、得られたTECから撮影開始タイミングを決定したり、注入条件や撮影タイミングを被検者ごとに調整します。

撮影の最適なタイミングがわからない?

TECでは、造影剤を検出するまでの時間、最大CT値、最大CT値到達時間、傾き、などのパラメータが取得できますが、これらは造影剤の注入速度、注入量、注入時間、使用する造影剤濃度などで変動します。
たとえばヨード濃度300 mgI/mLと370 mgI/mLの造影剤を、同一の注入速度・注入量・注入時間で注入してTECを比べた場合、TEC上の最大CT値到達時間は変わりませんが、370 mgI/mL製剤は最大CT値が高くなります。このようにTECを考える場合、単位時間あたりの注入ヨード量や総投与ヨード量も考慮する必要があります。

また、ヨード濃度によるTECへの影響は、体重当たりのヨード量でも変動します。例えば、異なる体重の被検者に、同一の総ヨード量、注入速度で造影剤を投与した場合、体重が重いほどCT値が下がります。そのため、再現性のあるTECを取得する為には、体重当たりのヨード量を一定とし、同じ注入時間で注入する方法も選択されています。

この他にTECに影響を与える要因としては被検者の心機能があります。循環量(心拍出量)が多くなるほど、撮影対象への造影剤到達時間が早く、最大CT値は下がり、ピーク到達時間も早くなります。しかし循環量を事前に把握する事は難しく、検査時には緊張により安静時より循環量が増加している可能性もあります。

CTAのような注入速度が速く、造影剤投与量が少ない検査では、生理食塩水の後押しを行う場合もあります。生食の後押しはルート内や、静脈内に残存する造影剤をフラッシュすることで、造影剤のボーラス性を高め、最大CT値の上昇や、造影時間延長などの効果が期待できます。

TECを理解して、最適な撮影タイミングを把握したいですね。