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CT室 検査を始める前
造影剤は加温しています!造影剤を加温することで粘稠度を下げることができます。
シリンジ、チューブやカテーテルなどの消耗品には耐圧能が設定されています。インジェクタで圧力リミット値を設定することは、過度な注入圧からシリンジやチューブが破損することを防ぎます。注入中にインジェクタに設定している圧力リミット値より高い圧力がかかった場合、シリンジやチューブを保護するために注入速度が制限されます。
この注入圧は、粘稠度(ねんちゅうど)にも関係するため、粘稠度が高い造影剤を注入する場合は注入圧が高くなる傾向があります。設定した圧力リミット値に達した場合の注入速度低下や注入停止は、造影能低下につながるため、造影剤の注入速度を担保するためにも造影剤を加温して粘稠度を下げる準備が必要です。
水溶性造影剤の重要な物理化学的性質は主に、溶液の粘稠度と溶液の浸透圧があります。粘稠度は、粘度計を用いて測定され、通常、水を「1」とした時の比、粘度として表されることが多く、「mPa・s(ミリパスカル・秒)」または「cP(センチポワズ)」で表記される場合もあります。
粘稠度は、溶液の温度の上昇に伴って低下することから、通常、測定時の液温が併記されます。一般に、液体は温度が上がると粘稠度は下がるので、注入前に加温するとよいとされています。
粘稠度が高くなると造影剤と脳血管内皮細胞との接触時間が長くなり、脳血管造影時の神経毒性(局所グルコース利用の増加、BBBの破綻など)に関与する可能性の報告や、冠動脈造影時の虚血発作の誘引となる可能性の報告があります。したがって、粘稠度の低い造影剤を選択し、体温近くまで加温して使用することが望ましいと考えられます。
造影剤の注入速度を担保するためにも造影剤を加温して粘稠度を下げる準備が必要ですね!
【参考文献】
1) | 桑鶴良平ほか.造影剤添付文書の「適用上の注意」.臨床画像,2009,Vol.25, No.3 |
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2) | 林 宏光.ちょっと役立つ造影検査に関する話題CT編(ver.2.0) |