バイエル画像検査室
CT室 検査を始める前
心臓CT検査の準備はどうしますか?
心臓CT検査では、生理食塩水での後押しや高速注入が必要です。ルートキープ、物品選択、造影剤加温、生理食塩水での後押しを考えてみましょう。
心臓CT検査の準備を、インジェクタ使用の観点からご紹介いたします。
穿刺部位と留置針の選択は?
右腕の太い血管(尺側皮静脈、橈骨皮静脈)へ20Gの留置針の使用を推奨します。
左腕からの造影剤注入は左鎖骨下静脈での造影剤滞留によるアーチファクトと、内頸静脈への造影剤逆流により心臓への造影剤到達遅延が発生するためです。
また20Gより細い留置針で高速注入すると、注入圧力が上昇し、他の条件(造影剤濃度、造影剤の加温、ルートの長さなど)にもよりますが、圧力リミットにかかる恐れがあります。
造影剤は加温すべきか?
造影剤の粘稠度は加温することで下がり、注入圧力が下がります。
心臓CTで使用される高濃度製剤は、300mgI製剤に比べ粘稠度がおおよそ2倍程度あります。
このため、300mgI製剤を用いた造影検査と、高濃度製剤を用いた心臓CT検査では、同じ注入速度で注入しても注入圧力が異なるため加温することをお勧めいたします。
X線造影剤 基礎と臨床の概要: p14 森墾(日本語監修), バイエル薬品(2012)
生理食塩水での後押しは?
生理食塩水で造影剤を後押しする意義は、穿刺部から心臓へ造影剤を押し込むことです。造影剤のみを注入した(後押しをしない)場合、造影剤注入完了と共に心臓へ戻る静脈の血流速度に戻ってしまいます。これでは穿刺部から心臓までに滞留している造影剤は、心臓へ高速で届きません。よって撮影の為に必要なCT値ピークが下がり、なだらかなTime Enhancement Curve(以下TEC)になってしまいます。
そのため心臓CT検査では、注入した造影剤を無駄なく心臓へ注入するため、穿刺部から静脈内に滞留した造影剤を生理食塩水で後押しすることが必要となります。この時の滞留量は体格によって異なると言われていますが、20〜30mL程度といわれています。
心臓CT検査の注入プロトコルは造影剤注入量も少なく、体重で注入量を管理することが多いため、確実に後押しを行う為にも余裕を持った後押し量を設定してみてはいかがでしょうか。
病棟のルートから注入して大丈夫か?
インジェクタを用いた注入では、造影用耐圧チューブを使用しなければなりません。これは普通の輸液用チューブとは違い、ロック式でチューブが固く、早い速度で注入してもそれに耐えることができる構造になっています。一般的な輸液チューブはスリップ式で耐圧性能がないため、高速注入を行った場合に接続部の外れや、チューブが破損する危険性があります。インジェクタで使用するチューブは、高速注入にかかわらず、必ず耐圧性能を持ったチューブを使用することが必要です。
三方活栓付きのルートを接続する場合、インジェクのルートは何処に接続するか?
三方活栓を使用する場合、側管側にインジェクタのチューブを接続すると90°に液体の流れが変化する為、ここで無駄な圧力が発生してしまいます。そのため、インジェクタのチューブは、液体の流れがまっすぐになる側へ接続することをお勧めいたします。
心臓CT検査では、高速注入のためのインジェクタ準備をしましょう!