バイエル画像検査室

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インジェクタで測定しているのは、どこの圧力?

インジェクタで設定する圧力リミットは、安全な検査のためには不可欠ですが、この圧力はどこの圧力を測定しているか考えてみましょう。

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圧力と言っても、注入圧、流圧、血管内流入圧があるので混乱してしまいますね。

薬液がルートを流れるには圧力が必要です。シリンジ内の圧力は、ルート(チューブと針)および薬液の抵抗を上回っていなければなりません。ルートの抵抗は、その直径と長さによって、薬液の抵抗は粘度などによって決まります。

しかし、圧力はルート内で消散します。圧力は、ルート内を薬液が流れるのを促進しているだけだからです。ルートの開放端では薬液に対する抵抗が存在しないので、薬液の圧力はゼロになります。(正確にはゼロではなく、被検者の血圧になりますが、この後の議論を簡単にするために、ルートの開放端の圧力はゼロと仮定しましょう。)一方、圧力はシリンジとルートの接続箇所で最大になり、ルートの中央部で半分になります。

下の図は、導管の各所での圧力の違いを示します。

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造影剤注入圧について

造影剤の注入圧には、インジェクタに表示される「押筒圧力」と特殊装置で測定する「流圧」があります。

押筒圧力(注入圧)

一般的に用いる「注入圧」は「押筒圧力」のことを指し、血管内へ直接的にかかる圧力を表すものではありません。これは、使用する注射針(種類・径)と、造影剤の注入速度及び粘稠度(種類・濃度・使用時の温度に依存)により受ける影響が大きいです。

このような要因で決まる押筒圧力は、直接的にインジェクタの負荷となりますがインジェクタは耐圧能力があるため破損する事はありません。しかし、問題となるのは造影剤シリンジや消耗品(チューブや活栓等)の耐圧です。耐圧値を超えた場合は、造影剤シリンジや消耗品の破損の危険性がありますので、インジェクタの圧力リミットは使用する造影剤シリンジや消耗品に規定された耐圧値以下に設定する必要があります。従って圧力リミットを設定する目的は、被検者への圧力付加を防ぐより、造影剤シリンジや消耗品の破損による事故を防ぐ意味合いが大きいのです。

流圧

注入ルート内(チューブや注射針)の内圧です。これは押筒圧力より低いです。

血管内流入圧

シリンジ外筒、チューブ、注射針・被検者静脈の順にかかる圧力は小さくなります。

インジェクタが測定している圧力は、シリンジピストンを押している圧力でした。