ポスター発表

まとめ(3) ポスター発表の思い出(2)

まとめ(3) ポスター発表の思い出(2)

初めての国際学会の思い出話をしています。もう20年どころではない昔の話ですが、よく覚えています。というより、覚えたいように美化して覚えているんだろうなあとは思うのですが、まあお付き合い下さい。

さて、結局どのようにして資金を集めたかというと、まさに小銭をかき集めたという感じです。当時、はっきりした数字は覚えていないのですが、初めて経済的に独立した私の家計は確かこんな感じでした。奨学金が月あたり$850ぐらい。寮費は20回分ほどの食事代が強制的について月$600ほど。ただし一学期分前払いだったので、両親が「例えば病気になって緊急帰国とか、そんないざという時様だから、できれば留学期間中に使わず持って帰ってくるように」と持たせてくれたトラベラーズチェックを用いてアメリカ到着日に支払い済み。授業料のために借りた学生ローンの返済が月$700ぐらい。

フランスまでの飛行機代は、当時アメリカにもスカイメイトみたいなのがありました。当日空港に行って、キャンセルがある時のみ格安で乗れるというもの。フランスまで$230とかだったように記憶しています。キャンセルがないから学会に遅れるというわけにはいかないので、友人が住んでいる街に数日前に行って泊めてもらい、電車で開催都市まで行きました。宿はユースホステルより安いゲストハウス。飛行機に乗り込んだ時は全財産の残高が$100を余裕で切っており、当然貯金はゼロ、奨学金が振り込まれるまで海外で一週間ほどをこれで過ごす...とお財布を握って手が震える思いでした。

スーパーで日持ちのしそうな袋入りパンを買い、学会会場のコーヒー休憩で出されるお菓子で何とかお腹の虫をなだめ、どこにも出かけずとにかく振込日を待っていました。その学会では会場の食堂でのランチチケットが安くで買えて、午前のプログラムが終わるとほぼ全員がぞろぞろと食堂に向かうのです。それに逆行して、外に行き、庭のベンチに座って袋のパンを食べる、日本人の女子大学院生...

発表はというと、パワーポイントのスライドを印刷し、色のついた厚紙に張り付け、番号をふってボードに張り付けるという、どこかで「これをするな」と書いたやり方でした。知らなかったんです。一枚のポスターが印刷できるだなんて。まあ今ほど「常識」になってはいなかったんですが、それでも一枚ものポスターの方が数は多かったように記憶しています。知っていても印刷代を「自分で払え」と言われていたとしたら、払えなかったと思いますけど。会場にずらずらと並んだ一枚のポスターを見て、すごい、プロの科学者ってこういうことなんだ!と感激しました。

自分のポスターには、いろいろ絵をかいて説明を入れていました。この連載の挿絵のような絵と、無料のホームページ用GIFの組み合わせで、まあかわいらしくしてあったと思います。こんな子供みたいなポスターと学生感丸出しの研究が恥ずかしくて、ポスターの脇で小さくなって気配を消していました。それこそ、できるだけ誰にも話しかけられないように。

そこで話しかけてきてくれたのは日本から来た先生たち。面白かったのかな?「あ、日本人なの?どの大学?どの先生についてるの?」といろいろ話しかけてくれて、おかげでようやくポスター発表の真似事のようなことができました。うんうんと聞いてくれて、問題点の指摘や良いと思ってもらえた点、似たような研究の話などを話した後、「頑張ってね、また来年も学会で会おうね」と言ってくれました。

ちなみに、ポスターの後、その先生方と会場出口でばったり会いました。食堂に行かないの?と言われて、お金がないんで行けないんですと説明すると、これから三人で外に食事に行くから、使わないチケットをあげるよ、日付指定はないから、残りの会期、この三枚で食事ができるでしょう、とのこと。ありがたくいただきました。給食のようにお盆と仕切りのついたワンプレートを渡されるのですが、飛行機で出るような小瓶のワインと、前菜にテリーヌ、メインはソースのかかったお肉、パンとサラダと小さなデザートがついて、もう、おいしくて、先生方の親切がうれしくて、涙が出そうでした...!

私の国際学会初体験はこんな感じで、初めてのポスター発表で得たものは三枚のランチチケット。他の大学の親切な先生方と話す経験。それと、忘れてはいけないのが、資金繰りに奔走した経験。こんな背水の陣で身を削って資金を集める心細さの経験は学生に必要ないと思いますが、資金集め経験自体はのちに大きく役立ちました。自分の研究をまとめ、売り込み、グラントを取る。実は研究者にとってとても大切なことです。この学会の後も、私は必ず自分で資金集めをしました。学生が集められる資金なんて微々たるものですが、私の大学院生時代のCVは他の学生に比べてグラントやアウォードの部分がとても長かった。これがプラスにならないはずがありません。

国際学会でのポスター発表によって得られることは、普段研究を一生懸命やっていて得られるものや論文を書いて有名ジャーナルに掲載されて得られるものとは全く性格が違うものだと思います。いかがですか?行ってみたいと、行けそうだと、思っていただいたでしょうか?