ポスター発表
ポスター作成編(4)ポスターにカンペを仕込む
しばらく前に、発表する場合には原稿作成を作成し、練習し、暗記する!ということを書きました。
昔、ドイツの国家試験(口頭試験)を担当していた教授がぼやいていました。質問をすると、質問に関してだけでなく、その答えが入っていそうな文章のかたまりをテープレコーダーのようにスラスラと繰り出す学生が結構な数いるのだそうです。「ちょっと待って、それについてでなく、これについて質問してるんだけど」などと言って中断しようものなら、学生はしばらくフリーズした後「その答えは後の方で出てくるんで黙って聞いてください。始めから言っていいですか」と言って全く同じことを繰り返すんだそうです。「間違ってるわけじゃないから0点にするわけにはいかないけど、ただ丸暗記されてもねえ。答えがありそうなところを言うから試験官が答えを探してくださいって、こっちの試験じゃないんだからさ」だそうで。ごもっともです。
私も中学校の英語の暗唱コンクールで小泉八雲のムジナや不思議の国のアリスのハンプティダンプティのくだりを丸暗記した時、初めから始めないと全く言えなかったですね。だからそういう学生の行動はよくわかります。
でも、ポスター発表でこれをやってしまうと、大変なことになります。ポスター発表中に話の腰を折られるなんてことはしょっちゅうあるんです。質問が入ったり「ん?どういうこと?」なんて止められたり、がちがちに緊張している時は誰かがくしゃみをしたりバサッとアブストラクトブックを落としたりするだけで一瞬のうちに頭が真っ白になってしまうなんてこともあります。そんな時に「初めから話していいですか?」なんて言おうものなら、テープレコーダーに飽き飽きしていた聴衆は苦笑いして「いや、もういいです」と去ってしまうでしょう。司会者付きの発表だったら目も当てられません。
その時のためにやっておいて便利なのは、ポスターにカンペを忍ばせておくことです。物理的に忍ばせるというわけではなくてですね、ところどころに自分へのリマインダーとなるキーワードを忍ばせておくのです。
キーワードは自分の目にもぱっとつくように、最重要事項をサブタイトルにするか、文章自体を箇条書きにしておくのが便利です。もしくは段落の始めの単語をキーワードとしておいて、トークはその単語から始まるようにするとか。文章でずらずらと書いている場合は、重要単語の色を変えておくとか、アンダーラインをひいておくとか。
ポスターこっそり隠したそういうキーワードを手掛かりにひとかたまり話し、ちらりと次のキーワードを見て次のかたまりを話し、途中で中断された後はポスターをもう一度見て、どこにいたかを見つけたらそこから再開。このように細かく話すことを分割しておき、かたまりごとに覚えておくと、中断されようが集中力が切れようが頭がブランクになろうが、フレキシブルに再開が可能です。
ところで、しばらく前に、暗記とは別に「聴衆の目を見て、聴衆に語りかけて」と書きました。そうなんですよね。原稿の暗記と語りかけは相反するものです。ポスターにカンペを忍ばせておいたとしても、ポスターを見ながら話さないように気をつけて下さいね。あくまでポスターをちらりと見て、その後は聴衆の目を見て、語り掛けるように話してください。