***
執筆者名 : 大友 真姫 先生
共執筆者名 : 原田 雅史 先生
所属 : 徳島大学病院 放射線科
※スクロールダウンすると、選択肢が選べます。
年齢・性別・体重50代女性 体重39kg
12年前に神経精神ループス (NPSLE) を発症し,ステロイドパルス療 法後は少量のステロイド内服にてコントロール良好であった。 2か月前から足の倦怠感あり、1週間前から杖歩行となった。3日前か ら自力で歩けなくなったため近医整形外科を受診したが症状の改善 なく、強い頭痛も持続するため当院受診。E3V5M6,BT38.5°C,嘔吐, 不穏,高Na血症あり。頭部CTでは著変なく、精査のため脳MRI施行し た。
年齢・性別・体重50代女性 体重39kg
12年前に神経精神ループス (NPSLE) を発症し,ステロイドパルス療 法後は少量のステロイド内服にてコントロール良好であった。 2か月前から足の倦怠感あり、1週間前から杖歩行となった。3日前か ら自力で歩けなくなったため近医整形外科を受診したが症状の改善 なく、強い頭痛も持続するため当院受診。E3V5M6,BT38.5°C,嘔吐, 不穏,高Na血症あり。頭部CTでは著変なく、精査のため脳MRI施行し た。
画像1 : T1強調像 (FSE法)
画像2 : FLAIR像
画像3 : 拡散強調像 (b=1000)
画像4 : ADCmap
画像5 : T2*強調像
画像6 : 造影T1強調像 (FSE法)
おめでとうございます!正解です。
正解は選択肢3 本疾患では脊髄病変を伴うことは稀である。
T1強調像では白質病変の一部に神経脱落を疑う低信号域がみられた。FLAIR像では深部白質や側脳室白質優位に高信
号を認め,同部に一致した拡散強調像高信号あり、ADC値は低値であった。T2*強調像では微小出血を伴っている。造
影MRIでは一部にのみ造影効果あり。
血管内リンパ腫(intravascular lymphoma:IVL)
もしくは 血管内大型細胞型B細胞リンパ腫(intravascular large B-cell lymphoma: IVLBCL)
血管内リンパ腫(intravascular lymphoma:IVL)はリンパ腫細胞が小動脈や小静脈内に存在し,血管内で顕微鏡的
な腫瘤を形成する。節外性非ホジキンリンパ種の稀な一亜型である。中枢神経や皮膚に生ずることが多く、ほとんどがB
細胞由来である。平均年齢70歳で性差はない。臨床的には亜急性血管性認知症の容態を呈し,進行性の認知機能低下
を見ることが多いが、意識障害,理学,片麻痺,発熱等その症状は多彩である。アジアと西洋で傾向が異なり,Asian
variant, Western variantと分類される。Asian variantは血球貪食症候群を高頻度で認め,Western variantは皮膚・
神経浸潤を主体とするとされる。70~85%で中枢神経症状を合併するとされ,進行性・多巣性脳血管障害76%,脊髄・
神経根障害38%,亜急性脳症 27%,脳神経障害21%,末梢神経障害5%と報告される(Cancer 1994371:3156
-3164). LDHやsIL-2レセプターの上昇をみるが,血液検査でも非特異的である。 Yamamotoらは本症のMRI所見を5
型(梗塞様・白質病変・願模造影効果・腫瘤病変・橋病変)に分類している(AINR 2012:33:292-296)。また
SWIで大脳皮質,皮質直下に低信号を認めた症例も報告され,IVLの特徴的な画像所見の可能性を指摘されている(臨床
神経 2017:57:504-508), 脊髄内出血が疑われた症例(臨床神経 2012:52:344-350),脳出血を併発した症例
(Neurol Sci (2010) 31:793-797)の報告があり、血管壁の炎症・変性・ヒアリン化・線維化による血管壁の損傷・
血管拡張・微小動脈瘤の形成・破綻が出血に関与している可能性が考えられる。
鑑別診断にCNSループスの急性増悪,原発性中枢神経系血管炎(primary angitis of the central nervous system:
PACNS),進行性多巣性白質脳症(Progressive Multifocal Leukoencephalopathy : PML)等が挙げられるが、白質病
変の分布や脊髄病変の有無、軟膜や硬膜の増強効果などが鑑別点となる。
本例ではNPSLEの既往があり、今回は提示していないが胸髄MRIではTh1-2レベル, 脊髄円錐レベルで造影効果を伴う
脊髄病変がみられたことからCNSループスも疑われたが、経過中にLDH, SIL-2レセプターが急上昇し,臨床的には早
期からIVLを疑われた症例である。皮膚生検,骨髄生検を複数回行ったが、3回目にしてようやく同定できた。現在R-
CHOPとMTXにて症状が改善傾向である。
血管内悪性リンパ腫は非特異的で稀な疾患のため診断困難で予後不良な病態とされてきたが、診断さえつけば化 学療法による寛解を見込めるので早期診断の意義が大きい病態である。進行する認知機能低下を認め,血管姉妹 領域に一致しない梗塞様の所見や橋の信号異常,髄膜の造影効果等がみられた場合,本症も別に挙げる必要が あると思われる。
FLAIR像で深部白質優位の高信号あり、T1強調像ではその一部に低信号域がみられる。
大脳白質に多発する梗塞巣と微小出血を認める。
本疾患では脊髄病変を伴うことは稀である。
今後の追加検査としては,皮膚生検や骨髄生検,髄液検査がある。
Copyright © Bayer Yakuhin, Ltd
Last updated on 2021/05/03