線量管理システム “Radimetrics” ユーザーミーティング in 岡山
倉敷中央病院
ユーザーミーティングの様子
2019年9月8日(日)倉敷中央病院放射線技術部3Dラボ室において、線量管理システム“Radimetrics”を使用している倉敷中央病院、川崎医科大学附属病院、岡山赤十字病院、岡山大学病院の線量管理担当者12名が集まり第1回目のユーザーミーティングが行われた。
開会にあたり倉敷中央病院放射線技術部の光井氏より、各施設での線量管理の運用方法や課題等の共有を行えるユーザーミーティングを通じて、今まで以上に有用で効率的な線量の記録や管理の実現を目指したいと述べられた。
各施設の線量管理システムの運用状況
午前のセッションでは、各施設の線量管理システムの運用状況の共有を目的に、最初に、倉敷中央病院の福永氏より線量管理の運用状況の説明がなされた。現在、関連施設のCTを含めた合計15台のCT(内9台はRDSR対応)の線量管理をRadimetricsで行っており、主に診断で使用している6台のCTの線量推移値は、病院に月次報告されている。病院への報告書は、Radimetricsの統計処理機能(以下ダッシュボード)で作成した統計データをCSVで出力し、その後エクセルで月次推移データに修正してから報告書を作成している。Radimetrics側で月次推移データまでダイレクト表示できるダッシュボードを作成できればより効率的な運用が行えるとのこと。オブザーバとして参加した弊社アプリケーション担当の山内より、実機を用いて月次推移のダッシュボードの作成方法を紹介した。(図1)
図1:月次推移のダッシュボード例
Radimetricsの有用な機能として、RDSR(Radiation Dose Structured Report)の情報だけでは無く、DICOM画像のタグ情報を読取り検査情報として活用出来る点を挙げられた。具体的には、CT装置の種類によって出力されるRDSRの内容が異なる場合があり、例えば、あるCT装置では複数シリーズを撮像した場合は、全てのシリーズで同じAcquisition Protocol名(プロトコル名)になるが、別のCT装置ではそれぞれのシリーズで違ったプロトコル名で出力される。現場の希望としては、より詳細な統計処理を行う為にシリーズレベルでの仕分けや統計を行いたいが、全てのシリーズで同じプロトコル名が出力されている場合はより詳細な統計処理を行うのが困難になる。このような場合、Radimetricsでは、DICOM画像のタグにあるSeries Descriptionの情報も活用できるため、全てのシリーズで同じプロトコル名であってもSeries Descriptionの情報からシリーズ毎の仕分けやシリーズレベルでの統計処理が行えるのが利点であると述べられた。
CTのプロトコルに関して、倉敷中央病院では見直しを行い、より細分化したプロトコルでの運用を最近始めたとのこと。例えばChest-Abdのプロトコルでも、オーダーの内容や操作者によって骨盤まで撮像するケースがある等、実際の撮影部位及び範囲と使用するプロトコルが一致しないケースを防ぐために撮影部位及び範囲と一致したプロトコルに見直しを行った。この見直しにより、DRL(診断参考レベル)とのより正確な比較や、Radimetrics内で算出している臓器吸収線量や実効線量の精度が上がることを期待していると述べられた。また、今後、他施設との線量比較も考慮する必要があり、各施設である程度共通化されたプロトコルの使用が必要になるために、岡山県内だけでも共通したプロトコルの使用に関して今後議論したいと述べられた。
次に川崎医科大学附属病院の池長氏より線量管理の運用状況の説明があり、現在DRLs(診断参考レベル)で設定されているCTの6つの部位でのCTDIvolとDLPの統計を行っているとのこと。(図2)ただ、頭部と心臓の一部の検査の線量情報が統計データから漏れているため、今回のユーザーミーティングを通じて、原因の確認と対策を行えればと述べられた。また、川崎医科大学附属病院でも現在CTのプロトコルの見直しを行っており、倉敷中央病院と同様に、より細分化したプロトコルへの移行と、またプロトコル名の最初に数字を入れ、より分かり易いプロトコル名での運用を検討していると述べられた。
図2:各部位での統計データの説明画面
次に岡山赤十字病院の都能氏より線量管理の運用状況の説明があり、CTでの線量管理と使用しているプロトコルの説明が行われた。(図3)Radimetricsが夜間にデータを取得し、線量計算を行っているが、全検査を取込めているか少し不安があるとのこと。この課題に対して、日々の検査数を出力できるダッシュボードを利用して日々のCT検査数を出力してRIS等と確認できると他施設からアドバイスがあった。また、SSDE(Size-Specific Dose Estimates)や実効線量を精度よく計算するためには、Axial画像情報から取得できるスライス毎のCTDIvolやmAs値等、より細やかな照射条件を用いることが好ましいが、PACSに全Axial画像が保存されていない場合もあり、そのような場合、Axial画像を3Dワークステーションから取得する等のデータフローに関しても活発な意見交換が行われた。
図3:現在使用しているプロトコルの説明画面
実機を用いたハンズオントレーニング
午後のセッションでは、倉敷中央病院の福永氏より実機を用いたダッシュボードの作成方法の説明が行われた。(図4)倉敷中央病院の光井氏のサポートの下、参加者は倉敷中央病院の端末を用いてRadimetricsを操作しながら、ダッシュボードを効率的に作成する為に必要なプロトコルの整理方法や、マスタープロトコル機能の設定方法等の説明がハンズオン形式で進められた。説明された機能の詳細は以下を参照。
図4:各プロトコルでの装置別の線量比較のダッシュボード
ダッシュボード機能
蓄積された線量情報を解析、分析を行う為の統計処理機能。ユーザー毎にヒストグラム、散布図や箱ひげ図等20種類以上のグラフを作成することができ、効率的な線量管理を支援する機能。
プロトコル管理機能
各施設の装置で使用されているプロトコルを施設、装置や部位毎に振分けを行う機能。この設定を行うことにより、自院で撮影した検査なのか、関連施設の検査なのか、もしくはCD等で取込んだ他施設の検査かを判別して自動的にプロトコルの振分けを行え、効率的にダッシュボードの作成を行うことができる。
マスタープロトコル機能
各装置で使用されているプロトコルを紐付する機能。DRLのCT頭部撮影の統計データを作成する場合、例えば”DRL CT Head”というマスタープロトコルを作成し、DRLのCT頭部撮影に該当する各装置のプロトコルをマスタープロトコルのDRL CT Headに紐付することができる。この紐付の設定により、ダッシュボード作成時に、各装置の複数プロトコルを選択する代わりにマスタープロトコルのDRL CT Headを選択するだけで効率的にDRLのCT頭部撮影の統計データを作成することができる。また、マスタープロトコルに線量基準レベル(線量しきい値)を設定することができ、しきい値を超えた検査のみの抽出や管理者へのアラートを発信することができる。
午前、午後のユーザーミーティングを通じて、各施設での線量管理の課題に対して、他施設からのアドバイスや具体的な解決策の説明が行われるなど、活発な意見交換が行われた。また、線量管理の課題だけでは無く、各メーカーのCT装置の操作方法や、コンソール上で選択したプロトコルや情報がDICOM画像やRDSRのどこのタグに反映されるか等、明日から現場で使える情報の交換も活発に行われ、参加者にとって非常に価値のあるユーザーミーティングになったと思われる。次回のユーザーミーティングは来年の2月頃に開催の予定。