医療被ばく管理システムの導入と医療情報環境整備

岩手医科大学附属病院

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Iwate Medical University

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医療被ばく管理システムの導入と医療情報環境整備

はじめに

近年、医療被ばくの最適化およびその管理は特に重要視されており、エックス線を含む管理体制の構築が2020年4月から義務化される。また、これに伴い、システムとしての医療被ばく管理環境は重要性を増している。2019年9月の大学病院移転を転機とし、我々は2015年から医療情報システムの段階的整備を進めており、その中で医療被ばく管理システムである「ラジメトリクス」の導入も行ってきた。ここでは医療情報システム整備の概要とともに医療被ばく管理システム導入の経過について報告する。

医療情報システムの現況と問題点

医療情報システムには解決すべき様々な問題があるが、われわれがシステム整備に着手した目的は、大学移転に向け多岐にわたる複雑なシステムを整理すること、および情報のベンダーロックインからの解放である。

我々が行ったのは、
1)仮想環境導入によるハードウエアリソースの一元管理
2)情報連携基盤の導入とシステム統廃合
の二点である。

個別の詳細は割愛するが、仮想環境によるハードウエアリソースの一元管理はこれまではハードウエアの保守期限がシステムの寿命となっていた点を克服するとともに、無駄なハードウエアリソースの削減、耐障害性の向上を目的として導入した。

医療情報システムの現況と問題点

HISはベンダーの再選定から始まり、部門システムは統廃合を遂行した。HISは標準パッケージを用いることが前提であったため、システム対応が困難で運用でカバーしきれない事例も多く存在する。したがって、円滑な運営のためには部門システム側で対応する仕組みが必要だが、HISは他システムからの入力を原則として受け付けない。従来のHISを頂点とした情報連携では、部側で発生した情報の連携が困難となるため、情報連携基盤を導入した。これをハブとすることで、相互連携の他、HISで保存できない情報を連携基盤上に置くことで、up to date な情報が常に保管されることになる。また、基盤上のデータを活用することにより、複数のシステム間の相互連携も可能となっている(図1)。

図1. 病院情報システムの構成概念図 a. 従来のオンプレミス環境 b. 仮想環境および情報連携基盤導入後の環境

医療被ばく管理システムの導入

上記整備では部門システムとして放射線画像管理システム(picture archiving and communication system: PACS)、放射線部門システム(radiology information system: RIS)、放射線レポートシステムの統廃合がコアの部分であった。血管造影や心臓超音波、心臓カテーテル検査などの動画像や他院紹介画像の管理を同一システム上で行うための構築が行われ、その一環として医療被ばく管理システム「ラジメトリクス」の導入も行った(図2)。近年はPACSやRISのメーカーからも同様の製品が多く発売されているが、導入当時は選択肢が限られていたという背景はあるものの、放射線部門システムから見て3rd partyの製品である分、マルチベンダー、マルチモダリティの環境への適応はむしろ安心して行えた。仮想環境への対応も柔軟で、システム導入後問題無く稼働し続けている。

図2. 医療情報システムと被ばく管理システムの連携

他のPACSやRISのベンダーとは異なり、其々のシステムに過度に親和性の高いシステムでは無いため、目的に応じて各システムとの機能連携を考慮する必要は生じる。しかしながら、インターフェースはDICOM1)やHL72)といった標準インターフェースを持つため、連携の構築は容易である。

また、3rd partyの位置づけであるが故に、DICOMヘッダーの解釈においても公平な仕様であり、これによりモダリティでのDICOMヘッダー情報の間違いや文字コード設定情報の不整合など、これまで認識されなかった問題を的確に把握する一助ともなった。また、撮影オーダリングに紐づく撮影プロトコルの大幅な見直しのきっかけにもなった。

一般ユーザーサイドから見ると、不整合をシステム内部で自動的に(力業で)修正表示してくれる方が有難いと思われるかもしれないが、これらの情報の不整合は情報連携では致命的な欠陥となり得る。したがって、ユーザーもベンダーも相互が問題点を理解し、根本的に解決をしておくことが、今後の医療情報連携においては重要であり、情報のベンダーロックインからの解放につながることを意識しておく必要がある。

医療被ばく管理システムの活用

現時点ではまだスタンドアローンのシステムとして動作しており、一般的な患者単位での被ばく線量積算やプロトコル毎のモニタリングに利用し、診断参考レベル(diagnostic reference levels: DRLs)との整合性の確認などに利用されている。

将来的には連携基盤を介してオーダリング時にdose積算のアラートを出して、検査適応は撮影範囲について注意を喚起する仕組みなどclinical decision supportの一環としての利用や次世代情報交換規約であるHL7 FHIR3)への適応を経てpersonal health record(PHR)への応用など、様々な展開を想定している。これは本システムに機能的な独立性があることも重要であるが、連携基盤との親和性が高く、連携基盤上で今後開発される様々なシステムに応用されるポテンシャルを持っているということでもある。

システム化の意義

被ばく管理を含めシステムを作るということは目先のその場限りの活用のみを考えるのではなく、全体像を把握しながら拡張してゆく必要がある。情報連携や活用のビジョン無しに進めると新たなベンダーロックインのリスクを重ねることになることに留意が必要である。

医療被ばく管理システムの使用経験

医療被ばく管理システムの使用経験

背景

近年、医療被ばくの管理が必要にされており、管理のための指針が示されている。画像診断管理加算3の新設によるCTのプロトコル毎での線量管理や、医療法施行規則の一部改正により、2020年4月1日から医療被ばくによる線量記録の適正な管理、記録を行うことが義務付けられている。そのような状況の中、当施設で医療被はく管理システムであるラジメトリクスを導入し、線量管理の運用を行っている。ここではその使用経験を報告する。

Radimetricsとは

ネットワーク型の医療放射線情報一元管理システムであり、線量情報はDICOMタグ情報やRDSRから自動的に取得し、診断参考レベル(DRL)との比較や被験者毎の線量管理、線量データの収集や解析などを行うシステムである。

運用可能な線量指標はCTDIvol、DLP、実効線量(ICRP103、60)SSDE、DAP、透視時間、基準点線量、入射皮膚ピーク線量、Exposure Index(EI)、平均乳腺量等様々あり各装置における検査件数や、DRLと自施設の比較、体重当たりの線量分布、各部位における被ばく線量など表示できるシステムとなっている。

導入時の問題点

システム導入後、データの解析を行ったところ、様々な問題点が発覚した。各モダリティから出力されるDICOMタグ情報の施設名がバラバラ(Fig.1)であった。またプロトコル名が文字化け(Fig.2)しており、ラジメトリクスで正しく表示できなかった。そのため当院に設置されているCT6台のうち、本院にあるキヤノンのAquillion CXL、Aquillion16とGEヘルスケアのLightSpeed VCTのCT3台についてデータ整理を行い、問題の解決を図った。

導入時の問題点
Fig.1
導入時の問題点
Fig.2

問題点解決方法

施設名がバラバラであった問題に関しては、CT装置毎に統一した内容に設定し直した。統一する際に注意したところは、DICOMタグのCharacter Setの設定次第で日本語は文字化けする可能性があるので、英語(1byte文字)で統一した。

日本語の文字化けについては、ユーザー側、ベンダー側それぞれで対応する必要があり、ユーザー側はプロトコル名に英語表記を追加して様々な条件でも対応できるようにした。

ベンダー側ではそもそもDICOMタグにプロトコル名が出力されていなかったため、プロトコル名を出力するように変更した。またモダリティのCharacter SetがIR6であったため、日本語が入ると文字化けするので、Character SetにIR87を追加し日本語表記でも文字化けしないように対応した。

PACS側はラジメトリクスからのQ/Rの際、Character Setを強制的にIR6もしくは空白で出力していたので、もともとDICOM画像に入っているCharacter Setのまま転送するように設定を追加した。以上の設定により無事に文字化けを解決できた(Fig.3)。

問題点解決方法
Fig.3

Radimetrics使用例

頭部プロトコルでの線量分布(Fig.4)を確認すると、グラフで黄色く囲んでいる外れ値が散見されたため、この値について詳しく原因を調べた。線量過多については再撮や撮影範囲が広く設定されており、線量過小については低年齢の患者であった。同様に腹部を撮影しているプロトコルでも同様に外れ値の検討を行ったが、撮影範囲のばらつきが大きく、一致した範囲での線量データは得るにはプロトコルの整理が必要であることがわかった。

Radimetrics使用例
Fig.4

利点・留意点

ラジメトリクスを導入した利点としては施設全体の線量管理や、個人の体重や年齢、BMIなどのフィルターをかけ、体形、年齢別の線量管理を行うことが可能になる。また線量管理に必要なデータがあれば、必要な情報を抽出し、図や表などで分かりやすく示すことが可能になる。

留意点としては導入時に各モダリティ、PACS、ラジメトリクス間でのデータ送受信方法を確認する必要がある。この作業が正しく行われないと、様々な問題が発生しラジメトリクスの機能を生かしきれない要因となる。もう一つの留意点としてプロトコルによって撮影範囲にばらつきがあることが挙げられる。ラジメトリクス側で同一プロトコルを集計してもデータの正確性が欠けてしまうため、これを防ぐためにプロトコル名と撮影範囲の検討が必要になる。

今後の展望とまとめ

プロトコル毎での撮影範囲のばらつきを無くしていこうと考えており、そのためにプロトコル名の整理や、厚生労働省標準規格として認定されているJJ1017を撮影範囲の粒度を揃えるために使用できるのではないかと考えている。

またCTのデータのみではなく、透視や血管造影、PETといった全モダリティを含んだ線量管理を行いたいと考えている。そして最終的には患者ごとに各検査での被ばく線量、累積線量の取得を行い、被ばく線量を最適化していきたいと考えている。

線量管理ソフトを使用したCTの線量管理を行うには、DICOMタグの整理や撮影範囲の統一といったいくつかの問題点がある。しかし、これらの問題が解決できれば様々なフィルターで各プロトコルの線量管理を行うことができるため、ラジメトリクスは今後線量管理を行う上でとても重宝するソフトであると考えている。

参考文献

1)
DICOM Standard. https://www.dicomstandard.org/,(参照 2019-09-27)
2)
Health Level Seven International. http://www.hl7.org/index.cfm,(参照 2019-09-27)
3)
HL7 FHIR R4. http://hl7.org/fhir/,(参照 2019-09-27)
田中  良一 教授

田中 良一 教授

岩手医科大学 総合情報センター
岩手医科大学 医学部 放射線医学講座
岩手医科大学 歯学部

口腔顎顔面再建学講座
歯科放射線学分野

廣田  靖之 氏

廣田 靖之 氏

岩手医科大学附属病院
中央放射線部

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