マルチペーシェント用CTインジェクタの
経験者からみたCentargoの有用性

山口大学附属病院
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〒755-0046 山口県宇部市南小串1丁目1-1
TEL 0836-22-2111
許可病床数(一般病床:713床、精神病床:43床)
CT検査では革新的な2管球CT装置を用いて、心大血管領域をはじめ全身臓器のスキャンが行われている。
CT担当技師:6名(多列型CT4台)
看護師:別室で患者のルートを確保する。

インタビュー動画はこちら(約 5 分)

Centargo導入前のマルチペーシェント用CTインジェクタについて

 2016年にCTの更新に伴い第3世代のデュアルソースCTを導入したことで、低管電圧撮影やデュアルエナジー撮影が造影剤の低減に有用だという手応えを感じた。しかし、シリンジ製剤を使用すると造影剤が半分以上余ったり、後押し用の生食準備も煩雑であるなど、課題があった。
 2017年の中四国放射線医療技術フォーラム(CSRFT)の展示会場で、使用量に応じて患者に造影剤を投与し、残りの造影剤を次の検査に利用する他社のマルチペーシェント用CTインジェクタがあることを知った。
 さらに140mgI/mLの低濃度造影剤が近い将来に使用できるようになるとの情報を得たので、当院で進めている造影剤の低減に関する研究に適しているという期待から、共同研究として最初のマルチペーシェント用CTインジェクタを導入した。

Centargoの作業効率について

 2024年6月に導入したCentargo(マルチペーシェント用CTインジェクションシステム:バイエル薬品社製)について、久冨先生は「実際、Centargoを導入して一番驚いているのは、作業効率が非常に高いということ。低濃度造影剤を使うためにボトル式のマルチペーシェント用CTインジェクタを導入したが、実際にCentargoを使用し始めて検査効率が非常に良くなるというメリットが見えた」と語る。
 作業効率について詳しく聞くと「シリンジ製剤の場合は、空シリンジに生食を充填し、延長チューブに繋げてインジェクタにセットするため、前後の工程で2分~3分ほど準備に時間がかかる。Centargoでは、最初に24時間連続使用可能なデイセットを装着すれば、その後は患者ラインを取替えるだけなので20秒ほどで完了する」と、使えば使うほど時間効率の面でも魅力を感じるそうだ。
 さらにコスト面でも「空シリンジに生食を充填する物品・手間(時間)が省けるため優れている」と語る。上原先生は「消耗品の点数を比較すると、他のインジェクタでは空シリンジなど5点ほど必要になるが、Centargoでは患者ラインだけで済む」と、患者に請求することが難しい消耗品の点数が抑えられる点を強調した。

最適な画像診断のために

 久冨先生は「Centargoは“患者を待たせずに済む”とか、“必要な検査を求められている時間内にこなすことができる”などのメリットがあり、放射線科として使命を果たすという意味で適している」と語る。
 造影剤の低減が期待される撮影方法などCT装置側の工夫もあり、腎機能低下例や、造影CT後に血管撮影の予定がある急患など、担当医が造影剤の総投与量を気にする場合に「これくらいの量でできますよ」という提案をする機会が増えている。Centargoであれば、生食と造影剤の同時注入検査の準備を短時間で完了できるので大きな武器になるそうだ。
 また、同時注入検査の有用性について尋ねると、3段階注入法(造影剤⇨生食と造影剤の同時注入⇨生食の後押し)を用いた肺動脈や肺静脈の検査を例にあげて「臨床的には、造影剤投与量を半分に減らす際、注入時間を固定すると注入速度が遅くなり、注入速度を固定すると注入時間が短くなるという普段の撮影タイミングとのズレが生じる。しかし生食と造影剤を同時注入することでボリュームを確保し、従来のプロトコルと同じタイミングで撮影しても同等なコントラストの画像を得ることができる」と述べた。
 さらにCentargoを導入してから基本的に生食の後押しを全例に実施するのが当たり前になっている。
 「容量の大きな生食バックを取付けることで、1日中、量や準備を気にせずに後押しが実施できる。生食の後押しを実施しなかった場合、鎖骨下静脈に残った濃い造影剤からのアーチファクトが気になったり、注入した造影剤の全量が、その患者の造影効果に活かせてないのではないかという懸念が生じることもあった」とCentargoによる生食の後押しの有用性を語る。

小児検査への使用について

 小児検査について尋ねたところ、上原先生は「小児CT検査は使用する造影剤量も少なく、シリンジ製剤に比べて造影剤の投与量がフレキシブルに設定できるCentargoは運用面で優れており、積極的に使用している」と述べた(図1)。

児造影CT検査時のインターフェース画面の一例

図1 小児造影CT検査時のインターフェース画面の一例

 続けて久冨先生は「以前は造影剤を用手注入していたが、人によって注入速度が異なったり、被曝を避けるために造影剤の投与後、CT室を退出してから撮影を開始していたので撮影タイミングが遅くなる傾向にあった。近年小児であっても術前精査などの高精度な画像が求められる機会が増えているため、インジェクタを使用して適切に造影することが小児検査でも求められている」と語る。造影剤と生食を同時注入することで注入量を稼ぎ、撮影タイミングの失敗を防ぐという意味でもCentargoは小児検査に適している(図2、3)。

小児造影CT(横断面)

図2 小児造影CT(横断面)

症例 8 歳男児(体重 22kg)

小児造影CT(冠状断面)

図3 小児造影CT(冠状断面)

Centargoの可動性

 上原先生は「Centargo本体は、コードレスでキャスターがあり非常に動かしやすく、通信機能があるため天吊タイプがなくても問題なく運用できる」と語る。
 天吊タイプではCT室に固定されるため限定的な使用になり、患者が寝ている上で操作をする場合もあるため圧迫感を与えるなどのデメリットがあるそうだ。
 久冨先生は「Centargoの患者ラインは十分長いので寝台の左右どちらに置いても、或いは1か所に固定で置いたとしても、大抵の検査はこなせる。CT室が狭くて置く場所に困るということはないと思う」と述べた。

血管確保について

 上原先生は「留置針で穿刺した後、延長チューブを繋いで、そこに生食シリンジを付け、シリンジで引いた状態で逆血を確認している」と語る(図4、5)。久冨先生は「留置針に直接患者ラインを繋ぐという施設であれば、逆血確認ができないという不安があるが、一方で生食によるテスト注入ができるという強みもある。実際、逆血で血管確保の確認ができていても一定数の患者で血管外漏出は発生している。ある程度の注入スピードで生食をテスト注入すれば、血管確保の確認ができると考える」と語る。

血管確保時に利用するデバイス

図4 血管確保時に利用するデバイス

小児造影CT(横三方活栓を用いた患者ラインと留置針の接続断面)

図5 小児造影CT(横三方活栓を用いた患者ラインと留置針の接続断面)

ライン接続の動画はこちら(約 1 分半)

Point

患者ラインと留置針が一直線になるように配置する

知ってほしいCentargoの魅力

 上原先生は「従来のインジェクタに慣れていればCentargoの操作性の良さを、どこの施設でも共感してもらえると思う。検査業務のスピードが求められる、特に一人で1台のCTを担当されている施設では、作業効率の良さに納得いただけるのではないか」と語る。操作性の慣れについても「スタッフが、導入当初から教えてもいないのにすらすらと使いこなせている印象を持った」とのこと。
 久冨先生は「従来は、シリンジに直接触れて準備することが当たり前という感覚だったが、Centargoを使うとシリンジに触らず、さらに患者に直接繋がるようなところにも一切触ることなく検査が完了する。このように感染防止や衛生面にも優れたシステムである。大きな生食バックを付けておけば、Perfusionの後にCTAを撮影するような複雑な注入プロトコルであっても、途中で生食が不足する不安もなくなる。これまでのインジェクタとは、かなり違うシステムであるということを、ぜひ知ってもらいたい」と述べた。
 現在、低管電圧撮影は汎用機でも一般的に使える技術となり、造影剤の低減は多くの施設で検討されている。そのような施設で検査のプロトコルを変えずに生食と造影剤の同時注入を効率的に行いたいと考える施設は、Centargoが有力な候補になると述べた。

久冨庄平先生

久冨庄平 先生
山口大学医学部附属病院
放射線部
副診療放射線技師長

上原拓也先生

上原拓也 先生
山口大学医学部附属病院
放射線部
診療放射線技師

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