Stellant CT Injection Systemと
Aquilion Prime SP 80列との組合せ事例
吉村病院
所在地:〒814-0002
福岡市早良区西新3-11-27
電話番号:092-841-0835
病床数:57 床
診療科目:外科/整形外科/消化器内科/循環器内科/放射線科/消化器外科/内科/リハビリテーション科/泌尿器科
使用インジェクタ:Stellant CT Injection System
吉村病院は1946年の開院以来、「地域の人が安心してかかれる病院でありたい」と、近隣の高度急性期病院と連携しながら地域に根差した診断・治療を日々行ってきた。同時に緊急告示病院として24時間体制で患者を受け入れ、適切な医療を提供している。
近隣の急患センターから紹介されてくる患者も多いという同院では、CTの検査件数は1日およそ10件。このうち造影CT検査は約2割で、生食(生理食塩液)のフラッシュを行う検査は月に5例ほど。基本的に循環器系の疾患を対象とした造影CT検査が生食フラッシュを行う対象となる。
放射線科スタッフは、常勤3名、非常勤が2名。放射線科として検査に携わる看護師はおらず、外来の看護師がその業務にあたる。患者さんが到着してから検査を受けるまでは看護師、検査後の後片付けなどは診療放射線技師が行っている。
機能性はそのままコスト面でも大きく貢献
同院が16列CTから切り替えてキヤノンメディカルシステムズの「Aquilion Prime SP 80列」(以下、Aquilion Prime SP)を導入したのは新型コロナウイルス感染が確認された2020年2月。従来使用していた装置の更新タイミングだったこともあり、あらゆるニーズに対応できる機器を検討した結果、DeepLearningを用いて低線量での撮影を可能にした本装置に決定した。
新たなCT装置の導入に合わせてCT造影用インジェクタもバイエル社製「Stellant CT Injection System」(以下、Stellant)に切り替えた。
インジェクタの選定に際して、機能面では撮影タイミングを決定するTBT法(Test Bolus Tracking)ができるかどうかが最低限の判断材料であった同院。塚本先生は「TBT法に加えて、Aquilion Prime SPの特長である、線量をどこまで落とせるか、造影剤の量をどこまで減らせるかという撮影プロトコルにインジェクタが対応できればベストなインジェクタだと思っていた」と。また、操作性だけでなく価格も重視したという。「私どもみたいな小規模の病院だと、予算のことも考えざるをえません。小規模の病院でも被ばく線量を考え、造影剤の量も考えて、今までと遜色なく運用できるバイエル薬品さんのインジェクタは、コストパフォーマンスの面でも非常に魅力でした」と述べた。
実際、Stellantはテストインジェクションからフラッシュまで、最大6フェーズのプロトコル設定が可能であり、さらに造影剤と生理食塩液が任意の比率で注入できる同時注入が行えるため、期待するプロコトコル設定が可能であった。
バリアブルヘリカルピッチ撮影の実例
バリアブルピッチヘリカルスキャンは、被ばくを低減しつつ、画質の劣化も防ぎ、広範囲の撮影に有用である。この撮影法は、設定した撮影条件を任意の範囲内で切替えてスキャンできる。
一例を紹介すると、心臓を中心にした広範囲撮影の場合、撮影領域を、1)頚部から上胸部、2)心臓領域、3)腹部から下肢の3フェーズに分けています(図1)。それぞれの撮影フェーズに最適な造影剤を投与するために、クロス注入法を用いています(図2)。それぞれのフェーズで、造影剤がどのような条件で注入されているかを可視化でき、納得のいく画像が得られています(図3)。
図1 心臓を中心にした広範囲撮影のスカウト画像
図2 心臓を中心にした広範囲撮影時に用いるクロス注入法の1例
図3 心臓を中心にした広範囲撮影の症例
ひとりで準備できワークフローをサポートするStellantのオート機能
ハイエンドなCTにも対応したStellantの特長は、直感的な操作性と造影条件を簡便に設定できること。小湊祐作先生は、「これまで使用していたインジェクタと基本的な操作は同じで支障なく使えています」と述べる。特にお気に入りの機能は、シリンジの取り外しに連動して自動的にピストンが初期の位置に戻る“オート・リラクト”だそうだ。「検査が終わったらカチャッと空シリンジを外すだけで、ピストンが自動的に元の位置まで戻るんですよね」と塚本先生。小湊先生も「あれいいですよね。業務が楽になったというのもありますが、空打ち防止にもなるところも大きなポイントです」とうなずく。
放射線科専任の看護師がいない同院では、造影検査を行う際のルート確保、患者さん対応は、外来の看護師がその都度状況に応じて臨機応変に対応している。診療放射線技師は、その間、一人で造影検査の準備を行う場面が多い。小湊先生は、「生理食塩液の数値を入力するだけで、ボタンひとつで自動的にエア抜きをしながら充填するオート・ロードはいいですね」と言う。続けて塚本先生が「ワークフローは断然違うと思います。ボタンひとつで操作できるのは、めちゃくちゃ便利で機能的。ひとりで準備できるのは効率的だと思いますね」。
オート・ドッキング、オート・ロード、オート・プライム、オート・リラクトの4つのオート機能は、面倒な作業を自動化し、検査にかかる手間と時間を大幅に短縮、検査効率を向上させている。
ほかにも、Stellantには様々な機能があり、造影剤の注入データを管理するCertegra Workstation は検査終了後、自動的に注入情報を保存できる。これにより、従来手書きで行ってきた記録管理業務も自動化され、ワークフローの効率化が期待される。
衛生管理が問われるニューノーマル時代にも対応したオート機能
オート機能が充実しているためインジェクタに直接触る回数を少なくし、スムーズな操作が可能であり、衛生面でも貢献している。
Stellantは操作性で安全を確保するだけでなく、消耗品のパッケージにも工夫が凝らされている。シリンジとチューブが減菌されたひとつのトレーにパッケージされているため、基本的に1回空けてセットするだけ。外包装に触れる回数を最小限にすることができる。さらに同梱されている200mLシリンジは、クロス注入法など通常の検査よりも生食の容量を必要とする場合、重宝する(図4)。
機器の選定にはこれまでの経験値、「使いやすさ」を重視してきた塚本先生は、「自分たちが想像しているインジェクタは多分みんな一緒だと思うんです。それなら購入価格が低い方がいいですよね」と言う。「感覚的には今まで使ってきた他社のインジェクタがノートパソコンで、バイエル社のStellantはタブレット端末みたいなものじゃないでしょうか」と語る小湊先生。さらに「導入前にどこまでできて、何ができないかを聞いた時に、他社との違いは可変注入のところだけ。それもプロトコル設定が6フェーズまであるので、造影の効果は変わらないなと思ったんです」。
実際に使ってみた感想を「困っていることはないです。サポートも電話したらすぐに対応してくれましたし」と語る小湊先生。ハイエンドなCTにも細かく対応したオート機能とコストパフォーマンスの良さ。次世代のインジェクタがここにある。
図4 チューブとシリンジが同梱されている滅菌済消耗品パッケージ(矢印)
小湊祐作先生
吉村病院
放射線科技師長
塚本洋介先生
吉村病院
放射線科