新しいMRI Injection System MRXperionの使用経験 放射線科スタッフの負担を軽減する機能・装備

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さいたま市立病院

医療保護施設、助産施設、労災保険指定医療機関、結核指定医療機関、母体保護法指定医のいる医療機関、指定養育医療機関、指定自立支援医療機関(育成医療・更生医療)、救急指定医療機関、小児慢性特定疾病指定医療機関、臨床研修病院、日本医療機能評価機構、DPC対象病院、災害拠点病院、地域がん診療連携拠点病院(国指定)、地域周産期母子医療センター、地域医療支援病院、難病指定医療機関、第二種感染症指定医療機関、未熟児養育医療機関、救命救急センター
〒336-8522 埼玉県さいたま市緑区三室2460番地 標榜科目:内科、消化器内科、呼吸器内科、精神科、脳神経内科、循環器内科、小児科、新生児内科、外科、消化器外科、血管外科、呼吸器外科、整形外科、リハビリテーション科、脳神経外科、心臓血管外科、小児外科、皮膚科、形成外科、泌尿器科、産婦人科、眼科、耳鼻咽喉科、歯科口腔外科、放射線診断科、放射線治療科、麻酔科、救急科、病理診断科、緩和ケア内科
スタッフ:放射線診断科医 5名/放射線治療医 2名/診療放射線技師 36名/外来検査部門看護師 21名 装置:一般撮影 5室/ X線TV 3室/血管造影 2室/IVR-CT 1室/ハイブリットOPE室 1室/ CT 3室:MR 3室(3T1台、1.5T2台)/放射線治療 リニアック 1台、サイバーナイフ 1台/核医学 SPECT 1台

コロナ禍によって生まれたNew Normal「新しい常識」

 Withコロナの時代においてNew Normalへの対応が求められる今日、医療機関でも New Normal に向けた様々な取り組みが行われている。例えば、さいたま市立病院ではMRIを撮像する前に肺のCT撮影が必要になる場合もあり、CT検査数が前年に比べて1.5倍ほどに増加した。さらに、衛生管理面においても、医療スタッフの負担が益々増加している。

検査効率の改善❶
オート機能とシリンジキット用トレイ

 このような状況において、2020年3月に導入されたMRXperion MR Injection System(以下、MRXperion )の使用経験について伺った。

 さいたま市立病院では装置1台につき放射線技師1人の配置でMRI検査が行われており、MRI Injection System では初搭載となった4つのオート機能と、シリンジキット用トレイが業務効率の改善に大きな役割を果たしている。

 具体的には、チューブ内のエア抜きを自動でおこなってくれるので、医療スタッフはこれまで以上にチューブ内のエア状態を確認することに集中できます。また、ペデスタルスタンドに専用のシリンジキット用トレイが装備されていることから、エア抜きの際に生理食塩水の受け皿として利用できる(図1)。さらに、検査終了後にシリンジをインジェクターから取り外すと、ピストン(押し子)が自動で装着前の状態に戻るオート機能があるため、直ぐに抜針を行うことができる。

 シリンジキット用トレイの使い心地について佐藤先生(中央放射線科 主査)は、「1人でチューブ内のエア抜きをする際、あふれる生理食塩水の受け口として、スタンドにセットしたシリンジキット用トレイを利用できるのは非常に便利である。使用済みの注射器や抜針したルートを撮影室の外のごみ箱に捨てに行く前の一時的な置き場にすることもできるので本当に助かっている。忙しい時ほどこのシリンジキット用トレイが役にたっている」。検査手順の軽減のみならず、検査室と操作室を往復する必要がなくなったことで、多忙な時間帯でも1人で操作をすることが可能になったと高評価である。

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図1 さまざまなことに使えるシリンジキット用トレイ

 効率化という点では、シリンジをインジェクター本体に装着する際にシリンジの装着方向を気にする必要がなくなった点も挙げられた(図2)。「これまでのインジェクターは、装着方向が決まっており、少しでもずれるとエラーが発生していたが、現在はエラーもなくなり、スムーズに準備することができるようになった」と佐藤先生は述べた。このように、様々な新しい機能を使いこなし、医療スタッフの負担軽減が図られている。

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図2 シリンジ挿入の様子

検査効率の改善❷
ヘッド上のボタンで、生食テスト注入・KVO(点滴機能)の開始ができる

 MRXperionでは、ヘッド上のボタンで、生食テスト注入の開始が操作できるのも特筆すべき点である(図3)。同機能は、さいたま市立病院のように、看護師がMRI室に入る前に別室で患者さんの生食ラインを取る手順で検査準備を行う施設にとっては、血管外漏出のリスク軽減に有用な機能となる。「これまでは、両方の部屋で逆血によるルート確認を行っていたが、MRXperion導入後は、MRI室でのルート確認は全て生食テスト注入に変更している。“引いて”・“押して”の双方向でルート確認することは、患者さんの安全面において有意義である」と藤田先生(中央放射線科 技師長)は述べた。

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図3 全ての操作をヘッドのボタンで可能にしている

 もう一つ、乳腺MRI検査でよく利用されるKVO(点滴機能)の開始ボタンが、MRXperionではヘッド上に装備されている。同機能により、操作室と検査室を往復することなく、患者さんの傍を離れずにKVOを開始できるようになり、点滴開始と同時に患者さんの様子を目視で確認できることから安心して検査を実施することができる。

圧波形の表示機能

 注入圧波形をリアルタイムでチェックすることが可能となったことから、造影剤注入時にトラブルが発生した場合に迅速に対応することができ、操作室に居ながらリスクを察知することができる。「同機能により、造影検査に対する不安感を取り除くことができるようになった」と佐藤先生は述べた。

情報管理機能

 MRXperionは注入履歴をユニット本体に自動保存し、Web browserにより管理する機能を搭載している。また、PACS/RISと接続することによって患者情報を包括的に管理することができるようになった※1。「同機能によって注入レートや造影剤量を管理すれば、検査の再現性などにつながり、患者誤認や造影剤の誤投与防止、造影剤加算の取り損ない防止につながる」と佐藤先生は述べた。

 さらに、オプション機能ではあるが、Radimetricsと接続することでMRXperionを用いて投与したガドリニウムの積算投与量を記録しておくことが可能となる。実臨床での応用にはまだまだ課題も多い機能ではあるが、この機能は被ばく線量管理と同じように今後、必要性が高まってくる機能だと言える。

 今後、医療機関におけるNew Normalはさらに広まり、医療スタッフの負担も増加していくことが考えられる。MRXperionのように安全性と検査効率の改善が期待できるインジェクターは重宝されるようになっていくのではないだろうか。新型コロナウイルスによって変化するNew Normal時代に対応するために、この新しいインジェクターの導入を検討してはいかがだろうか。

※1 院内システムとの接続費は別途必要

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藤田 功先生
さいたま市立病院
中央放射線科 技師長

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佐藤吉海先生
さいたま市立病院
中央放射線科 主査