感染予防の観点・効率化の観点から評価できるCTインジェクター 〜ウィズコロナ時代にも対応〜

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奈良県立医科大学附属病院

〒634-8522
奈良県橿原市四条町840番地

電話番号:0744-22-3051(代表)
FAX番号:0744-22-4121

診療科目:循環器内科/呼吸器・アレルギー・血液内科/消化器・内分泌代謝内科/感染制御内科/脳神経内科/消化器外科・小児外科・乳腺外科/脳神経外科/心臓血管外科/整形外科/歯科口腔外科/産婦人科/眼科/小児科/精神科/皮膚科/泌尿器科/耳鼻咽喉・頭頸部外科/放射線・核医学科/放射線治療科/麻酔科/救急科/総合診療科/形成外科/リハビリテーション科/病理診断科/呼吸器外科/腎臓内科。放射線科の医師54名 診療放射線技師 57名、放射線部 看護師 24名、放射線部 看護婦助手 1名。インジェクター 15台、CT 10台。

はじめに

 奈良県立医科大学附属病院は、奈良県の中核を担う992床の基幹病院である。

 CT検査件数は、1年間で患者数がおよそ35,000人、このうち造影CT検査はおよそ15,000人である。

 放射線科スタッフは、医師54名、診療放射線技師(以下技師)57名が在籍しており、技師はそれぞれ「一般撮影・血管撮影・IVR」、「放射線治療・RI・PET部門・手術室撮影」、「CT・MR」という3つのグループに分けられて配置されている。CTに携わっている技師は15名おり、また、放射線部として検査に携わる看護師は24名が在籍している。看護スタッフは明確なグループ分けはなく、基本的にはIVR、テレビ室、MR・CTをローテーションして勤務にあたっている。

 今回、バイエル社製インジェクターStellant CWS(以下Stellant)を導入した経緯について、中央放射線部 CT係長の森岡雅幸先生に伺った。

 「我々は、今までバイエル社製のインジェクターを使ってきました。今回新しくインジェクターを購入することとなり、他メーカー製品も候補に挙がっていました。その中でバイエル社製品を選んだのは実際にセッティングなどの業務を担当している看護師サイドの意見を優先した結果ですね」と語った。

 中央放射線部准教授の丸上永晃先生も、「数年前から看護師さんがルートを取ってセッティングまで行うなど、お互いに協力してやっています。使い慣れたインジェクターを継続することはありがたいと思っています。また、CT台数の多い現場で複数メーカーのインジェクターを使用することで医療事故につながってしまう事態も考えられるため、同じメーカーのインジェクターを導入するという今回の選択は非常に良いことと思います」と話す。

 北口千寿子師長も「看護師のローテーションを固定していないので、インジェクターを使う頻度に差が生じますが、久しぶりに使うことになっても同じメーカーのインジェクターを導入しているので慣れていて安心ですし、操作ミスによる事故を防ぐことができています」と話した。

コロナ禍におけるCT検査

 まずは、CT検査を行う上で取っているCOVID-19感染症対策をお聞きした。

 「COVID-19感染症対策としては、まずコロナ感染・疑いのある患者さんは、緊急でなければ本館にあるCT3台のうち1台だけを使って、他の患者さんと接触しないよう午後5時以降に検査させていただいています。もし緊急の患者さんで、すぐに検査をする必要がある方には救命センターのCT装置を使用しています。それから検査後については、基本的にコロナ関係の患者さんの検査を終えた後は、部屋の換気が十分に終わるまでは次の検査を行わないようにしています。救命センターは空調機能がよく、大体20~40分ほどは検査時間をあけて十分な換気をしています」と森岡先生。

加えてこの他にも、CT装置の寝台にしいている汚れ防止用のシーツなどは、午前中検査が終わった時点で交換を行い(図1)、それ以外の時間はアルコール消毒液などで清拭する、検査を受ける患者は針金を抜いたマスクを着用するなど、積極的な感染症対策を行っている。

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図1 シーツ交換は通常2、3分でできる

オート機能で効率・衛生面の向上に期待~コロナウイルス対策にも効果~

Stellantの特長は「オート機能がついていることで、機器に直接触れる回数を少なくできる」、そして「シリンジやチューブが滅菌された1つのトレーに同梱されているため、外包装に触る回数を最小限にできる」という点だ。

 この便利なオート機能について、「例えば、セッティング業務は生食用シリンジをインジェクタヘッドに差し込むだけで、あとはStellantのオート機能がサポートしてくれる」、「バイエル薬品のインジェクターしか使用した経験がないので、これが当たり前だと思っていましたが、確かに検査準備や片付けの際に、インジェクターや消耗品に触れる回数も少ないと感じます」(森岡先生)。

 また、生食を長時間置いておくことがない、タッチ回数が少なく済むなど、Stellantは衛生面でも優れている。コロナ禍で感染症対策が要される昨今において、院内というクリーンな環境でもより一層の衛生面追求に寄与することができるといえよう(図2)。

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図2 ワンタッチで生食用シリンジを装着できる。またオート機能があるため、タッチ回数が少なくコロナウイルス対策にもなる

検査手順の工夫

 「手間が少なくなった分だけ、私たちは患者さんに目を向けられる時間を多く取れるようになるということがメリットかと思います」(丸上先生)と、効率面で大変好評だ。

 丸上先生は「CT検査の準備や廃棄手順については、無駄なものを省くという工夫をし、効率的に行っています。でも、人が多くいるというのが何よりの財産ですね。常時看護師さんと技師さんが二人でいるような施設は多くありません。その点でスタッフの体制を揃えてやらせていただいている私たちは、検査の回転を非常に早めることができています」 また、森岡先生は「患者さんのポジショニングを技師が行っているときに、看護師さんには造影剤のセッティングをしてもらっています。セッティングは看護師さんがメインで行ってくれることが多いですが、患者さんの対応をしているときは代わりに技師がシリンジを差し込むようにしていて、なるべくタイムラグが出ないように検査を進めています」と話した。

より高性能な表示も可能なRadimetricsで情報管理

 線量管理システムRadimetricsは造影検査管理機能を備えており、自動注入器からの注入条件、開始終了時間、造影剤詳細、操作者、依頼者、設定値や実際の注入結果・注入最大圧・流量などを取得し、線量画面と同じ検査の枠に表示することができる(図3)。この機能を活用し、Stellantと連携することで、造影剤の注入情報の表示、保存・抽出を容易に行うことが可能となる。さらに、CTの撮像条件と併せて、1つの画面で確認することもできるため、より確実な分析が行えるようになる。

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図3 Redimetricsは、造影剤注入の波形などが確認できる

 森岡先生は、「もともと線量管理システムにRadimetricsを使用しており、Stellantの注入の波形やデータをRadimetricsで確認できるという機能も大きな魅力でした」と話す。

 実際の使用感をふまえて、森岡先生からは「入力の手間がなく、設定時の注入圧や注入状況の設定などを記録できる点がとても助かっています」と高評価だった。

 またRadimetricsは他にも多彩な機能を搭載しており、例えば、CT装置から送信される画像や線量情報を受信して推定線量を算出する機能、また、患者の被ばく線量の管理やトラッキング機能、さらにはシミュレーションツール機能(検査での線量の分析や、管電圧、電流、照射範囲などを変更した場合に増減する線量のシミュレーションを実施し線量の最適化を検討する)などがある。上記のような機能があることで、例えば患者から検査の線量について問い合わせがあった場合にRadimetricsの患者線量トラッキング機能を活用すると、患者と同年代の過去患者の検査情報を集め、推定被ばく線量を割り出し、それを患者やその家族へ提供することで安心して検査を受けてもらうことなども可能となる。

 Stellantは、ウィズコロナ時代にもしっかりと対応できるインジェクターといえるだろう。

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森岡雅幸先生
奈良県立医科大学
附属病院
中央放射線部 CT係長

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北口千寿子先生
奈良県立医科大学
附属病院
中央放射線部師長