「床が汚れない」「シリンジをワンタッチで取り付けられる」、さらに「安全性」も考慮した「Mark 7 Arterion」
国家公務員共済組合連合 立川病院
〒190-8531
東京都立川市錦町4-2-22
TEL:042-523-3131
病床数:450床 診療科目:循環器内科/血管外科/消化器内科/消化器外科/呼吸器内科/呼吸器外科/糖尿病・内分泌代謝内科/腎臓内科/泌尿器科/血液内科/神経内科/脳神経外科/精神神経科/整形外科/皮膚科/形成外科/膠原病・リウマチ内科/婦人科/産科/乳腺外科/小児科/眼科/耳鼻咽喉科/歯科口腔外科/救急科/リハビリテーション科/麻酔科/緩和ケア科/放射線診断科/放射線治療科/病理診断科。放射線科のスタッフは、放射線診断医4名、治療専門医1名、専任看護師5名、診療放射線技師23名。
新病院移転を機にハイブリッドシステムを導入
国家公務員共済組合連合立川病院は、1943年に東京第二陸軍共済病院として創設された歴史の古い病院である。全診療科を標榜することが大きな特徴で、東京都多摩地区の中核的な役割を担う。経営環境分析の一つ・SWOT分析によると、「すべての科を標榜し、すべての診療を万遍なく」というのが同院の強みだという。2017年7月の新病院移転オープンを機に、外来・入院・検査・手術などの病院の全機能を集約し、ITによる先進的な医療機器の導入を進めた。
中央放射線科では、CTと血管造影装置を組み合わせた最新鋭のIVR-CTも設置された。CT室と血管造影室を隔てるドアを完全にオープンすることにより、CTガントリは必要に応じて2つの部屋を行き来する。新棟では血管造影室は2つに増設された。1室は主に心臓カテーテル検査、もう1室では脳、腹部、四肢など心臓以外のアンギオが実施される。CTはdual energy CTなど最先端の機器に加え、画像再構成オプションの導入により超低被ばくCTを実施することが可能となっている。MRIは最先端3テスラ装置も新たに導入された。立川病院の得意分野の一つがIVRだ。年間200件の心臓カテーテル治療や、画像ガイド下ドレナージ手技などを実施している。
診療放射線技師の当直は基本的に1名で行う。当直業務は一般撮影、CT、MRIが中心であり、血管造影に関してはオンコール体制を取っている。2018年に技師長に就任した中澤敏彦先生は、中央放射線科の方針を新たに掲げ、「一人の診療放射線技師が一つの検査に極度に専門分化するのではなく、全員がすべての検査に幅広く対応できるオールマイティを目指そうと考えています。もちろん、それによってそれぞれの検査のクオリティを下げるわけにはいきません」と語った。
積算の造影剤量が表示されるMark 7 Arterion
心臓カテーテル検査の流れは、診療放射線技師、臨床工学技士、看護師などが準備に入り、血管造影装置や造影剤などの点検を行う。もちろんインジェクターのチェックも欠かせない。それぞれのスタッフが互いをフォローしながら、少しでも早く患者が検査室に入れるように準備を進める。
心臓カテーテル検査に際して診療放射線技師が最も気を遣うのは放射線被ばくの問題である。同科では、患者のどの部位にどの程度の線量が照射されているかがリアルタイムに色で示される被ばく線量管理ソフトウェアを活用している。こうしたソフトウェア使用の意義について、診療放射線技師の大野先生は次のように言う。
「治療を行う術者に注意を喚起する意味もありますし、ある一方向からの照射で被ばく線量が増えている場合など、被ばく線量が視覚的にわかるので、照射角度を変えてみようという医師の対応を促すことにもつながります。それによって患者さんの被ばくが減っていけばよいと考えています」。
髙木先生も同様に、「同じ角度で照射しているとその部分だけ累積線量が上がっていくので、私たち診療放射線技師の役割として、違う角度で撮ってみましょうと医師に提案することもあります」と言う。
「当科で決めてある閾値を超えた場合には主治医に連絡し、その後外来などで1年程度は追跡し、その患者さんに放射線障害が出ていないことを確認してもらっています」(大野先生)。
こうした試みが実を結び、放射線被ばくは大きく低減されてきているという。
中央放射線科では旧病院の頃からインジェクターにMark 5を使用していた。Mark 7 Arterion(以下、Mark 7)は新棟移動時に、心カテ装置とともに購入した。Mark 7の一つの特長として、積算の造影剤量が表示されるため被ばく低減に寄与する可能性がある。これについて大野先生は、「造影剤の積算が表示されるというのは重要な情報です。ただし、ハンドインジェクションの場合は注入量を別途記録しておかなければならないということは認識しておく必要があります」と指摘する。
求められるコードレスのインジェクター
Mark 7はニーズに応じてさまざまな設置仕様が用意されている。取り回しなどについてはどのように感じているのだろうか?大野先生は、「床に置くタイプの据え置き型だと、検査中にどうしてもヘッドケーブルが邪魔になるので、やはり天吊り型の方が便利ではないかと考えています」と言う。
ただ、天吊り型は、天井裏の空きスペースがどのくらいあるかなど検査室のレイアウトなどによって設置が可能な場合とそうでない場合がある。
「たとえば、カテーテル治療をしている場合、インジェクターを医師のそばに置いて使うことが多いのですが、医師はカテーテル先の画面に目を向けています。可搬型スタンド設置タイプだとカテーテル操作などに連動してインジェクターが大きく動いてしまい、ヘッドケーブルが抜けてしまう危険性もあります。これは、私たち診療放射線技師が最も気をつけておかなければならない点です」(髙木先生)。
「スタンド型でもケーブルレスになればそういった心配はなくなると思うのですが」と大野先生は期待を滲ませる。衛生面などから考えてもケーブルレスは理想だが、何らかの原因でバッテリーや操作系が止まってしまうリスクもあり、まだ100%の信頼性は置けない。CTであれば再撮影すればよいが、血管造影の場合はそうはいかない。その点が課題とされている。
チューブを取り付けたままシリンジを廃棄可能
血管造影検査の後片付けにおいて、利便性を発揮しているのがMark 7のフロントロードシステムやオートリトラクト機能だという。
「検査終了後はチューブを取り付けたまま廃棄作業ができる。チューブを外す必要がないので大変便利です。液だれがないので、他のインジェクターとは汚れ方が全く違いますし、血液感染のリスクもないので安心感があります」(大野先生)。
従来、検査室の床への液だれを掃除する作業は診療放射線技師の負担だった。毎日、業務終了後に掃除をするが、検査から時間が経っており造影剤や血液が固まっているので汚れが落ちにくいのだという。「その負担がなくなるのは非常に助かります」と中澤先生。プレッシャージャケットの前面側からシリンジをワンタッチで取り付けられる機能も重宝されている。ただ、操作に慣れるにはある程度のコツも必要だという。
図1 フロントロードシステム利用時のコツ(髙木先生考案)
a.シリンジの滅菌袋を開き、不潔にならないように注意しながらオレンジ色のキャップごとつかみ、反時計回りに回し、延長チューブとのコネクタを緩める。
b.シリンジのコネクタ、オレンジキャップが干渉しないところまで緩めたので、プレンジャージャケットを装着する。
c.プレンジャージャケットと干渉する場合は、オレンジキャップをつかみ、コネクタをもう少し緩める。緩めすぎると、シリンジから脱落するので注意。
d.プレンジャージャケットと干渉せずに、スムーズに装着できる。
タッチスクリーンでエア抜きが指示される
Mark 7のディスプレイは高精細カラータッチスクリーンを採用しており、簡単に注入条件の設定や呼び出しができる。検査中に確認が必要な注入条件の設定値や造影剤の残量、注入結果などを1つの画面で確認することが可能だ。さらに、オプションでインジェクーターヘッド1台に対しディスプレイをもう1台追加して、検査室内と操作室に設置できるデュアルディスプレイも準備されている。
永井先生は「Mark 7のタッチスクリーンは直感的に操作でき、CTで使うパネルとも使い勝手に違いがなく、同じように使いやすいと感じています。とくに、エア抜きの確認を促してくれるのは操作に慣れていない身にはありがたいですし、画面上でヘッド部の位置の指示も出るので安全機構としても優れていると思います。また、シングルなのでとても軽く取り回しがいいのも助かっています。」と指摘する。
造影検査においてエア抜きはきわめて重要であり、Mark 7では正しい操作を行わないと必要に応じてその指示がディスプレイに出るよう設定されている。
「たとえば、造影剤をシリンジに充填するときはインジェクターヘッドを上向きにした状態で引き、エアを抜いてチューブを接続する手順を踏みます。ところが、たとえばヘッドを下に向けたままで造影剤を吸い上げて、そのまま下を向けて接続しようとすると『エア抜きをしていますか?』という指示が出ます。そして、正しい手順を踏んでいないと造影剤を注入できないようになっています。このように細かな指示によって正しい操作方法を自分の中で再確認できるのがありがたいと思います」(大野先生)。
Mark 7はグローバル製品ということもあり、安全性の担保には細心の注意を払っている。中澤先生は「いまは技術が確立して機器も高度化しており、最新鋭のインジェクターなどを使いこなすのはなかなか大変ですが、こうしたサポート機能を活用することで早く機器に慣れていけるのではないかと考えています」と述べる。
図2 造影剤の残量が一目でわかるのが大きな利点だ。
中澤敏彦先生
立川病院中央放射線科
技師長
大野博史先生
立川病院
診療放射線技師
髙木 亮先生
立川病院
診療放射線技師
永井野々花先生
立川病院
診療放射線技師