造影検査が少ない施設に最適高いコストパフォーマンスを発揮

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成田記念陽子線センター

〒441-8021
愛知県豊橋市白河町78番地

TEL:0532-33-0033

診療科:陽子線科
陽子線治療装置1台 CT1台 常勤医師2名(1名は院長)、診療放射線技師5名、物理士1名、看護師2名

最新鋭の陽子線治療装置IBA Proteus ONEを導入
広域の患者を受け入れて地域に貢献

 成田記念陽子線センターは、民間医療機関の運営によるものとしては、東海地方初の陽子線治療施設として2018年4月に開院、同年9月に治療を開始した。1951年の開院以来、地域医療に貢献してきた成田記念病院が2012年に新築移転を果たし、その跡地を利用して東三河の玄関口でもある豊橋駅と成田記念病院(急性期)の中間に位置し共に徒歩3分の好立地に開設した。

 陽子線治療装置としては、世界の粒子線治療装置の導入実績が高いベルギーIBA社のProteus ONEを導入した。山本先生は「成田 真理事長は10年前から最先端の陽子線治療装置を導入し現代の超高齢化社会において低浸潤のがん治療で地域医療に貢献したい」という強い想いがありました。

 「我々プロジェクトチームは設置面積や運営コストなどを考慮した上で情報収集し選定を進め、名古屋市立大学 放射線医学教室のご協力を得て、テニスコート1面程度の敷地に設置可能とされるコンパクトで省電力の最新鋭の陽子線治療装置『IBA社製Proteus ONE』の導入を決定致しました。同装置では世界で5番目に導入し、国内初の治療を開始させて頂きました」と語った。

 陽子線センターは陽子線科の単科のみ。医療スタッフの陣容は常勤で治療医が2名、診療放射線技師が5名、医学物理士が1名、看護師2名で治療チームを構成している。現在は、主に前立腺がんの治療を実施している。治療は1日(8時間)で20人前後の治療を行い、今後は適応疾患を拡大し1日の治療人数を増やす計画だという。

 陽子線装置以外のモダリティとしては、シーメンス社製1管球デュアルエナジー64列 SOMATOM Definition AS Open-RT Pro editionを2018年3月に導入している。このCTと同時に導入したインジェクターが「Salientシングルヘッドシステム」だ。

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図1 CT室で使用時のポジションに設置したSalientシングルヘッドシステム
 

CT検査の作業動線の安全確保に有効なモバイル性が選定の評価要因に

 山本先生がSalient導入に踏み切った大きな理由の1つが経済性だった。「Salientについては、バイエルの担当MRの情報提供で初めて知りました。当センターでは造影検査の件数は限られていますが、インジェクターは絶対に必要です。治療専用CTとしては、稼働率と費用対効果が低いので、まずは低価格でランニングコストが低い製品を提案してもらいました」(山本先生)。

 現在のCT検査運用状況は診断目的の検査を含め、1日平均3件程度。造影検査は月に1件前後だという。選定に至ったSalientの重要な利点として高石先生はコードレスという点を挙げる。「陽子線治療の治療計画のためのCT検査の際には、検査室内で固定具の運搬や寝台へ着脱などを行う必要があります。その際、インジェクターの配線があると、足を引っかけるなど、事故のリスクが高くなってしまいます」と高石先生は指摘する。また、CT室は固定具をはじめ、治療計画に必要な機材が多い。Salientのようにモバイル機であれば、空きスペースまで移動すればよく、収納場所の制約が少ないという利点もある(図2)。

 山本先生は、「陽子線センターではCTは1台のみだが成田記念病院では2台のCTが稼働しています。万が一これらのCT室に備え付けのインジェクターが故障した場合、Salientはバックアップ機として活用できます」という。また、災害や停電時などにもバッテリーで動くモバイル機として十分に期待ができる。更に近年では、PET-CTやSPECT-CTなどCT機能を装備する放射線機器に造影が必要な時にSalientは移動が容易なためモバイルインジェクターとしても活用できると考える。

 操作習得の容易さもSalientの利点の1つだ。「造影時には、まず患者さんに寝てもらい、造影検査と同じポジションで単純CTを撮影します。単純CT撮影が終わった時点で看護師に穿刺を依頼、逆流があることなどを確認した後、撮影開始と同時に造影剤の注入を開始します。導入当初のトレーニングには、Salientの機器搭載動画が役に立ちました。操作体系がシンプルですので、症例数が増えていけば、よりスムーズに実施できるようになると思います」(高石先生)。

 高石先生は成田記念病院でハイエンドのデュアルヘッドインジェクターを使用し、多数の造影検査を実施してきた。造影検査のエキスパートとしてSalientの使い勝手をどう評価しているのかを聞くと「正直なところ当初は、機能を含め、様々な検査に対応できるのか不安はありました。しかし、放射線治療専門施設である当センターでは、あまり複雑な造影CT検査は実施する事がありませんので、Salientの機能は十分だと実感しております」と語る。

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図2 様々な器材を設置しているCT室でも収納場所から稼働場所へ1人で容易に運べる

造影検査が比較的少ない施設に最適

 導入以来の使用経験をもとに、Salientシングルヘッドインジェクター導入が適している施設要件について山本先生に訪ねた。

 「CTを保有している病院やクリニックで造影CT検査が少ない施設ではSalientシングルヘッドインジェクターのコストパフォーマンスは大変優れていると考えます。シンプルだが操作性は優れているので、CTを担当した事がない診療放射線技師でも簡単に操作が可能となる。またコードレスで移動が容易でありインジェクター本体で注入条件を設定(操作卓不要)できるためバックアップ機が必要な施設には適している」と語った。

 近年、地震などに伴い、都市全域で数日にわたる長時間停電が発生、医療施設を含めたインフラの麻痺が現実となった。中規模以上の病院では、自家発電施設を備えているところが多いものの、主要な設備以外に電力を回す余裕がない場合が少なくない。バッテリー運用が可能なSalientはこうした場合にも活用できる可能性がありそうだ。

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山本和也先生
成田記念病院
放射線技師統括部長

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高石義幸先生
成田記念陽子線センター
陽子線技術室 主任