Mark7 Arterion
フロントロードによる生産性と安全性向上に高評価
地方独立行政法人岐阜県立多治見病院
〒507-8522
岐阜県多治見市前畑町5丁目161番地
病床数:575床 診療科目:内科/腎臓内科/血液内科/内分泌内科/リウマチ科/精神科/神経内科/呼吸器内科/消化器内科/循環器内科/小児科/新生児内科/外科/消化器外科/乳腺・内分泌外科/整形外科/形成外科/脳神経外科/呼吸器外科/心臓外科/血管外科/皮膚科/泌尿器科/産婦人科/眼科/耳鼻いんこう科/リハビリテーション科/放射線治療科/放射線診断科/緩和ケア内科/歯科口腔外科/麻酔科/病理診断科/臨床検査科/救急科
放射線治療科医師3名、放射線診断科医師4名、診療放射線技師41名、看護師25名 CT2台、MRI2台
循環器分野において地域随一を誇る医療機関
岐阜県立多治見病院は、救命救急センターも備えた岐阜県東濃圏域の基幹病院として、地域医療を担っている。循環器の治療件数では地域随一であるほか、2台の最新治療システムを備えた高精度放射線治療センターを有し、新患だけで年間300人から400人を受け入れている。2018年度における循環器系のアンギオ検査施行数は、CAGが1,300件、PCIが370件、下肢のEVTが120件、アブレーションが190件となっている。アンギオ室は3室あり、いずれもシーメンスの装置が入っているが、造影インジェクターは、1室ごとに異なったメーカー品を使用している。モダリティとしてはこのほか、CTが2台、MRIが1.5テスラと3テスラの計2台があり、循環器分野で見ても、東濃圏域トップの医療機関と言える。同院の中央放射線部は、放射線診断科と放射線治療科に分かれていて、医師は放射線治療科に常勤3名、非常勤1名が、診断科には常勤3名、非常勤1名、看護師は両科合わせて常勤・非常勤含めて25名が所属している。また診療放射線技師は、常勤・非常勤含め、両科合わせて41名が所属、このうち13名がアンギオを担当している。当直時の診療放射線技師の体制は、通常、夜間が1名、土・日曜日は午前中が2名、午後12〜3時は1名、3〜5時は2名となる。ただし、「アンギオ待機者」をローテーションで1名割り当てており、当直時に血管造影の必要がある場合に呼出す体制をとっているという。
Mark7 Arterion導入の決め手は天吊り
同院では、2018年度に3台目のアンギオ用インジェクターとして、バイエル薬品の「Mark7 Arterion Injection System」を導入した。導入の決め手の1つとなったのが、天吊りの設定が用意されていたことだという。技師長の北島秀登先生は、「プランジャーなど、部品在庫の管理の点では、導入済みのインジェクターと同じ製品に統一することが望ましかったのですが、当院のアンギオ室は狭く、床置き式の導入は困難でした。現時点で天吊りのインジェクターを販売しているのはバイエル薬品しかなく、導入の決め手になりました」という。最近の心臓カテーテル検査システムは、モニターの大型化、複数化が進んでいるため、診断・処置室の面積を十分に確保できない施設では、様々な装置に場所を取られ、作業スペースが手狭になってしまう。診療放射線技師の桐山知巳先生は、「PCIやアブレーションを行う際は"機械だらけ"です。設置したままにしておくことが難しいため、処置に応じて装置を出し入れしているのが現状です」という。 血管造影では、ベッドサイドに取り付けるタイプ(ラックマウント型)や、キャスター付きのスタンドにモニターを一体化したペデスタルタイプのインジェクターを用いると、バイプレーンの管球を回転する際にじゃまになることがある。しかも処置時には、医師2名と看護師、診療放射線技師、臨床工学技士など多数のスタッフが入るため、作業空間への干渉が少ない天吊りタイプを選ぶ施設もあるという。北島先生は、「天吊りにすると、適当な空きスペースに移動できるので、インジェクター自体のセットアップにも好都合です」という。天吊りのもう1つの利点はケーブルの取り回しだ。他のタイプではケーブル類やコネクターがたれて床面に接触し、汚れてしまうことがあるが天吊りではそうした心配はない。半面、取り回しが自由なだけに、清潔領域の上を通過しないようにする注意も必要だ。同院では、頭頸部を含むさまざまな領域の血管造影検査を実施している。なかでも、「下肢のEVTとアブレーションが徐々に増えており、EVTは2~3年で倍増しています」(鈴木康介先生)という。同院は、増加し続ける検査数への対応として、近く、ハイブリッド手術室の新設を含めて手術室の拡張が予定されている。
図1天吊りタイプのMark7 Arterion
図2使用頻度の高い順にプロトコルの並びかえが出来る
血管造影システムの設置タイプをどう選ぶ
インジェクターなど血管造影関連の装置は、複数の設置タイプを用意している製品が多い。どのタイプを選ぶかは、手術室の広さや医師の好み、人員配置によって異なり、必ずしも天吊りタイプが万能というわけではない。例えば、ハイブリッド手術室では、モニターも付属してその場で制御できる方がよいという。近松 薫先生は、「TAVIなどでは、他の機器との同期をかけず、ハンドスイッチのみで操作されるので接続は不要です。そのような場合は、他の機材のじゃまにならない場所に置くことができ、かつ診療放射線技師が近くで操作できるペデステルタイプが適しています。インジェクターを全く使わないハイブリッド手術もあるので、そのような場合は室外に出しておけますし」と述べる。一方、注入量の設定を含め、すべて自分で設定したいという医師がいる場合は、ラックマウント型が適している場合もあるという。
インジェクターの準備と片付け
血管造影検査では、インジェクターにシリンジやチューブを装着するセットアップと、使用済みシリンジの廃棄などの片付けを行う必要がある。Mark7 Arterionは、インジェクターの前方からシリンジをセットするフロントロード方式を採用している。北島先生は、「シリンジ装着時に留め金をはずして入れるという動作がなく、シリンジの突起をマークに合わせて前からはめ、ドロップフロントと呼ばれる留め金をかければよいので使いやすいですね」という。「検査終了後の片付けも、シリンジを90°回せばすっと抜ける。準備、片付けとも明らかに時間を短縮できますので、検査数が多い時には重宝します」と高く評価する。また、「シリンジとチューブを接続する際、清潔を保ちながら片手で操作でき、検査終了後はチューブを付けたまま廃棄できるので、より感染リスクが低い構造だと思います」(北島先生)という。Mark7 Arterionに特徴的な機能としてはこの他、精細度の高いカラータッチスクリーンがある。これについては、「違和感がなく、直感的な操作ができる」(近松先生)など、親しみやすい印象が強いようだ。また、セットしたプロトコルの並び替えができるのも特徴の1つだ。近松先生は、「プロトコルは、使用頻度が高い順に先頭から並ぶので、そのページだけで多くの操作を実施できるようになります」という。一方、鈴木先生は「タッチスクリーンの操作性は良好ですが、造影剤が付いた手などで操作すると、表面が汚れて誤動作のもとになります。このため、汚れたら剥がせばよいディスポーザブルのスクリーンカバーが低価格で提供されると便利だと思います」と指摘する。また北島先生は「適切なメッセージが表示されるのは便利だと思います」という。例えば停止したとき、なぜ停止しているかを示すメッセージが表示されるので、最初からやり直すことなく、最適な手順を実行できるので、作業効率が低下しないという利点がある。なお、現状でMark7 Arterionで対応できないのがデュアルインジェクションだ。現在では、表示ソフトなどの改良により、脳外科を含むほとんどの領域では混注の必要性は少なくなっているが、消化器系では需要があるという。
北島秀登先生
中央放射線部
技師長
桐山知巳先生
中央放射線部
診療放射線技師
近松薫先生
中央放射線部
診療放射線技師
鈴木康介先生
中央放射線部
診療放射線技師