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造影剤について何か質問は?
といっても...

質問16

造影剤の投与はなぜ悪心や嘔吐を引き起こすのか?

中枢神経系の全域にわたって血液脳関門(BBB)があるわけではありません。BBBのない場所の一つは最後野で、この中に悪心や嘔吐の引き金となる場所があり、ここは造影剤によって直接刺激されることがあります。

これらの中枢神経系の影響の他に、悪心や嘔吐は腸壁からの伝達物質の遊離(たとえば肥満細胞から)によっても引き起こされるかもしれません。

質問17

造影剤への遅延反応はどうでしょうか?

造影剤投与の1時間から1週間後まで(大抵の場合4~6時間後)に生じる遅延反応が繰り返し報告されています。これらは即時反応と質的に異なることが多く、2~3日以上続きます。

症状は、発疹、そう痒症、熱、冷え、インフルエンザ様感覚、悪心、関節痛、または疲労です。しかしこれらの症状の多くは特異的ではなく、造影剤投与と関連がないと考えられますが、発疹は確実に造影剤に起因しています。斑状丘疹状皮疹または発疹性膿疱症、じんま疹または血管性浮腫として発現し、通常痒みを伴います。

遅延性副作用の頻度には、0.5~15%超とばらつきがあります。通常後ろ向き研究における発現率は、前向き研究のそれより低いようです。

これらの反応の原因は分かっていませんが、T細胞が媒介しているようです。モノマー型でもダイマー型でも見られますが、ダイマー型で多く確認されています。必要な場合、治療は対症療法となります。

興味深いことに、これらの発生率は、インターロイキン2免疫療法後の患者でかなり高く、根底にある免疫学的メカニズムが示唆されます。

幸いにも、これらの遅延性造影剤反応は危険なものではありません。

質問18

造影剤が血管外に漏出した場合はどうするか?

血管外漏出はまれな出来事ではありません。

高浸透圧造影剤では血管外漏出があると、患者はたいてい注入/漏出部位の痛みを訴えるので、これが発見の契機になります。非イオン性造影剤では状況が少し異なり、患者自身も気がつかないことが多いので、かなり大量の造影剤が漏出することがあります。これは特にCT検査用の自動注入器を使った時に起こりえます。

造影剤が血管外に漏れると局所の炎症反応を起こします。この炎症がピークに達するのは発症から早くても24~48時間後です。最悪の場合は造影剤の漏出から壊死を起こす可能性もあります(イオン性造影剤について述べていますが、非イオン性造影剤では生じたことはありません)。このような不幸な結果が生じるのは、動脈の流入や静脈の流出に障害が生じたときだけと考えられます。

非イオン性の低浸透圧造影剤は刺激性がとても弱いので、忍容性はかなり高く、大量に漏出した場合でも、大きな問題は起こらないでしょう。我々の知るところでは、非イオン性造影剤が非限定空間に漏出しても有意な合併症は起きません。ただし、筋膜によって区画に分けられたとても狭い範囲で、相対的に大量の漏出が起きた場合には、区画内の圧が上昇して、灌流を阻害することがあります(コンパートメント症候群)。

血管外漏出が起こったらどのような処置が必要でしょうか? いくつかの対処法が報告されています。現時点で推奨できる対処法は次のようなものです。

  • 四肢を高くする。
  • 温湿布を使用する。

訳者注:冷罨法を推奨する報告もあります。

  • 再吸収を良くし、速めるための、局所安静。

次の方法は効果がないか,効果が疑わしいものです。

  • 例えばステロイドなどの局所注入。これは信憑性のある結果が示されていません。水や生理食塩水を注入して造影剤を希釈しようとすることも同様です。

一般に患者をよく観察することは重要です。症状(腫脹、紅斑、疼痛)が弱まらないか、むしろ強くなっている場合は、皮膚科医に相談することです。場合によっては早めの減張切開が推奨されることもあります。非イオン性造影剤では、100~150mLの血管外漏出なら合併症もなく消失するとの報告もあり、このような事態に至ることは通常ありません。しかし、非イオン性造影剤でも血管外漏出によるコンパートメント症候群の報告があります(おそらく薬物の種類そのものではなく、漏出量が原因です)。

何といっても予防することが最善です。安全な経路で確実な血管確保を行い、手や足の甲、足首は努めて避けてください。合成樹脂(プラスチック)製の留置針は弾性があるので、金属針よりも安全です。

循環障害のある患者では特に慎重に行う必要があります。

質問19

造影剤は血液凝固にどう影響するか?

造影剤が血液凝固に影響を及ぼすことは以前からわかっていました。凝固系が受ける影響の程度はイオン性造影剤と非イオン性造影剤とでは異なります。

  • 非イオン性造影剤はイオン性造影剤ほどには凝固を遅延させない(単に影響が少ないため)。
  • 非イオン性造影剤はイオン性造影剤よりもコラーゲン誘発性の血小板凝集に対する影響が少ない。
  • 非イオン性造影剤投与後の赤血球凝集は、イオン性造影剤投与後よりも大きい(凝固ではなく凝集であり、in vitroの実験ではこの凝集は血流中で溶解します)。

非イオン性造影剤はイオン性造影剤ほどには血液凝固に影響しないという事実から、非イオン性造影剤には凝固促進作用があると誤って解釈されてきました。

血液凝固に対する影響がどのようなものであろうと、血管造影では血栓塞栓症を防ぐために正しい対処法が求められます。

  • 注射器やカテーテル内で、滞留している血液と造影剤の長時間の接触を防ぐこと。
  • カテーテルは生理食塩液か、状況に応じてへパリン添加生理食塩液で頻回にフラッシュすること。
質問20

形質細胞腫/多発性骨髄腫の患者に造影剤を投与してよいか?

形質細胞腫とワルデンシュトレーム・マクログロブリン血症は、血中に典型的な異常蛋白が出現する単クローン性の免疫グロブリン血症です。形質細胞腫では腎の合併症から、患者のほぼ半数が腎不全となります。かつては形質細胞腫などの異常蛋白を伴う疾患は、造影剤の絶対的禁忌とされていました。蛋白質との結合が少ない非イオン性造影剤が導入されてから、この考え方は少し修正されました。

現在でもこれらの疾患の患者はリスクがあるとみなすべきですが、絶対的禁忌というわけではありません。腎不全も蛋白尿もない患者なら造影剤投与はおそらく安全です。ただし、以下の注意事項を厳守する必要があります。

  • 検査を行う十分な理由がなければならない。
  • 患者には検査前、検査中、検査後に水分補給を十分に行い、電解質平衡の状態を維持すること。
  • 圧迫器具(いくぶんか「野蛮な」手法:尿路造影をする患者の尿管を含む腎盂腎杯システムの描写を改善すること)は使用しないこと。
  • 血清クレアチニン値を造影剤投与後、数日間は測定すること。
  • 造影剤の用量をできるだけ少なくすること。
  • 血清クレアチニン値>3mg/dL(>256μmol/L)の患者に造影剤を投与するのは特別な場合に限ること(閾値として>2mg%を提唱する者もいる)。
  • 血清クレアチニン値>4.5mg/dL(>398μmol/L)の患者に造影剤投与は禁忌。

これらの指針が適用されるのは尿路血管造影剤だけです。胆嚢・胆管造影剤は蛋白結合能が高いので、より問題になります。このような造影剤はワルデンシュトレーム・マクログロブリン血症などのIgM免疫グロブリン血症の患者には禁忌です。

訳者注:

  • 「多発性骨髄腫の患者」、「マクログロブリン血症の患者」は原則禁忌に該当します。
  • クレアチニン値についての明確な基準はありませんが、1.5~2.0mg/dLを超える場合は基本的に造影剤の使用を回避します。
質問21

ヨードアレルギーでは何に気を付ければよいか?過去にガドリウム系MR造影剤に対して反応した場合どうしたらよいでしょうか?

第一にヨードへのアレルギーは存在しません。我々はヨードを必要としているので、ヨードへのアレルギーは致命的でしょう。遊離ヨウ化物はアナフィラキシー反応とは関係ありません。

消毒等のためにヨード溶液を局所的に投与され、皮膚障害が生じた患者は「ヨードアレルギー」があると言われますが、これはまちがった呼び名です。これらの患者に造影剤に起因する問題が起こる頻度は、他のアレルギー患者と同程度と思われます。ですから特別なことではないのです。安全策をとるとすれば、ヨードに対するものも含めて(そのようなアレルギーは存在しないにせよ)、アレルギー歴は基本的に一般的な危険因子とみなすべきです。

ガドリウム系MR造影剤に対して反応する患者の場合どうしたらよいでしょうか?これもまた他のアレルギーの病歴と同様に考慮すればよいだけで、それ以上のことはありません。これらの全く異なる造影剤間では交差反応は起こりません。

訳者注:「ヨードアレルギーの患者」はヨード造影剤の禁忌に該当するため、基本的に造影剤の使用を回避します。

質問22

造影剤中のヨード濃度はどれくらい必要か?

明確な造影効果を得るのに必要な最小ヨード濃度は多くの因子に左右されるので、この質問に対して普遍的な答えは存在しません。検査の種類、患者の体格、その他の因子を考慮する必要があります。例えば、血管造影で径の小さい血管を描出する時は、太い血管の場合よりも造影剤の濃度をより高くする必要があります。X線の減衰は透過されてX線を減弱させる物質の厚さに依存するからです。

さらにヨード濃度は、使用する撮像法の濃度分解能にも依存します。検知するために必要な造影剤の最低濃度の例をいくつか挙げましょう。

  • X線増感紙を用いたフィルム撮影や、透視の場合は、通常180~280mgI/mL以上の濃度が必要です。
  • DSA検査には少なくとも20~60mgI/mLの濃度が必要で、患者の体格や管電圧などの因子に依存します。管電圧を低くするとコントラスト分解能は高くなります。DSAに新しいフラットパネルディテクターにDSAが装備されれば、必要な濃度はさらに下がります。
  • CTスキャンではヨード濃度が3~5mgI/mL(または1mgI/mLでも)で検出できます。
質問23

造影剤に対するアナフィラキシー/アナフィラキシー反応は麻酔で防げるか?

検査を麻酔下で行えばアナフィラキシー/アナフィラキシー反応は起こらないという思い込みを持っている人がいますが、麻酔下で非イオン性造影剤を使用した場合でも、重篤な副作用が報告されています。

実際、麻酔下ではある種の偽アレルギー反応またはアナフィラキシー反応の発現率が低いのかどうかさえ、わかっていません。

麻酔関連の死亡(約1:50000)や合併症もあるので、造影剤アレルギー歴があるというだけでは、全身麻酔下での検査を正当化する根拠にはならないでしょう。

質問24

造影剤として使用されるヨード化ハーブ油について聞いたことはありますか?

ヨード化ハーブ油は造影剤として使用できます。そしてこのような物質は完全菜食主義者用にデザインされたわけではありません。時間をかけてこのような造影剤が数種類作成されましたが、その中で唯一リピオドールだけが現在まで100年以上使用されています。

リピオドールは、造影剤としてヨードを含有しており、それだけが、唯一、この本が焦点を充てている尿路造影/血管造影との共通点です。尿路造影/血管造影剤とは対照的に、リピオドールはトリヨードベンゼン環を基本構造に持たず、水溶性ではありません!リピオドールは、他の植物油同様、数種の脂肪酸の混合を含むケシ油を基本としています。これらの(エステル化された)脂肪酸のほとんどが不飽和で―すなわち、二重結合を持ち、他の化学物質と結合できます。このように、相当量のヨードが結合できます。この造影剤混合物中のヨード含有量は約475 mg/mLであり、300~370 mgヨード/mLを持つ通常の尿路造影/血管造影剤よりX線減弱が強いことを説明ができます。

リンパ管に「通常の水溶性」造影剤を注射すると、急速に拡散します。しかし油性のリピオドールを注射するとリンパ管内にとどまりリンパとともに流れるため、リンパ節を含むリンパシステム描出され、一部は一時的に蓄積されて、投与後数ヶ月間も検出されることがあります。リンパ節で蓄積されなかった造影剤はリンパ液とともに運ばれ、主に胸管を通り最終的に静脈系に到達します。肺循環において小液滴として捕られて、わずかな炎症反応を生じさせた後、時間の経過とともに分解されます。

より大量に注入された場合は、肺循環の容量を超え―もしくは右左短絡の場合は―液滴は動脈系に達して、その結果、塞栓および潅流障害が生じる可能性があります。塞栓および潅流障害はすべての領域で現れる可能性があり、脳で発現した場合、精神病やその他の問題が生じることになります。
リピオドールは、例えば直接リンパ管造影法および動脈化学塞栓療法という稀なケースにおいて、通常様々な化学療法薬の担体として使用されています。
体内に長期間滞在することから、甲状腺検査や甲状腺機能に数ヶ月にわたり影響を与える可能性があります。

質問25

造影剤は造影剤起因性腎障害を引き起こす可能性があるため、投与前には臨床検査をしなければなりませんか?

腎機能障害のある患者を識別するためには、造影検査前に全員に腎機能テストを受けてもらうのが最も信頼できる方法でしょうが、高額ですし、ほとんどの人の腎機能は正常でリスクもないです。ではどうしたらよいでしょうか?その答えは患者や職場にもよります。推奨事項をいくつか載せておきます。

大ざっぱに言うと、動脈内投与を受ける患者はその前に全員腎機能の検査を受けるべきです。

(造影剤の動脈内投与によって腎症のリスクが上がるわけではありませんが、これらの患者は腎障害を発現するリスクはより高いようです(「造影剤誘発性急性腎障害をどうやって防ぐか?」参照))。

静脈内投与では、チェックはそれほど必要ではありません。適切な質問をすることで検査を受けるべき患者を識別することができます。

-60歳以上ですか?
-糖尿病ですか?
-高血圧症のための薬を飲んでいますか?
-今まで/現在腎臓に問題がありますか(感染、片腎、手術、移植等)。また、腎不全の家族歴はありますか?
-骨髄腫がありますか(異常蛋白血症)?
-定期的に腎毒性薬物を服用していますか(非ステロイド性抗炎症薬、化学療法薬等)?
-最終ステージの肝疾患がありますか?
-重症の鬱血性心不全を発症したことはありますか?

これらの質問のうち1つでも「はい」があれば、腎機能を確認してください!

すべての質問が「いいえ」であれば、おそらく安全に造影剤静脈内投与できるでしょう。

質問26

非イオン性かイオン性、どちらの造影剤を使用するべきでしょうか?

非イオン性造影剤が登場したとき、イオン性造影剤よりかなり高価でした。しかし、非イオン性造影剤が大変忍容性が高く副作用も少ないことが判明したため、需要が増え、需要が増えたことで生産が増えて、価格が下がりました。

今では非イオン性造影剤はほぼ世界中で、「普通の」造影剤となりました。多くの国々で、そして多くの適応症に関して、イオン性造影剤は時代遅れとなりました。

質問27

モノマー型かダイマー型、どちらの非イオン性造影剤を使用するべきでしょうか?

非イオン性モノマー型造影剤は一般的に非常に高い安全性プロファイルを持っています。過去には、さらに副作用を減らすべくダイマー型造影剤の開発が試みられました。

しかし実際にはダイマー型造影剤の血管内投与では副作用はほとんど改善されないか、あまり意味が無いか、または期待された腎臓耐性の改善のような臨床状況での改善もみられませんでした(「造影剤誘発性急性腎障害をどうやって防ぐか?」も参照)。さらに、ダイマー型はモノマー型よりも遅延性副作用が3~4倍多いことがわかりました。これらすべてと高価な値段を合わせて考えると、ダイマー型の使用が限られている理由がわかります。

間違いのないために:血管内投与以外に、過去に等浸透圧物質に関する恩恵が認められました。例えば、高い親水性と神経耐性から、イオトロランは脊髄造影と子宮卵管造影で恩恵があることを示しました。

質問28

どの非イオン性造影剤が最も良いのでしょうか?

この質問に対して回答するのは実際のところ不可能です。すべての非イオン性モノマー型造影剤は素晴らしい安全性プロファイルを持っています。それぞれ異なる化学物質であり、安全性プロファイルも少しずつ異なります。例えば、頭痛薬もそれぞれ違うように、どの物質も他のものとは違うのです。患者がある物質に対して副作用を示したとしても、別の造影剤を使った検査では全く副作用が現れないこともあります。

さらに、動脈内投与と静脈内投与でも副作用プロファイルに違いがあることもあります。動脈内/心臓への使用が好ましい物質を、静脈内に使用するのは最善ではない可能性があります(静脈内投与はCT検査があることから放射線医学分野で最もよく行われています)。

質問29

改めて、十分量は?

これでもう十分です!少なくとも私はそう思っています。

もし皆さんが造影剤の物理化学的なデータを確認したいなら、巻末にいくつかの表を載せてあります。そしてインターネットにはもっと多くのデータがありますので、参照してください。

楽しんでこのテキストを読んでくださったこと、そしてこれらの造影剤に関して知識を得たことを願っています―それが「わかるか、わからないか」の違いを生むからです。

それから、皆さんが造影剤というテーマにもっと本格的に取り組もうと思ったなら、膨大な論文と書物が皆さんを待っているでしょう。