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その他の重要な副作用について、あと少し―用量が関係ない場合

心臓に対する作用」で概略されたように、造影剤の有害作用はさまざまな臓器に及びます。これらすべてを単一のメカニズムで説明することはできませんが、興味深い側面と仮説がいくつかあります。

既に説明したように、多くの反応は電荷、浸透圧、化学毒性または粘稠度に関連しています。これらの副作用は通常用量や濃度に依存します。往々にして物理化学毒性、非アナフィラキシー様反応、非特異体質反応または「生理学的な」副作用とみなされます(個人的には、後半の「非特異体質性または生理学的な副作用」は、普段から観察されているかのようですので、少し混乱を招くように思います)。これらの臨床スペクトルは広く、紅潮感、温かみと悪寒、または投与中の味覚異常、悪心、嘔吐、めまい/頭痛、血管迷走神経反応、高血圧または痙攣などがあります。

上記のような用量依存的な反応の他に、用量に依存しない有害事象もあります。その症状はアレルギー反応やアナフィラキシーに似た症状を呈することから、アレルギー類似、アレルギー様、偽アレルギー、特異体質、アナフィラキシー、アナフィラキシー類似反応などと呼ばれています。ですから、アレルギー反応に似ていますが、一方で、アレルギー反応とは違うのです。

誰かが「造影剤アレルギー」に苦しんでいるとき、なぜそれをアレルギー反応と呼ばないのか?患者や同僚からは誰かが造影アレルギーで苦しんでいるとよく聞きます。

アレルギー反応と呼ばない十分な理由があります。ある患者が造影剤投与を受けて、一回重篤な反応を示したとしても、その次の投与で何も問題がないことがあります。実際、繰り返し反応が出るリスクは20~30%くらいです。本当のアレルギーの場合だとアレルゲンに曝露されるたびに反応が現れます。

さらに造影剤分子はそれ自体が抗原として作用するには小さすぎます。また、造影剤は低反応性あるいは非反応性の化合物で、蛋白質との共有結合を起こしません。だから、この形式で分子量を大きくすることはできません。ハプテンとして作用する、つまり大きい担体分子と結合して免疫反応を起こす小さな物質とは違います。要するに、造影剤分子は自身では抗体を誘導できないのです。このことは、造影剤に対する抗体がきわめてまれな事例と実験段階でしか証明されていないという事実からも支持されます。

アレルギー類似反応

これら偽アレルギー反応の症状と徴候とはどのようなものでしょうか?臨床症状は、鼻水から腹部痙攣まで広範囲にわたります。これらの多様な症状を理解するためには、その原因を見ていかなくてはなりません。

基本的に化学伝達物質、特にヒスタミン(他にもあります)の放出によって症状が起きます。これらは肥満細胞や、肥満細胞よりは少ないですが、好塩基球から放出されます。肥満細胞は生体防御機構に属し、その目的は身体への侵入者と戦うことです。目的達成のため戦略的に配置されていて、特に外部の表面臓器だけでなく内部の表面臓器(例:皮膚、気道、消化管、末梢血管系および心臓など)、特に太い冠動脈や心臓内の小血管の周辺、冠動脈プラークの部位、一部の神経の周辺で認められます。

これらの肥満細胞が活性化すると、様々な伝達物質を放出しますが、ヒスタミンは大変重要な伝達物質の1つです。これらの伝達物質に局所的に影響を及ぼします。例えば、ヒスタミンには以下の作用があります。

アレルギー類似反応
  • (皮膚の小血管のような)小血管の拡張
  • より太い血管の収縮(より太いというのは―大雑把にいうと―直径100μm以上の血管)
  • 血管透過性の上昇(局所の液体貯留)
  • 平滑筋収縮および痙縮
  • 感覚神経末端の刺激

興味深いことには、より太い血管、すなわち冠動脈の収縮は、脱顆粒の過程においてプラークの破裂を引き起こす可能性があります!

これらすべてがその結果として生じる徴候と症状を説明するのかもしれません。

  • 皮膚では、そう痒症、発赤/紅斑、じんま疹/発疹を引き起こす
  • 呼吸器系では、鼻詰まりと結膜炎、鼻水、くしゃみ、のどのイガイガ、喉頭浮腫と気管支痙攣が起きる
  • 消化管では、悪心および嘔吐、蠕動亢進、腹部痙攣、下痢を引き起こす
  • 末梢血管系では、血管拡張と血管からの水分喪失が、低血圧とショックを引き起こす
  • 心臓では、機能低下、不整脈、胸痛、さらに心筋梗塞(単に偶然起こるのではなく、冠動脈攣縮またはプラークの破裂の原因となる伝達物質の放出によって引き起こされている!!)が起こり、極端な場合は心停止となる。

脂肪細胞の活性化および脱顆粒は、少量の造影剤投与でも起こりえます。そしてin vitroおよびin vivoのどちらにおいても、アナフィラキシー反応を確実に予測した試験はありません。

偽アレルギー反応を引き起こすトリガーメカニズムはなんでしょうか?

典型的なアレルギー反応の場合、肥満細胞を活性化させるトリガーメカニズムには、免疫グロブリンの結合が関与しています。もっと正確に言うならばIgEの結合です。しかしこれは今私達が話している偽アレルギー反応とは違います。

私達の偽アレルギー反応は他の要因―例えば補体因子C3aやC5a(アナフィラトキシンと呼ばれることもある。下記参照。)およびその他の物質によって引き起こされます。これらのメカニズムはかなり複雑で完全には詳細は明らかになっていません。とは言うものの、関与しているシステムについてざっと見てみましょう。

補体系

補体系は多くの炎症反応、そして特に免疫反応に関与しています。多くの蛋白質から成り、血液中で不活性前駆体として循環しています。補体系が活性化すると、凝固系の場合と同じように、いろいろな因子(「C」の略語で表される)が連鎖的に活性化されます。活性化された因子が他の成分を活性化させます。

補体系の第1番目の成分であるC1の活性化は、酵素C1エステラーゼによって媒介されます。この酵素自体は、安全措置として、C1エステラーゼインヒビターによって抑制されています。C1エステラーゼインヒビターが枯渇すると、C1の活性化が起こり、より早期に、より急速に、またより顕著に活性化されます。C1エステラーゼインヒビターのレベルが高い時には、補体系は活性化されにくくなります。面白いことに、実験的にはコルチコステロイド薬投与によってC1エステラーゼインヒビターのレベルが上昇します。このことがコルチコステロイド薬の予防的投与により造影剤の副作用が抑えられる理由かもしれません。

補体系の活性化中のこれら因子の発生順序はさまざまであり、造影剤によるこの補体系の活性化の経路は完全に解明されてはいませんが、それはここではそれほど重要ではありません。

これらにはどのような効果があるでしょうか?補体系の活性化カスケードの間、ペプチドC3とC5は活性型であるペプチドC3aとC5aに変化します。またこれらはアナフィラトキシンと呼ばれ、肥満細胞の活性化と脱顆粒化を引き起こし、その結果として症状が現れます。

また、C3aとC5aの分解産物は毛細血管と細静脈の透過性を高めます。これがアナフィラキシー反応に伴う循環血液量喪失の原因です。

造影剤への反応における補体系の正確な意義については、依然として意見が分かれています。先に述べたように、補体系は造影剤の反応に関与する他の因子に作用し、ヒスタミン放出を促進したり変化させたりすることがあります。このような間接的な作用メカニズムであることが、症状と血清補体価の変化に直接的な関連性がない理由を説明できます。

補体系にはペプチドが関与しているので、造影剤の蛋白結合がその補体系活性化能と関連があるのは当然のことです(蛋白結合が多ければ多いほど副作用が強くなることについては既に学習しました)。

血漿接触系

造影剤によるアレルギー類似反応を説明するために提案された、もう一つの興味深く、しかし残念なことに複雑な理論に、血漿接触系、または単純に接触系と呼ばれるものがあります。これは、基本的には血液が異物の表面と接触すると血液凝固をもたらすというものです。

一連の事象は、例えば、造影剤の高浸透圧血症または化学毒性に起因する内皮への局所的な損傷に始まります。損傷を受けたことで凝固第XII因子から凝固第XIIa因子への活性化が起こります。そしてXIIaは次にいわゆる接触系の一部である系統を活性化し、補体系を相互接続させます。これらの系統には以下のものがあります。

凝固線溶系

造影剤に対する反応を説明するために提唱された、同じように興味深く複雑なもう一つの仮説も、やはりカスケード系の活性化に関するものです。この系は凝固線溶系と呼ばれています。

この一連の反応は、例えば注入された造影剤の高い浸透圧や化学毒性などによる局所的な内皮の傷害から始まります。

この内皮の傷害によって以下のようにさまざまな系が活性化されます。

血液凝固系

血液凝固第XII因子が血液を凝固させる内皮下組織によって活性化され、特定の凝固因子が補体系を活性化し、C3aおよびC5aの生成を促します。

線溶系

これは通常、血栓形成時に、凝固を制御可能な状態に維持するため、同時に活性化されます。例えば第XII因子の活性によって生じる第Xlla因子は、プラスミノゲンからプラスミンへの変換を誘導し、今度はプラスミンはC5を活性化します。

プレカリクレイン-カリクレイン系

第XII因子の活性化はプレカリクレインからカリクレインへの変換も促します。そしてカリクレインは血漿中のキニノゲンを分解し、血管作動性物質ブラジキニンとリジルブラジキニンを産生します。ブラジキニンはヒスタミンに似た性質を持っていますが、作用はより強力です。さらにカリクレインはプラスミノゲンからプラスミンへの変換を誘導し、次にプラスミンはC5を活性化します。

先に述べたように、造影剤の高浸透圧および化学特性(化学毒性)が、これらの事象を引き起こし、誘発しているのかもしれません。このような化学特性の1つが、イオン性造影剤にも存在するカルボキシル基の存在です。非イオン性造影剤と比べ、イオン性造影剤では浸透圧が高いことから、これらの偽アレルギー副作用が高い頻度で発現することは理解に難くありません。

ヒスタミン放出

前述のとおり、ヒスタミンは偽アレルギー造影剤副作用において非常に重要な役割を果たしています。ヒスタミン投与はこのような造影剤反応の症状の多く(金属味からショックまで)を引き起こすことがあります。造影剤投与が血中ヒスタミン濃度を上昇させることもわかっています。

しかし、ヒスタミン濃度と症状との関連性は強いものではなく、ヒスタミンと同様の作用を持つ他の伝達物質も関与していることから、この関連性についてはそれほど厳密に考える必要はありません。

また、ヒスタミンはなぜ造影剤を動脈へ投与するよりも静脈へ投与する方が「アレルギー類似」副作用を起こすのかについて説明することができます。心肺にはヒスタミンを含有する細胞が多く存在します。静注では、これらの部位には、比較的高い濃度の造影剤が早く到達するために、より多くのヒスタミンが放出されます。

多くのアレルギー類似造影剤反応は、ヒスタミンによって引き起こされるため、これらの反応は抗ヒスタミン薬投与により予防または治療できます。抗ヒスタミン薬は、結合部位であるヒスタミン受容体に対しヒスタミンと競合することで、主に受容体拮抗薬として作用します。今日では、このような受容体が4種類明らかになっていますが、そのうち造影剤の副作用との関連ではH1受容体とH2受容体が最も重要です。アナフィラキシー反応におけるヒスタミン作用は多くはH1受容体を介して生じていますが、紅潮、頭痛、または血管拡張による低血圧など、一部はH1受容体およびH2受容体を介して生じています。

受容体拮抗薬はヒスタミンと競合するため、受容体拮抗薬の投与は症状の予防だけでなく、患者が造影剤による反応を既に示している場合にも有用です。拮抗薬が結合部位からヒスタミンを追い払うことになります。

不安と恐怖の役割

中枢神経系も造影剤に対する反応に一役買っています。

催眠効果のある録音テープを聴かせた患者では悪心、嘔吐やじんま疹の頻度がかなり低いことや、また造影剤に対する反応に中枢神経系が関与していることを示唆する実験データもいくつかあります。マウスで造影剤注入前にジアゼパムを投与しておくと、LD50が上昇し生存率が上昇したという報告がありますが、この場合、視床下部と自律神経系とにつながっている大脳辺縁系が鍵を握ってきます。

実に多くの副作用が「中枢神経性」で説明できます。少し例を挙げておきましょう。

不安と恐怖の役割
  • 血管運動神経の影響による低血圧やショック(迷走神経反射)
  • 体温調節を司る視床下部への作用による体温上昇
  • 交感神経系と副交感神経系の活性化による心リズム障害
  • じんま疹(交感神経節後繊維が皮膚の局所でヒスタミンを放出するためで、紅斑もこれで説明できます)

ここでまた、例によって「しかし」です。そう簡単ではありません。不安だけでは説明として不十分です。なぜなら、

  • 不安だけで問題が起こるのだとすると、副作用がみられる患者は針を刺しただけでも反応するはずです。
  • 実際には、針刺しと生理食塩水の注入だけでは、造影剤注入後に観察されるような影響は見られません。

とはいえ、極度に不安になっている患者にはベンゾジアゼピン系薬物(ジアゼパム、ミダゾラム)や他の辺縁系に作用する物質の投与を検討する必要があります。これで患者はずっと楽になり、たぶん副作用も少なくなるでしょう。

万一何か起こったらどうするか?

造影剤の研究の進歩により次々とより安全な化合物が生み出されてきました。しかし非イオン性造影剤の登場以降、副作用や有害反応が減ったとは言っても、問題がなくなったわけではありません。どんな薬でも副作用を生じる可能性があります。これは否定しようのない事実です。

急性有害事象は多様です。軽度の反応は、治療をしないでも治まることが多く進行することはありません。中等度の反応では、間違いなく医療的な管理が必要となります。重篤な反応では、生命を脅かすこともあり、治ることがなく死亡に至ることもあります。

万一何か起こったらどうするか?

造影剤反応の徴候や症状は、「生理的」なあるいは、用量依存性の反応と、アレルギー様反応に分類されることがあります。ただし中には両方のメカニズムによって引き起こされる反応もあります。例えば、味覚異常はヒスタミン放出と味覚細胞の基底外側から味覚受容体を直接刺激することによる反応です。

明確に分類できないものの、特に反応が問題となっている場合は、偽アレルギー反応またはアナフィラキシー反応であると推察することが最善ではないかと考えます。

これらの考えから、表1は基礎となるメカニズムを区別していません。本表は「造影剤初心者」への簡単なオリエンテーション用のものであり、適切な臨床的判断のための代替となるものではありません。
 

表1.造影剤投与後の有害作用

軽 度 中等度
(軽度の症状の持続または新たな症状)
重 度
熱感、悪寒    
味覚異常、悪心、嘔吐 遷延性嘔吐  
限局型掻痒、じんま疹、湿疹 顕著な広汎性皮膚反応 低血圧を伴うびまん性紅斑
鼻閉、鼻水、くしゃみ、嗄声、結膜炎 顔面および喉頭浮腫 重度または進行性喉頭浮腫(喘鳴!)
喉のイガイガ、咳 喉のつかえ感、嗄声、軽度の低酸素血症または呼吸困難を伴う/または伴わない軽微な気管支痙攣(喘鳴!) 重度の気管支痙攣、重度の呼吸困難、有意な低酸素血症、肺水腫
  肺水腫 治療の効かない肺水腫
  頻脈および徐脈 生命にかかわる不整脈
  孤立性の胸痛  
自然に回復する血管迷走神経反応 治療に反応する血管迷走神経反応 治療の効かない血管迷走神経反応
蒼白、軽度高血圧 低血圧または高血圧 頻脈を伴う著しい低血圧、高血圧性緊急症
めまい感、不安、頭痛   発作/痙攣、無反応

(造影剤に関するACRマニュアルより改訂)

カテゴリー分けをすることは、判断の助けにはなりますが、造影剤反応は時間と共に変化し、最初は軽度な反応であっても重度の問題に変わっていく可能性があることを忘れないでください。特に患者から目を離していた時に!

重症の造影剤副作用というのはまれですが、造影剤を投与する時は基本の治療方法をよく認識しておく必要があります。以下にいくつか、忘れられがちな事実と注意事項を挙げておきます。

重要なこと

  • ほとんどの副作用は造影剤投与後15~20分までの間に起こります。なので検査中あるいは検査後しばらく患者を1人にしておくのは賢明ではない!
  • 有害な副作用が起こっても治療できるように、備えを怠らない。つまり、緊急事態に対応できる準備をしておく。
  • 以下を頻繁にチェックする。

-救急カート(必要なものが全部揃っているか?使用期限を過ぎたものはないか?)
-酸素供給装置(ボンベは満タンか?)装置を適切に扱えるか。例えば容易に開閉できるか。
-フェースマスクまたは鼻カニューレはあるか。注意:管理責任者を決めておく必要がある。こうすると救急カートの取り扱い時にも安心できるという副次的な効果がある。

  • 同じ部署または一緒に業務に携わる者全員が以下のことを周知していること。

-緊急時に誰を呼ぶのか(非常用番号はどこにあるのか?)
-必要な設備の取り扱い方(酸素ボンベなど)

  • 救急カート内の薬剤は投与量が簡単にわかるようになっていると便利。特にこれらの薬物は頻繁に必要となるものではないので、アンプル1本が成人の常用量であることを知っていれば、mgやmLで記載してあるよりわかりやすい。
  • 造影剤の副作用の多くは、重篤なものも含めて、造影剤投与後5~10分以内に起こるので、この間、患者から離れてはいけない。
  • 穿刺および注入は確保しやすい部位で行い、留置した針が安定しているかどうかに注意する。造影剤投与後、すぐに静脈ラインを取り外してはいけない。何かあった場合に使用できるように、そのままにしておくこと。
  • 何か異常が起こったら、どんなに些細なことに思えても、すぐに助けを呼ぶ。悪心や嘔吐などの軽い症状から激しい反応が始まることはよくある。
  • 問題が取るに足らないほど小さなことでない限り、造影剤の投与を続行しない。
  • 患者の気道が確保されているかどうか注意する(舌根沈下による気道閉塞に注意)。口腔内異物があれば取り除くこと。
  • 酸素供給を行う。ただし、患者が蒼白状態になる前に行うこと。

-血圧は問題ないか?
-血液循環は問題ないか?脈は?心停止の場合は心肺蘇生措置を行う。

  • 心肺停止はアレルギー類似および生理学的な、有害事象の行き着くところである。
  • 目安としては、疑いがあれば、アレルギー類似反応と考える!

表2.造影剤の副作用と有害反応の治療指針(成人用投与量)」の表2に、改めて重篤な副作用とその治療指針を挙げてあります。ただしこの表を見る前に、次の点に留意してください。

  • 表に記載したことは、造影剤に対する反応の治療について誰もが知っておくべき最低限度のことです。
  • 造影剤によって起こりうるすべての突発的事象の治療に関する包括的な指針を目指したものではありません。また、突発的事象に対する治療は特定の枠内に収まりきらないのが常です。
    以下に重要なポイントをいくつか挙げます。

呼吸器障害には

  • 酸素が有効な手段となる。

血圧低下には

  • 頻脈(心拍数>100)を伴う低血圧(<70mmHg)はアナフィラキシー反応で頻度が高い。アナフィラキシー反応では(血管拡張や血管透過性亢進によって)血液の3分の1が数分以内に失われる。したがって、患者の脚を高くすること、できるだけ径の大きい静脈ラインで補液を行い、循環血液量を保つことが重要となる。また、補液には生理食塩水が目的にかなっている(他の補液が優れるとするエビデンスはない)。
  • 低血圧(<70~80mmHg)と徐脈(心拍数<60)の併発は血管迷走神経反応の特徴とされている(注意:β遮断薬を服用中の患者がアナフィラキシー反応を起こした時は、患者の心拍数は十分に上がらないかもしれないのでこのような症状を呈することがある)。

呼吸困難(喉頭浮腫、気管支攣縮)、重度の低血圧、頻脈、血管性浮腫、これらはすべて重篤な副作用の徴候です。

  • 表2からわかるとおり、急性副作用の治療に必要な薬物の数は多くはないので、全部覚えておいてください。復習として、以下にいくつかの注意事項を挙げます。

  • 以下の注意事項は概略にすぎず、薬物に関する(特に起こりうる副作用を含めて)すべてを網羅しているわけではありません。
  • ここに記載した投与量の範囲は成人を対象としたものであり、状況によって変わります。
  • ご自身の施設に即して、必要な薬剤、それから成人と小児の投与量のリストを作っておくといいでしょう(新しい情報が得られたら、それに合わせてリストを書き換えれば、知識の更新にもなります)。このリストは緊急の場合役立つでしょう。放射線学会や病院の中には造影剤反応対策用のICカードを用意し、インターネットからダウンロードできるようにしているところもあります。これをダウンロードしてみてはどうでしょう?
     

表2.造影剤の副作用と有害反応の治療指針(成人用投与量)

症状/徴候 治 療
じんま疹

軽症じんま疹(孤立性膨疹)

  • 経過観察
  • H1受容体拮抗薬(ジフェンヒドラミン[25~50mg]筋注または静注、またはクレマスチン[2mg]静注など)

重症じんま疹

  • H1およびH2受容体拮抗薬(クレマスチン[4~6mg]、およびラニチジン[50mg])
注意
両剤を希釈、別々に緩徐静注(混ぜないこと!)

すでに有害反応が発現している場合は、抗ヒスタミン薬の効果を疑問視する意見もあるが、使用を推奨する者もいる。

受容体におけるヒスタミンとの競合作用によって、受容体拮抗薬の注入後、血漿ヒスタミン値が少し上昇する。抗ヒスタミン薬は投与しないよりはした方が得るものがあるように思われる。H2受容体拮抗薬を単独で投与しないこと。

血管迷走神経反応(低血圧と徐脈)
  • 静脈内輸液:0.9%生理食塩水、急速注入
  • 酸素(6~10L/分)(鼻カニューレ/フェースマスク)
  • さらに必要なら、アトロピン0.8~1.0mg静注、3~5分ごとに総投与量3mgまで繰り返し投与可

脚を高くするなどの基本的な処置を忘れないこと。

心拍数で治療効果を把握すること。

低血圧(頻脈)
  • 酸素(6~10L/分)(鼻カニューレ/フェースマスク)
  • 静脈内輸液:0.9%生理食塩水、急速静注上記でも不十分なら:昇圧剤を使用。例えば
  • ドーパミン静注2~5μg/kg/分
  • アドレナリン静注4~8pg/分
脚を高くすること。
悪心/嘔吐
  • 患者を安心させる
  • 制吐薬、例えばプロクロルペラジン5~10mg筋注またはメトクロプラミド(1mg/kg体重を生理食塩水50mLに希釈)静注(15~30分)
誤嚥を予防すること。

表2.つづき

症状/徴候 治 療
重篤なアナフィラキシー様反応
  • 酸素(6~10L/分、鼻カニューレ/フェースマスク)
  • 補液:生理食塩液静注
  • アドレナリン(エピネフリン)

皮下または筋注

1:1,000希釈液0.1~0.2mL(=0.1~0.2mg)

(繰り返し投与可)静注

1:10,000希釈液1mL(=0.1mg)緩徐静注5分(繰り返し投与可)

  • 抗ヒスタミン薬(第2選択薬):H1受容体拮抗薬。例えば、ジフェンヒドラミン(Benadryl®)[50mg静注]

H2受容体拮抗薬。例えば、ラニチジン(Zantac®)(50~150mgを食塩水20mLに希釈し静注[5~15分])

  • 呼吸器症状(気管支攣縮など)に有効でない場合:β2作動薬(定量噴霧式吸入剤)、メタプロテレノール(Alupent®)またはテルブタリン(Brethaire®)またはアルブテロール(Proventil®)2~3吸入
  • コルチコステロイド:ヒドロコルチゾン(SoluCortef®)0.5~1.0g静注またはメチルプレドニゾロン(Solu-Medrol®)500~2000mg静注(数分~30分)

アナフィラキシー反応は血管拡張および液体成分の間質腔への漏出を伴う。そのため1~3Lの体液が急速に消失することになる。これほどの大量喪失は短時間では補充できないために昇圧効果のあるαアドレナリン物質を必要とする。

H1およびH2受容体拮抗薬の混合はH1受容体拮抗薬単剤より有効である。H2受容体拮抗薬単剤で投与してはいけない!

即時的な効果はない!コルチコステロイドは細胞膜を安定させる。

気管支攣縮
  • 酸素(6~10L/分)
  • β2作動薬(定量噴霧式吸入剤)
  • メタプロテレノール(Alupent®)またはテルブタリン(Brethaire®)またはアルブテロール(Proventil®)2~3吸入
  • アドレナリン(エピネフリン)皮下または筋注

1:1,000希釈液0.1~0.2mL(=0.1~0.2mg)

静注

1:10,000希釈液1mL(=0.1mg)緩徐静注5分

気管支痙攣の場合、吸入物質の分布を予測するのは難しい。
痙攣発作
  • ジアゼパム(Valium®)(5~10mg静注)またはロラゼパム0.01mg/kg体重 静注
効果が得られるまで増量する。

造影剤の副作用の治療に用いる薬剤についての注意

アドレナリン

かなり強力な昇圧薬で、作用機序は

  • α受容体:末梢血管の収縮
  • β受容体:ただし

β1受容体:心拍数上昇と心筋収縮能の増強

β2受容体:平滑筋細胞の弛緩、特に気管支拡張と細動脈の拡張

さらに、βアドレナリン作用により、化学メディエーター物質の放出を阻害する細胞内AMP(=アデノシン一リン酸)量が増加します。

低用量では、β受容体に対する作用が優位で、用量が増えるとα受容体の作用が出てきます。そして高用量ではα受容体に対する効果が最も顕著になります。

アドレナリンのさまざまな作用から、なぜ高用量のアドレナリンが血圧上昇、心リズム障害、梗塞などの心障害を招くのかを説明できます。

  • 重篤な(アナフィラキシー)反応の時以外はアドレナリンの静脈内投与を行ってはならない。
  • 低血圧が主な症状である患者では、まず直ちに補液を行う。
  • 常に低用量のアドレナリンで開始し、効果に応じて用量を調節すること。
  • 高齢患者、低酸素血症の患者、β遮断薬服用中の患者では慎重に使用すること(これらの患者ではβ受容体に対するアドレナリンの作用が必要な場合――例えば気管支攣縮の時――アドレナリンを大量に投与しないと効果が現れない。しかしその投与量は、α受容体を介して脳卒中や心筋梗塞などの重篤な副作用を引き起こす可能性のある量となる。α遮断薬またはβ遮断薬を服用中の患者では、アドレナリン投与で「異常な」効果が見られる可能性がある)。

アドレナリンは子宮血流を強く抑制するので、妊娠中は禁忌とされています。

〔用量・用法〕

(原著の内容を優先して記載しており、実際の使用に関しては日本における用法用量のご確認をお願い致します)

今までは皮下投与(s.c.)が推奨されてきました。しかし、吸収に幅があるので体内循環が損なわれた場合、薬剤の効果の制御ができません。そのためこの投薬経路は低血圧の患者では不適切です。

現在では、通常、筋肉内投与(i.m.)または静脈内投与(i.v.)のいずれかが推奨されています―これは最重要事項ですが、両者は異なる濃度(皮下投与および筋肉内投与1:1,000;静脈内投与1:10,000)および用量を必要とします。

皮下投与
-1:1,000の濃度使用(=1mg/mL)
-0.1~0.3mL注入(5分後に再投与可能)

筋肉内投与
-1:1,000の濃度使用(=1mg/mL)
-0.1~0.3mL注入(5分後に再投与可能)
-投与部位:前外側大腿

静脈内投与
-重篤な反応の場合、優先される経路
-1:10,000の低濃度を使用のこと
-1mLを5分以上かけてゆっくりと注入のこと
-5分後再投与可能

抗ヒスタミン薬

抗ヒスタミン薬は「あまり劇的でない状況」下で有効です。主に皮膚反応に効果的ですが、これに限定されるものではありません。

何を投与すべきでしょうか?

  • じんま疹にはH1受容体拮抗薬(ジフェンヒドラミンなど)、効果がなければさらにH2受容体拮抗薬(ラニチジンなど)が推奨されています。
  • 重篤なアナフィラキシー様反応にはH1拮抗薬とH2拮抗薬の併用が必要です。しかし、抗ヒスタミン薬は重篤な反応に対しては第二選択薬です。(アドレナリンは第一選択薬です。覚えていますか?)H2受容体拮抗薬の単独投与は避けてください。

〔用量・用法〕

  • ジフェンヒドラミン(25~50mg)o.s./i.m./i.v.
  • ラニチジン(300mgをo.s.、50~150mgをi.v.、生理食塩水20mLで希釈、緩徐静注[5~15分かけて])

アトロピン

迷走神経反応により血圧低下を起こしている患者で、脚を高くしても補液を行っても(十分な)効果が得られない場合に、必要になることがあります。

〔用量・用法〕

  • 成人におけるアトロピンの初期投与量は1mg(=2アンプル)で、緩徐静注する(注意:これよりも少ない量は、心リズム障害を憎悪させる可能性があるので、かなり痩せている患者に限り、それも初回用量に限定すること)。場合により5~15分後に総投与量3.0mgまで繰り返し投与する。

気管支拡張薬

気管支拡張はβアドレナリン作用によって起こります。アドレナリンを緩徐注入するとこのβアドレナリン作用が優勢となるので、重篤な気管支攣縮の治療にアドレナリンを用いることができます。

しかし、気管支攣縮の鎮静にはβアドレナリン作動薬の吸入スプレーが汎用されています。例えばサルブタモールやフェノテロール定量噴霧式吸入剤などです。

気管支攣縮反応が起こると、吸入した薬剤が痙攣していない部位に選択的に入ってしまうことに留意してください。

コルチコステロイド薬

重篤なアナフィラキシー反応に対しては、高用量のコルチステロイド薬が有効です。細胞膜を安定させ、化学メディエーター物質の産生を抑制します。ただし、即効性はありません。

このような産生減少の効果が出るにはある程度時間を要するため、その効果はすぐに現れるものではなく、ゆっくり発現します。多くの薬剤が利用可能です。

ベンゾジアゼピン

痙攣や発作はさまざまな原因で起こりますが、ベンゾジアゼピン(Valiumまたはロラゼパム)が有効です。その他に、もちろん鎮静にも適しています。

〔用量・用法〕

  • Valium5~10mgを緩徐静注
  • ロラゼパム0.01mg/kg体重静注

ニトログリセリン

冠動脈灌流を改善し、酸素需要を軽減するので、狭心症発作に有効です。この物質は心臓への前負荷を(高用量では後負荷も)軽減するので、肺水腫にも使用できます。低血圧には禁忌です。

〔用量・用法〕

  • 吸入剤を2吸入
  • (または)舌下錠(0.3~0.6mg)

フロセミド

利尿作用により体内の水分の排泄を促進するので、急性肺水腫の時に利尿薬として有効です。

〔用量・用法〕

  • フロセミド20~40mgを静注

ここで改めて強調しておきたいのは、造影剤を注入する人は誰でも、想定される副作用に備えておく必要があるということです。知らなかったとか、救急設備が十分でなかった、というのは言い訳になりません。折に触れて繰り返し救急処置の訓練をしておくことも、そして最新の知識を身に付けておくことも重要です。

また、造影剤に対する副作用は正確に記録し、その情報を紹介先の施設に適切に報告することも忘れないでください。「造影剤アレルギー」、さらには「ヨードアレルギー」という用語は使うべきではなく、医者にとっては不名誉なことです!もっと特定的に(!)使用された特定の造影剤とともに徴候と症状をリストアップしてください。

どうすればリスクの高い患者を識別できるか?

長い間、患者が造影剤投与に副作用を示すかどうかを、予備テストで予知できると思われていました。具体的には少量の造影剤を静注または皮下注入していましたが、実際に役に立たないどころか、危険でさえあることが明らかになりました。わずか1mLの造影剤を注入しただけで死亡した例もあるのです。

ある種の臨床検査(プレカリクレイン-カリクレイン検査など)から手がかりが得られることもありますが、現時点ではまだ実用的ではなく、絶対的に信頼できるものでもありません。

しかし、リスクのある患者の一部を識別できそうな便利な方法があります。次のような患者では造影剤の副作用の頻度が高いことがわかっているのです。

  • 喘息(正常の約5倍のリスク)
  • アレルギー歴(正常の約4倍のリスク)
  • 造影剤に対する有害反応の既往(正常の11倍のリスク)
  • 年齢60歳超
  • 心疾患(正常の4~5倍のリスク)

心疾患でリスクが高いのは、1つには虚血性心疾患および拡張型心筋症患者では、心臓の肥満細胞が局所で増加していることが原因と考えられます。そして高齢者で有害事象の割合が高くなるのは、高齢者に虚血性心疾患患者が多いからかもしれません。)

  • 肥満細胞症:肥満細胞が偽アレルギー反応において主要な役割を果たしていることから、肥満細胞が多くなれば、反応はより強くなり、より高頻度に見られることは、理解に難くありません。
  • 免疫活性(自己免疫疾患等):これにより免疫システムの一部で活性化の閾値の低下が大きくなるため。

興味深いことに、造影剤に対する致命的な有害反応を認めた患者でも、次回の投与時にまた同じような反応が繰り返し見られるとは限らず、重篤な有害反応が再び観察されるのは、このような患者のほぼ3分の1にすぎません(本当は20~30%の確率ですが、3分の1の方が覚えやすいでしょう)。何の副作用も起こさず、造影剤に対して忍容性を示すこともあります。ですが、準備しておくことが重要です。

残念ながら、これでリスクのある患者全員を識別できるわけではありません。今までに一度も造影剤を投与されたことがない患者もいれば、造影剤を投与されても何事もなかった患者が、次回は重篤な有害反応を示す可能性もあるのですから。

どうすれば有害反応のリスクを軽減できるか?

前述のように、造影剤の副作用のいくつかはある種の物理化学的特性によるもので、これらは投与された造影剤の量と濃度に依存します。造影剤の量を減らすか濃度を下げるかすれば、これらの副作用は軽減できるはずです。

偽アレルギー反応またはアナフィラキシー反応の発現を予測することは、現時点では不可能です。正確な発現機序もまだわかっておらず、この種の反応の予防も難しいのですが、適切な薬物の前投与でその頻度を下げられる可能性はあります。

この目的でこれまでさまざまな種類の薬剤が使われてきました。また、現在も使われています。例えばステロイド薬、抗ヒスタミン薬、βアドレナリン作動薬、そして向精神薬です。最も重要なのはステロイド薬と抗ヒスタミン薬なので、この2つについて詳しく触れておきます。

コルチコステロイド

造影剤投与の12時間前と2時間前にコルチコステロイドを経口投与すると、副作用発現率は下がります。造影CT検査の5時間前にコルチコステロイドを静注すると副作用が低減しました(以下参照)。

コルチコステロイドの薬理学的作用には細胞レベルと細胞内レベルで多くのプロセスが関与しています。例えばコルチコステロイドは好塩基球や肥満細胞の膜を安定させ、RNA合成を促進します。また、C1エステラーゼインヒビターのレベルが上昇します(覚えていない場合は「補体系」参照)。これらのプロセス、特に後者は時間がかかるため、コルチコステロイドが目的とする作用を発揮するには時間を要します(これは、造影剤投与のわずか2時間前の単回経口投与では効果がないことの理由でもあります)。

コルチコステロイドを造影剤投与の数日前または数時間前に投与するのは、時間がかかり、煩わしいことです。そのため世界のある地域では―著者の病院も含め―多くの場合、抗ヒスタミン薬の前投薬が好まれて施行されています(下記参照)。

抗ヒスタミン薬

造影剤の副作用においてヒスタミンは重要な役割を演じています。ヒスタミンはヒスタミン受容体に結合することにより作用を発揮します。受容体にはH1受容体とH2受容体の2つの型があり、H1拮抗薬またはH2拮抗薬によってそれぞれ競合的に受容体に結合します。ヒスタミンは受容体周囲で抗ヒスタミン薬と拮抗するので、ヒスタミンが受容体ですでに作用を発揮している場合も、抗ヒスタミン薬の投与は効果があります。受容体に結合したヒスタミンの一部が抗ヒスタミン薬によって排除されるからです。受容体拮抗薬注入後に血漿ヒスタミン濃度が少し上昇することがあるのは、この拮抗作用で説明されます。

皮膚と粘膜の反応(紅斑、発疹、瘙痒感、粘膜腫脹など)や気管支攣縮以外に、ヒスタミンは血管拡張も引き起こします。この血管拡張は初めのうちはH1受容体への作用、後にH2受容体への作用を介するので、まずH1拮抗薬を投与し、その後H2拮抗薬を投与する方法が有効です。世界的には抗ヒスタミン薬の使用については異なる見解があり、一部の国々ではコルチコステロイドの予防投与が標準的な処置であると考えられていますが、H1拮抗薬とH2拮抗薬の組み合わせは意味のあることです。ヒスタミンに似た作用を示す化学メディエーターは他にもあるので、抗ヒスタミン薬に反応しない症状が見られても、抗ヒスタミン薬の効果がないということにはなりません。

予防法―前投薬について何を知っておくべきか?

以下に重要な事柄をいくつか挙げます。

  • 過去に軽い反応を示した患者のすべてに前投薬を行う必要はありません。問題が起きた造影剤がわかっていれば、それとは違う薬剤を使えばたいていは何も起こらないでしょう。「原因となる」薬剤がイオン性造影剤であった場合は、―最近では珍しいことですが―非イオン性造影剤を使えばよいだけのことと考えられます。
  • 前回、副作用があっても、予防処置をしなくとも同じ反応が起こるとは限りません。
  • 予防的薬物投与によって副作用の可能性が削除されるわけではありません。いわゆるブレークスルー反応が生じ、死に至る可能性もあります。
  • 高リスク患者および過去に造影剤に対して重篤な反応を示した患者は予防処置を行った上で、非イオン性造影剤を投与します(できれば有害反応が起きたときに投与されたものとは違う薬剤が良いでしょう)。

予防のための薬物は何を投与するか?

米国ではコルチコステロイドの予防投与が標準的な処置ですが、文献的には実に多種多様な予防的薬物投与レジメンが報告されています。現在実際に使用されているものはわずかです。

  1. 造影剤投与の約13時間前にプレドニゾロン50mgを経口投与し、6時間おきに計3回。さらに造影剤投与の1時間前にジフェンヒドラミン50mg経口(または筋注)。
  2. 造影剤投与の12時間前と2時間前にメチルプレドニゾロン32mg経口。
  3. 造影剤投与の5時間前と1時間前にヒドロコルチゾン200mgを静注+造影剤投与の1時間前にジフェンヒドラミンを静注。

コルチコステロイドの効果を確実にするには造影剤投与の数時間前に投与する必要があるので、緊急の場合は上記のレジメンは役に立ちません。

そして入院患者の場合、コルチコステロイドの予防投与により感染率が上がり、その結果医療費の上昇を招くことになります。

加えて、一部の患者(急性リンパ芽球性白血病や非ホジキンリンパ腫の小児)では、コルチコステロイドによっていわゆる腫瘍溶解症候群が誘発されやすいので、このような状況下では、コルチコステロイドの使用は避けるべきです。

そして何よりも、まれにですが、コルチコステロイド薬の投与自体がアナフィラキシーの反応を生じさせることです。これはおそらくコルチコステロイド分子自体に関連したものではありません。それよりもコハク酸化物に限定しているようです(コハク酸化物によってコルチコステロイドは静注用に水溶化され、コハク酸等によりエステル化されます)。

今日では米国以外の多くの病院で、リスクのある患者に対して、H1拮抗薬とH2拮抗薬の併用が標準的な前投薬として確立されています―世界的には一般的ではありませんが。

この併用予防法は、造影剤によるものだけでなく、偽アレルギー/アナフィラキシー反応の出現を明らかに抑制します。これらの投薬(ジフェンヒドラミン、50mg錠剤、H2拮抗薬としてシメチジン300mgまたはラニチジン50mg)は造影剤投与の1時間前に経口で行われます。

静注すると効果が早く出ますので、例えば、

-H1拮抗薬(例、ジメチンデン、約0.1mg/kg体重)を緩徐静注し(2分以上)、続いて、

-H2拮抗薬(例、ラニチジン50mgを0.9%生理食塩水20mLに混和し、5~7分静注)を造影剤投与の約15~30分前に静注することが推奨されています。この前投薬によってヒスタミン放出による反応を、少なくとも2時間は防ぐことができます。

そして、もう一つの予防的薬物投与レジメ

褐色細胞腫の患者では造影剤投与後に高血圧クリーゼを来すことが報告され、まれな例では同じ状況下で血圧低下も認められています。このような患者に対しては、造影剤投与前にα遮断薬を投与することが推奨されています。

訳者注:褐色細胞腫は検査後に判明する場合も多く、高血圧クリーゼに対処する準備が重要です。

褐色細胞腫の患者で造影剤投与後にこのような問題が実際どの程度の頻度で起こるのかはわかっていません。褐色細胞腫の血管支配領域に造影剤を動注(特に選択的に動注)する場合は、少なくともこのような前投与を考慮すべきです。さて、急性の副作用についてはこれくらいにしておきましょう。

いわゆる遅発性副作用にはどんな意義があるのか?

造影剤に対する重篤な副作用は、ほとんどが造影剤投与後の5~10分以内に起こることが、以前から知られています。これよりも遅い時期に副作用が発現することは、それほど多くはありません(もちろん造影剤誘発性腎不全は別ですが)。造影剤は注入後24時間以内に体内から排泄されてしまうので、それより後に副作用が起こる可能性はないと考えられていました。ところがそれは間違いだったのです。

遅れて起こる副作用があることは、非イオン性ダイマー型造影剤の使用とともに明らかになりました。比較的頻度が高かったのは広範囲の発疹(皮疹)で、これは造影剤投与後しばらくして現れ、ステロイド薬や抗ヒスタミン薬など通常の抗アレルギー薬治療は効果発現に時間を要し、数時間後に消失しました。このような副作用の原因について、これまでにわかったことを手短にまとめておきます。

その前に遅発性副作用の定義ですが、造影剤の投与から1時間後以降、7日後までに起こる副作用とされています。

この遅発性反応が最初に注目されたのは、実際に非イオン性ダイマー型造影剤を血管内投与した場合だったのですが、他のタイプの造影剤、つまり非イオン性モノマー型造影剤を投与した場合でも起こることがあります。最も頻度の高い遅発性副作用は発疹で、痒みは伴うことも伴わないこともあるようです(ダイマー型造影剤で約10%、非イオン性モノマー型造影剤では約5%)。それから鼻水や風邪に似た症状もあります。

遅発性副作用は女性や過去に造影剤への忍容性が低かった患者で、より多く認められています。

遅発性反応は通常、生命を脅かすものではありません。きわめてまれな例として重篤な遅発性副作用が報告されていますが、興味深いことにそのほとんどが非イオン性ダイマー型造影剤の投与後なのです。

遅発性副作用をどう評価して最終判断するのか?

患者にとって最も重大な遅発性副作用は発疹です。特に痒みを伴う皮疹では数日間の対症療法が必要となることもあります。鼻水や風邪に似た感冒様症状では危険と感じることはほとんどありません。

遅発性副作用はあらゆるタイプの造影剤で起こる可能性がありますが、その頻度は造影剤のタイプによって異なります。遅発性副作用の発現率がより高いのは非イオン性ダイマー型ですが、発症メカニズムはよくわかっていません。また、非イオン性ダイマー型造影剤は合成が難しく、値段も高価です。

ただし、髄腔内投与においては忍容性が高いことが明らかなので、非イオン性ダイマー型のイオトロランを選択するべきでしょう。