mvl-bg-contrast-media-sub

Everything about X-ray Contrast Media

副作用に関する今までの解説を読んで、造影剤の影響について整理されているかもしれません

ここまで読んできた皆さんはたぶん、造影剤はとても危険な薬なのかという誤った印象を持ったでしょう。ところが、実際は全く逆で、造影剤は最も安全な薬の部類に入るのです。

とはいえ、治療薬として投与されるのではなく、主に診断目的で投与される薬剤なのですから、慎重に使用される必要があります。

造影剤の副作用について多く書いてきましたが、X線減衰によってコントラストを強くするという本来の作用も忘れてはいけません。たぶんこの話題も取り上げた方がいいでしょう。

周波数と波

X線や太陽光などの電磁波はそれぞれ、周波数と波長が異なります。周波数と波長は逆相関し、周波数が高いほど波長は短く、その逆も成り立ちます。

放射線は周波数が高いほどエネルギーが大きい。これをイメージするのは簡単です。浴槽に浸かって波を立てているところを想像してください。毎秒1つ波を作るのは簡単です(周波数は1ヘルツ[Hz])。毎秒5つの波を作るには(周波数は5Hz)、もっと多くのエネルギーが必要ですよね。

周波数と波
周波数と波

それでは水の中は?

ダイビングをしたこと、あるいは水中映像を見たことがありますか? 水中では太陽光はどうなっているでしょう? 水面下の層の厚さが増すにつれて、光は少しずつ吸収されてしまい、水面から遠ざかるほど暗くなります。また、光はだんだん青くなっていきます。太陽光は透明な光ではなく、いろいろな周波数と色のスペクトル全体からなることはよく知られています。それらの色が集まって透明になっているのです。

わかりにくいと思うかもしれませんが、これは日常的な状況から説明することもできます。青と黄色の絵の具を少し出して、混ざらないように容器に置いてみると、青と黄色が見えます。これはそれぞれの場所が青と黄色の光を反射しているからです。

2つの色を混ぜると、新しい色、緑ができますが、これは絵の具が緑の光を反射しているからです。

逆のことも起こります。混合物から黄色を取り除けば、また青色ができます。

水に深く潜ると、光の青以外の周波数が水で減弱されるので、より青い世界になっていきます。これは、「はじめに」の疑問とどんな関係があるのでしょうか?

皆さんは、ある物質が放射線を吸収する程度は放射線の種類によって異なることを思いだしたでしょう。このことは造影剤が入ったビンの場合にも当てはまります。造影剤のX線減衰作用は太陽光に対する作用とは全く異なっており、相互に無関係なのです。

物理学にもどって

放射線の減衰は透過される物質の厚さで決まることは、よくわかったでしょうか。

もちろん減衰の程度は放射線の種類(懐中電灯では壁の向こうを照らすことはできません)や透過される物質の種類にも左右されます(X線検査ではキッチンエプロンではなく、鉛のエプロンを着けるのはそのためです)。

では、X線減衰を規定するパラメータは何でしょうか? われわれは造影剤によってX線減衰に影響を及ぼそうとしているのでしたね。

このテーマについて調べていくと、たいてい次のような方程式に出合います。

I=I0×e-μd

見覚えがありますか?

物理学にもどって

もうこれ以上待てないって?

この方程式の基本的な意味は、物体や物質を透過する(つまり、向こう側に出てくる)放射線の総量は、入り込む放射線の総量(I0)とその他の因子に依存することを意味しています。「d」はすでに述べた物質の厚さで、物質が厚くなればなるほど、透過する放射線は少なくなります(透過するX線の量が減少するという事実は、方程式の中のマイナス記号で表わされています)。

μは「線形減衰係数」と呼ばれるもので物理学者以外の人にはほぼ意味がないでしょう。しかし、これは非常に重要なものです。X線が物質を通り抜ける「その線に沿った減衰」を表します。基本的にX線の減衰に影響する、厚さ以外のすべての因子をまとめたものです。

この減衰係数は次のものの影響も受けます。

  • 物質の物理的密度
  • 物質の原子番号

物理的密度は単位体積あたりの質量(g/cm3)で求められます。物質の密度がX線減衰に影響するのは、論理的に当然でしょう。例えば水の場合、液体でも気体でも化学的に同じ水という物質ですが、液体の状態の時は気体とはX線を吸収する程度が違います。大まかに言えば、重いものほどX線減衰は強くなります。厚さdのある物質がどれくらい放射線を減衰するのかを知りたければ、厚さと線形減衰係数を掛けて求めることができます。

原子番号にはどんな役割があるか?

皆さんは物理か化学の授業で、原子番号(Z)は原子核中の陽子の数だと習ったのを覚えていますか? 原子は電気的に中性なので、陽子の数は原子核の周りにある電子の数に等しくなっています(そうでなければ原子はイオンになってしまいます)。

X線減衰は基本的に吸収と散乱の2つの作用が関係しています。どちらの作用にも電子が関与していて、物質の電子の数がその減衰力に影響します。そして原子番号は電子の数を表しているので、X線の吸収と相関するのです。

X線の減衰に対する原子番号の影響力は実際に密度よりも大きいのです。

  • 密度(重量)の影響は単純に比例的で、重くなればなるほどX線の減衰が強くなります。
  • これに対して原子番号(Z)の放射線減衰に対する影響は、その3乗から4乗(Z3~Z4)に比例します。(3乗が一番覚えやすいでしょう。基本的な造影剤分子中のヨードの数も3ですしね)

放射線減衰が原子番号の3乗に比例するという事実はとても重要です。例えば通常の血管造影で、どうして造影剤が流れている小さな血管が骨の前面に見えるのか不思議に思ったことはありませんか? 骨におけるX線減衰の最も重要な因子はカルシウムで、その原子番号は20、造影剤中のヨードの原子番号は53です。3乗すると、カルシウムに対するヨードの減衰の比は8000:148877、つまりカルシウムの約20倍なのです。

(厳密に言うと、X線がヒトの体内など、さまざまな元素からなる物体を透過する場合、減衰はそれらの元素の原子番号の平均によって規定されます)

なぜヨードが選ばれたのか?

ヨードがX線造影剤に適している理由はいくつかあります。

  • ベンゼン環への結合がきわめて強固で安定している。
  • 原子番号がかなり大きいので、X線をよく減衰させる。

さらにヨードには、放射線減衰について他の多くの物質より優れたものにしている、とても興味深い特性があるのです。

放射線診療に携わる人なら、高エネルギーのX線は透過力が強いことを知っているでしょう。エネルギーがあまり高くない放射線は完全に吸収されてしまうこともありますが、高エネルギーのX線は大きな減衰もなく、固い物質を透過することができます。つまりX線の強さ(放射線の発生に使われた電圧のkVで表される)と透過(または減衰)には関係があります。

X線がどれくらい水に吸収されるのかをグラフにすると図7のようになります。

同じ実験を今度は水ではなくヨード含有造影剤を用いて行うと、グラフは違う形になります。面白いことに放射線減衰を描く曲線は、前の曲線と平行ではなく、途中で尖ったピークができ、そこでは放射線吸収が突然強く現れています。

言い換えるとX線は、放射線のある強さ(kVで測定)の時、水を用いた実験から推測されるよりもはるかによく、ヨードに吸収されるということです。ヨードにおけるこの吸収のピークは、いわゆる「K端」(K吸収端)で起こります。

少し詳しく説明しましょう。

図7でX軸がkVではなくkeV、つまり有効kVとなっていることに、皆さんは気付いたでしょうか? 念のために言うと、X線管で発生させたX線の強さは単一のレベルではなく、幅広いスペクトルからなります。kVの値は放射線の強さの最大値を示すだけです。スペクトル全体の特徴を説明するにはkeV、有効エネルギーという用語を使うのです。

図7.水と造影剤によるX線の吸収
造影剤の曲線では、K端(約34keV)で造影剤中のヨードに
よる吸収のため著しい上昇を示している。

なぜヨードが選ばれたのか?

興味がある方のために説明すると、X線の有効エネルギーとは、物質中で実際のX線と同じ減衰を受ける単一エネルギービームのエネルギーのことを言います。

「K端」という用語は、吸収ピークはK殻にある電子のヨード電子との相互作用によるという事実に由来しています。ある特定のエネルギーの放射線では、これらの電子との相互作用は他のエネルギーの放射線よりも強いのです。

これを表現するために、放射線がいくつかの小さなボールで、ある一定のスピードでサッカーゴールにシュートされたと想像してください。これらのボールが(それぞれのボールのエネルギーに従って)「適切な」大きさであれば、それらのエネルギーは吸収されます。すなわち、ゴールキーパーによって上手くキャッチされます。ボールがサッカーボールのサイズより大きかったり小さかったりしたら―例えば、ゴルフボールやカボチャの大きさだったとしたら、キャッチするのは難しく、効果的に吸収できません。

なぜヨードが選ばれたのか?

最も効果的に吸収されるのは、約34keVのエネルギーのX線の吸収です(K殻中の電子の結合エネルギーもおよそ34keVです)。面白いことに、この34keVというのは、放射線医学で使われる光子エネルギーのほぼ平均値で、これはヨードが特に放射線のコントラストを提供するのに適していることを示しています!

あと少し波についての情報を

放射線の減衰は放射線の波長と周波数にも依存します。そしてこの2つは逆相関しますが、「周波数が高ければ高いほど、減衰は少ない」という理屈にはなりません。もしその理屈どおりだとすれば、グラフは直線になるはずです。しかし、話はもっとずっと複雑で、図7にあるように、得られたのは直線ではなく曲線で、しかもヨードの曲線にはさっき話したとおりK端のところに減衰のピークまであります。

基本的に、放射線の減衰は放射線の波長の3乗と相関します。別の見方をすると、周波数(つまり放射線のエネルギー)の3乗に逆相関するので、エネルギーを2倍にすると、減衰はたったの1/8になってしまうのです。