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Everything about X-ray Contrast Media

副作用についてもう少し

X線造影剤に求められる唯一の作用はX線の減衰です。それ以外はすべて副作用あるいは薬物有害反応とみるべきです。これまでに説明したもろもろの臓器や器官系に対する造影剤の作用は、結局すべて副作用なのです。

すでに指摘したように、これらは電荷や浸透圧によって起こります。でも、まだ他にもいくつか関連因子がありますが、それについては後述します。浸透圧はかなり大きな意味を持っているので、ここでもう一度確認しておきましょう。

浸透圧

科学的に言うと、造影剤毎に異なる結合と水和作用を持っている可能性があります。同じ種類の造影剤のヨード濃度は同等であると推定されるにも関わらず、異なる浸透圧を持つのはそのためです。

重要なことは、新しい造影剤の多くが低浸透圧。一方で、これは相対的なものだということです。浸透圧の低い造影剤でも、血漿の浸透圧(約300mOsm/kg)の約2倍以上あります。

すでに述べたように、造影剤注入時の熱感や痛みも造影剤の浸透圧に依存します。一般的に次のことが言えます。

造影剤は

  • 浸透圧が1000mOsm/kgを超えるとたいてい注入時に強い痛みを伴う。
  • 浸透圧が600mOsm/kg未満なら痛みは軽度である。

血管内皮の損傷も(予想どおり)浸透圧に依存します。浸透圧が高いと損傷はひどくなり、血栓が形成されることもあります。このため高浸透圧イオン性造影剤を用いた末梢静脈造影では、およそ3分の1の患者で検査の合併症として急性深部静脈血栓症を発症すると言われています。

低浸透圧造影剤を用いると静脈造影後の血栓症は1%未満に低下します。

化学毒性

造影剤は浸透圧や電荷だけでなく、単にその化学構造からも副作用を招く可能性があります。この内因性毒性は個々の造影剤により異なり、化学毒性と呼ばれることもあります。

この化学毒性はそれ自体、さまざまな別の因子と関係しており、それら内因性の化学毒性について詳しく見てみましょう。

蛋白結合

造影剤の副作用には蛋白結合の程度も関与します。蛋白結合度が高いと、副作用の頻度も高いのです。なぜでしょう?

たぶん皆さんは覚えていると思いますが、体内に存在する多くの酵素は蛋白質で、造影剤がこの蛋白質に結合すると、その機能が抑制されます。例としてアセチルコリンエステラーゼという酵素を取り上げてみましょう。この酵素は水溶性造影剤によって阻害されます。そうすると、重要な神経伝達物質であるアセチルコリンが速やかに分解されなくなり、アセチルコリンの作用が持続します。いわゆるコリン作動性の効果が強くなり、発汗、気管支攣縮、徐脈、低血圧、嘔吐や消化管運動亢進などの症状が現れます。

蛋白質は血液凝固にも関与しているので、造影剤はこれにも作用し、凝固能に影響を与えます。この凝固阻害作用は、忍容性において劣るイオン性造影剤の方が強く現れ、非イオン性造影剤ではあまり強くありません。

造影剤の蛋白結合はLD50(実験動物の50%が急性死亡する量)と相関すると言われています。蛋白結合度が高ければ高いほど生体への作用が増し、毒性が強くなるのですが、これはイオン性造影剤にしか当てはまりません。この古典的な実験はすでに行われなくなっていて、イオトロランのようにきわめて忍容性に優れた造影剤では、かなり大量に注入しても急性死亡に至らず、LD50を決定することは困難です。

親水性か脂溶性か

コップ1杯の水かヒマシ油か――副作用があまり起こらないのはどちらだと思いますか? もちろん水です。少し大ざっぱな見方ですが、造影剤の基本的な規則を思い出しましたか?
◦親水性が高いほど副作用が少ない
◦脂溶性が高いほど副作用が多い

簡単に説明しましょう。細胞膜は蛋白質と脂質の層からなり、サンドウィッチのような構造です。脂質は細胞の壁の構成要素なので、脂溶性の物質が細胞膜に付着して細胞膜の内部に潜り込み、細胞膜を突き抜けて、細胞内に入り、そこでさまざまな作用を起こしても不思議ではありません。このような脂溶性物質が細胞壁内や細胞内に侵入すると多くの障害の原因となりえます。

親水性か脂溶性か

脂溶性が高くなればなるほど、物質は細胞の壁を簡単に通り抜けて細胞の中に入りやすくなり――これはすでに見てきたように、血液脳関門などの特殊な細胞の壁にも当てはまります。このため脂溶性物質の方が血液脳関門を容易に通り抜けることができるのです(例えばアルコールとか)。なぜ脂溶性造影剤の方が神経毒性が強いのかは、これで説明できます。

反対に親水性を高めれば造影剤の忍容性は改善されます。

現代の尿路あるいは血管造影剤は、水溶性および親水性が非常に高くなっています。どうすればこれができるのかについては、後で触れます(「2番には?」参照)。

残念ながら、副作用の発現のすべてを説明できる単一の理論はまだありません。

浸透圧、電荷、化学毒性などによって引き起こされる副作用は投与量や注入速度に依存します。例えば高浸透性造影剤が非常にゆっくり血流に注入された場合、それは急速に希釈され、浸透圧に関連する影響は少なくなるか、消失する可能性があります。

さらに、これらの副作用以外に、用量に依存しない、全く異なるメカニズムの結果として生じる有害反応があります。これらの有害反応については後ほど詳しく説明します(「その他の重要な副作用について、あと少し―用量が関係ない場合」参照)。

復 習


造影剤の副作用はさまざまなメカニズムで起こります。それらの中にはすでに知られているものも多くありますが、まだ知られていないものもあります。
時間をかけて解明された影響因子には以下のものがあります。

  • 造影剤の電荷(非イオン性造影剤がイオン性造影剤より忍容性に優れている理由)
  • 浸透圧、蛋白結合、脂溶性:これらすべてが高まると副作用の頻度と程度が高くなる。
  • 親水性:これは副作用を弱める。

1つの要因だけではなく、複数の要因が関連しており、容易にまとめられるものではありません。親水性にわずかな違いがあっても、化学毒性など他のパラメータの違いによって相殺され、臨床的には差がない可能性もあります。