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気分転換に少し臨床的な話を

水溶性の造影剤は腎臓を通って排泄されるため、腎臓に対する影響から始めましょう。

造影剤と腎臓

生理学の講義を覚えているかもしれませんが、正常な腎では毎日およそ180リットルの血液が濾過されています。これは腎の機能的単位であるネフロンによって行われますが、健康な左右の腎にはそれぞれおよそ100万個のネフロンが存在します。

糸球体はいわばネフロンのスタートラインですが、ある程度以上の大きさの粒子を逃さないようにするフィルターの役目をします。血液細胞やある分子量以上の物質は、糸球体を通って尿細管に入ることはなく、血液中に残ります。これに対してもっと小さな分子や体液は、糸球体を通って濾過され、ここからつながっている尿細管に入ります。この過程はコーヒーに熱湯を注ぐのにちょっと似ています。コーヒーの粉(やや大きな粒子の粉)はフィルターを通らずに残りますが、かなり小さい粒子(味覚成分など)は通り抜けていきます。

糸球体で濾過されたいわゆる原尿は、引き続き尿細管を通り、水の再吸収によって約1.5~2リットルの尿へと濃縮されます。

水だけでなく、他の重要な物質も尿細管で再吸収されます。この再吸収のメカニズムにより、体内で産生された必要な物質が回収されます。造影剤は体内で産生された物質ではないので、再吸収されず、尿の中に残ります。原尿から再吸収される物質は、もちろん乾燥した粒子や粉末として回収されるのではなく、溶けた形で回収されます。つまり、一定の量(その浸透圧活性によって決まる)の水とともに回収されます。原尿の中に残った物質(造影剤など)は、尿から水が再吸収されることで、次第に濃縮されていきます。

どんどん濃縮されていくので、造影剤は腎を通過する過程で次第に目に見えるようになり、最終的に腎盂腎杯システムに到達する頃には非常に濃度が高くなり、通常のX線で、例えば静脈性尿路造影では収集システムである尿管と膀胱の輪郭が確認できるようになります。

造影剤の分子も乾燥粉末として存在するのではなく、溶液中にあるということ、すなわちそれらの分子もまた一定量の水に溶けていることを認識することが肝心です(言ってみれば、溶液中に残存しようとして)。造影剤と結合して、ある程度の分量の液体になります。この追加の水分は造影剤とともに残留し、そして尿から再吸収されることはないため、造影剤投与後に尿量は増加することになります。そしてこれにより、いわゆる「浸透圧利尿」が生じます。

復 習


造影剤は糸球体濾過によって排泄されます。正常な状態では腎による造影剤の能動分泌も再吸収も起こりません。
腎盂に至る途中で尿は水分の吸収によって濃縮されます。水が再吸収されると尿中に残った物質の濃度が上昇します。「腎臓に流れ込んだ」造影剤は濃縮されるにつれてX線像でよく見えるようになります。造影剤自体も水に溶けているので、造影剤自体もある程度水分を運ぶため、浸透圧利尿薬のような作用を示します(だから造影剤を注射されると、すぐトイレに行きたくなることが多いのです)。

心臓に対する作用

造影剤は心臓に対してどのような作用をするのでしょうか? 造影剤は心臓にさまざまな影響を及ぼし、心機能を低下させることもあれば、心リズム障害を起こすこともあります。

まず心臓に対する作用を見てみましょう。重要なものとして、

  • 刺激の生成と伝導系(いわゆる電流の発生や伝導)
  • 心筋のポンプ機能への作用が挙げられます。

刺激電導系に対する作用

電流(電流は移動する荷電粒子のことです)の発生と伝導は正常な心機能を保つために不可欠です。このことは心電図(ECG)からもわかります。また、この電流はきわめて弱いので、影響を受けやすいことは容易に想像がつきます。例えば、イオン性造影剤を注入する場合、電荷を付加することになって障害が起こるかもしれません。イオン性造影剤注入後の不整脈もこのことから説明できるでしょう。非イオン性造影剤は電荷を持っていないので、(電流)伝導に対する影響は少ないのです(「心リズムと心電図はどう変化するか?」も参照)。

ポンプ機能への影響はどう説明できるか?

すべての筋活動にカルシウムイオン(Ca2+)が関与していることを覚えていますか?イオン性造影剤を注入すると、負の電荷を帯びた造影剤陰イオン(ヨードを運ぶ方ですね。覚えていますか?)を運び込んだことになり、これが正の電荷を帯びたカルシウムイオンと結合します。その結果、利用可能なカルシウムイオンの総量が少なくなり、ポンプ機能が低下し、これが心収縮能の低下として描出されます(覚えていると思いますが、心筋収縮能は心室内圧の経時的変化に同調し、数学的にはdp/dtで表されます。心筋の収縮による心室内圧の上昇が速ければ、収縮能は良好ということです)。

興味深いことに、造影剤溶液は造影剤自体以外に、いくつか他の物質も含んでいます。例えば安定化や緩衝のための添加物を含んでいることにも、ここでちょっと触れておきます。これらの物質の中にはカルシウムと結合するものもあるのですが、この話をすると細かくなりすぎるので止めておきましょう。

収縮能や心機能の低下に加えて、造影剤は異なるメカニズムによって心臓に余計な負荷を与えることになります。これはイオン性造影剤では容易に説明できます。高浸透圧の造影剤50mLを経カテーテル的に肺動脈へ注入すると、体内では直ちにこの濃縮液を希釈しようとします。そのため水がさまざまな場所から血管内へ流入してきます。例えば血管外間質や血管内、特に赤血球と内皮細胞からも流入してくるのです。

この水の流入は非常に速く、数秒で起こります。その量がまたすごいのです。例えば血液の5倍の浸透圧を持つ造影剤を投与すると、これを希釈するために、注入した液体量の4倍以上が血液循環に入ることになります。ということは、心臓は注入された50mLに対して、突如として、さらに余分に200mLを拍出しなければならないのです。健康な人ではほとんど何の問題もありませんが、心臓に障害があったり、心臓がすでにかなりの負荷を受けていたりすると、さらに大変な負担となり、いわゆる急性の容積負荷で心不全を起こすかもしれません。

(容積負荷は末梢血管拡張によっても起こります。末梢血管拡張により血圧が低下し、同時に単位時間あたり供給される血流量が代償的に増加します。でも、これは今覚える必要はありません。「心血管系への作用―今度は詳しく」でまた触れますから)

しかし心臓への負荷は、肺循環を通じて供給される追加の血流量だけが原因ではありません。前にも述べたように、造影剤を希釈するために入ってくる水は赤血球からもやってきます。そして赤血球(図6a)が水分を失うとどうなるかは、図6bに示してあります。元の形は見る影もなく、美しさと弾力性が失われ、でこぼこした状態となってしまいます。この変形した赤血球が、滑らかな丸い赤血球のようには簡単に毛細血管を通り抜けられないことは、容易に想像がつくでしょう。心臓は肺循環を介して血液を供給するために、より強い圧力を必要とします。先に述べた容積負荷に加えて、こうして新たに圧負荷がかかるのです(これについては、造影剤自体がかなりネバネバしていて粘性の高い物質であるという事実も、原因の一部となります)。

こうした影響をすべて考えると、低浸透圧の非イオン性造影剤の方が忍容性においてイオン性造影剤よりも優れている理由は、すぐわかりますよね?

図6.a:正常な赤血球、b:高張液中の赤血球

ポンプ機能への影響はどう説明できるか?

復 習


造影剤を注入すると心臓とその機能にさまざまな作用があり、刺激伝導系や心筋細胞も影響を受けます。心筋収縮力と心リズムが変化し、圧負荷と容積負荷も増大します。ここに挙げた影響はすべて、イオン性造影剤を注入した場合の方がかなり強く現れます。

血管に対してどんな影響を及ぼすか?

造影剤は通常、血管の中には存在しません。ですから造影剤が血管の中に入ると、内皮細胞を刺激することは容易に想像できます。内皮細胞は造影剤分子自体(その化学毒性)、また浸透圧の影響によって傷害を受けます。前にも述べたように、高浸透圧造影剤は水分を血管内へ流入させる作用があり、その水分の一部は内皮細胞由来です。それで内皮細胞の収縮や、場合によっては傷害も起こります。造影剤の浸透圧が高いほど、その作用も強いのです。

これは造影検査の際にイオン性高浸透圧造影剤を使用すると、患者は大抵強い熱感や、時々見られる痛みの感覚さえ訴えます。これは造影剤の浸透圧に直接関連しています(上記に説明したとおり)。つまり造影剤の浸透圧が高くなると、検査時の痛みや不快感が強く、そのため患者はつい動いてしまい、これが検査に悪影響を及ぼします。例えばデジタルサブトラクション血管造影(DSA)では、ほんのちょっとした動きでも検査の質が落ちてしまいます。

皆さんの中で、高浸透圧造影剤による血管造影検査を受けた経験のある人は、造影剤注入後に手足が赤くなったことを覚えているでしょう。これは造影剤による末梢血管拡張の結果で、その程度は造影剤の浸透圧に依存します。

こうした末梢血管拡張は手足が赤くなるだけでなく、血圧の低下にもつながり、それがまた心臓の単位時間あたりの拍出量を代償的に増加させ、心臓の容積負荷はさらに大きくなるのです。

造影剤が問題を起こすのは動脈内投与だけでなく、静脈内へ投与した場合、例えば下肢の静脈造影でも起こります。その場合、注入された造影剤はきわめてゆっくり流れるので、高濃度の造影剤がかなり長い時間、内皮細胞に作用することになります。造影剤の刺激が強く、また浸透圧の高い造影剤は内皮に損傷をもたらし、血栓症を招く可能性があります。内皮細胞の損傷は化学毒性と浸透圧に依存しますが、両方とも非イオン性造影剤の方が低いため、導入後は静脈造影の造影剤として非イオン性造影剤が選択されるようになりました。

復 習


造影剤は浸透圧と化学毒性に依存した作用を動脈や静脈に及ぼします。動脈内投与すると、末梢血管拡張が起こることがあります。これは造影剤の浸透圧が上昇すると顕著になり、痛みの発生にも直接関与しているかもしれません。
末梢血管拡張に伴う血圧低下を抑えるため、心臓の単位時間あたりの拍出量が増加します。
造影剤の動脈内投与でも静脈内投与でも、内皮細胞の傷害が起こります。静脈は血流が遅く、投与された造影剤が希釈されにくいため、静脈造影による内皮細胞の傷害は動脈内投与よりも強く現れます。造影剤が内皮細胞に作用する時間が長ければ長いほど、与える影響も大きいからです。

造影剤と脳、脊髄

脳と脊髄はとても繊細でデリケートな構造であり、正常に機能するためには安定した化学的および電気的な環境が必要です。そのような環境の維持には脳脊髄液(CSF)と血液脳関門(BBB)が関与しています。BBBは脳細胞に入り込んでくる物質を制御しています。

正常な状態でも脳に入り込んでくるアルコールとは対照的に、造影剤はBBBに障害がなければ脳の中に入ることはありません。つまり遮断されるわけです(注意:脳のいくつかの部位にはBBBが存在しません。「造影剤の投与はなぜ悪心や嘔吐を引き起こすのか?」の「質問と回答」の14を参照)。

ただし腫瘍や炎症などがある場合、BBBは傷害されていて、造影剤は血管から直接脳細胞にたどりつく可能性があります。そうなると神経細胞の環境に何らかの化学的変化が生じるので、問題が生じることが考えられます。

イオン性造影剤の分子が入り込むと、造影剤分子の電荷のため、また別の問題が起こる可能性もあります。刺激の伝導は電気的信号であり、したがって脳波検査(EEG)で記録されますが、電荷による影響も受けます。その結果、痙攣や見当識障害などが起こるのです。

非イオン性造影剤を使うと、神経細胞の周囲の化学的環境が変化するかもしれませんが、神経細胞の中の電気的信号は変化しないので、BBBに障害がある時に非イオン性造影剤を投与しても副作用はあまり起こりません。したがって、-COOH基(カルボン酸基)を排除することで、神経毒性を減らすことができます。覚えていますか?覚えていない場合は、「血管に対してどんな影響を及ぼすか?」に戻ってください。

脊髄造影でも基本的に同じ考え方が当てはまりますが、高濃度の造影剤は直接髄液の中に、つまり神経細胞の環境の中に入るので、その影響ははるかに大きくなります。したがって、特に脊髄造影では、忍容性に優れた造影剤を使用することが重要です。この場合に最も忍容性に優れているのは、予想どおり、非イオン性ダイマー型のイオトロランです。

造影剤が脳に到達すると(障害のあるBBBを経由してか、あるいは脊髄造影でCSFを介して直接)、さらに新たな影響を与えます。脳では通常、少量のCSFが産生され、これは脳の表面に向かってゆっくりと流れてゆき、その途中でさまざまな物質を取り込みます。例えば排泄される何らかの老廃物です。造影剤が脳に入り込むと、脳のCSF産生は抑制され、老廃物の排泄が上手くいかなくなり、蓄積されて問題を引き起こす可能性があります。

復 習


造影剤は正常な血液脳関門を通過しません。この関門を越えてしまうと(または脊髄造影で脳/脊髄のすぐ近くに注入されると)、痙攣などの問題を引き起こすことがあります。このような問題は、電荷を持たず化学毒性も低い非イオン性造影剤では、神経細胞や脳細胞の「電気的環境」に変化を与えないため、イオン性造影剤に比べて程度も頻度も低いです(このような理由もあり、脊髄造影でイオン性造影剤は使われません)。

造影剤と甲状腺

甲状腺も造影剤の影響を受けることがあります。造影剤を使う検査では造影剤とともに相当量のヨードを注入します―ヨードはコントラストを与える薬品であることを思い出してください。ご参考までに申しますと、1mLあたり300mgのヨードを含有する造影剤の場合、10mLでは3g、100mLでは30gのヨードを含有しているわけです。

体内には15~30mgのヨードが存在し、推奨されているヨードの1日摂取量が150~300μgということを考えると、これは本当に相当な量です。

幸いなことに、造影剤中のヨードはベンゼン環にきわめて強く結合しているので、生体の代謝には利用できません。造影剤の中には遊離ヨードは不純物としても含有されていません(遊離ヨード、ヨード成分は褐色がかった紫色で識別される)。

しかし、すべての造影剤には代謝的に活性となりうる造影剤分子に結合していない、イオン型ヨードが含まれています。つまりヨウ化物(I)です。ヨウ化物を全く含まない造影剤を製造することは技術的に不可能なのです。製造直後の最大濃度は75μg/mL未満でなければならず、保存中に上昇するため非イオン性造影剤では通常10μg/mL未満です。

それどころか、体内では酵素の働きによって造影剤分子からきわめて微量ですがヨウ化物が解離します(造影剤として投与されたヨードのうち有機的に結合したヨードの0.01%程度であり、造影剤投与あたり3~10mgとなります)。

正常な甲状腺であればヨウ化物による多少の負荷がかかっても、大きな問題にはなりません。造影剤投与後、ホルモンの生成が低下しますが、数日で回復します。甲状腺の機能に障害がある場合は、問題が起こる可能性があります。

ホルモン低下から回復せず、甲状腺機能低下症になることもありますが、これは特に小児で重要です。

成人の場合、最も重要な影響は甲状腺機能亢進症が引き起こされることです。これは、どのようにして起きるのでしょうか。

多くの甲状腺、特に結節性甲状腺腫では、いくつかの自律細胞が存在します。これらは甲状腺ホルモンに関するある種の「闇取引」を営んでいて、甲状腺機能の調節が行われません。これらの細胞がヨウ化物を捕まえると、甲状腺ホルモンを(このホルモンが必要かどうかということに関係なく)産生することによって、それを処理します。

自律細胞の数が少なければ、残りの甲状腺が自らの正常なホルモン産生を抑制することによって、余分なホルモン産生を代償するでしょう。しかし、自律細胞の数が多すぎると、制御ができなくなり、甲状腺機能亢進に至ります。ホルモン産生にはしばらく時間がかかるため、こうした甲状腺機能亢進の臨床像は造影剤投与から数週間後に発見されることが多いのです。

すでに述べたように、ヨウ化物の解離がこの問題の原因です。このヨウ化物の解離は造影剤が長時間体内にとどまった場合の方が顕著であることは、容易に想像がつくでしょう。それで、そういう造影剤(特に化学塞栓療法でも使われている油性リンパ造影剤など)の方が甲状腺の問題を引き起こしやすいのです。

訳者注:「重篤な甲状腺疾患を有する患者」は、ヨード造影剤の禁忌に該当するため、基本的に造影剤の使用を回避します。

復 習


造影剤中のヨードはきわめて強く造影剤分子に結合していますが、それでも造影剤は甲状腺とその機能に影響を及ぼします。造影剤はごくわずかのヨウ化物(I)を含んでいるし、また生体内では造影剤分子から酵素の働きにより微量のヨウ化物が解離するからです。
甲状腺内に自律細胞が存在していると、このヨウ化物はその甲状腺細胞によって取り込まれ、ホルモン産生が亢進します。このホルモン産生亢進は、甲状腺の正常な部分でホルモン産生が抑制されることにより、ある程度バランスがとられています。
しかし、ある水準を超えると、甲状腺機能亢進症の徴候が現れます。
予防方法はありますが、それについては後ほど説明します―他の副作用に戻りましょう。