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もうちょっと化学を

イオンがなぜそんなに重要なのか?

それは、陽イオンと陰イオン、つまり電気を帯びた荷電粒子が問題を引き起こすからです。電荷を持った物質を体内に注入すると、この電荷が電気的に作用します、つまり体内で他の電気的なプロセスにも影響する可能性があることが容易に想像できますよね(これについては「刺激電導系に対する作用」でまた触れます)。

造影剤分子が溶液中で2つの粒子に解離するという事実もまた厄介です。なぜなら造影剤の副作用の多くは溶けた粒子の数に依存するからです。大雑把に言えば、ある特定の造影剤は、粒子の数が多ければ多いほど副作用が強くなるのです(これは個人的な経験からもよくわかります。虫歯ができた時、砂糖を入れた紅茶やコーヒーを飲んでも痛くなかったでしょう。しかし砂糖の濃度が高いチョコレートをかじると結構痛かったはずです。濃度が関係するのです!)。

イオンがなぜそんなに重要なのか?

浸透圧とは溶液中に粒子がどれだけ入っているかということを示します(「容積浸透圧か重量浸透圧か―何が違う?」参照)。単位容積あたりの粒子数が多い時、溶液の浸透圧が高いと言います。また、今述べた個人的経験からもわかるように、浸透圧が高ければ高いほど副作用は強くなり、逆に浸透圧を下げられれば副作用を抑えられるのです。

浸透圧と電荷の問題、その解決

造影剤の注入に伴う副作用は造影剤の電荷と高浸透圧が原因ではないかと、頭の良い放射線科医が気付くまでに、ずいぶん長い時間がかかりました。

ここから当然、高い浸透圧と電荷の問題をどのように減らすか、または取り除くことができるかという展開に至ったわけです。もちろん、造影剤分子の数を減らすだけでもそれは可能です。しかし、そうするとヨード原子の数も減らしてしまうことになり、結果的にコントラストが弱くなってしまいます。コントラストを出すためにはヨード濃度をかなり高くしなければならないので、これは正解とは言えません。

つまり問題は、ヨード原子の数を減らさずに、溶液中の粒子の数を減らすことにあります。これには基本的に2つの解決法があります。

最初の解決法は、図4bに示すように、ダイマー型造影剤を作ることです。モノマー型とは対照的に、このようなダイマー型にはベンゼン環が2個、結合しています。

図4aを見てください。図4aに示されているように、造影剤の各分子はベンゼン環に3個のヨードを持ち、溶液中に2個の粒子があります(ナトリウム塩で示されるように)。ヨード原子の粒子に対する比が3:2であることを示しています。すなわち、3個のヨード粒子の造影効果が溶液中で2個の粒子で得られるということを意味します。

(図4a、bイオン性モノマー型(a)およびイオン性ダイマー型(b)造影剤:ダイマー型では2つのベンゼン環が結合している。)

図4.イオン性モノマー型造影剤(a)とイオン性ダイマー型造影剤 (b):ダイマー型は2個のベンゼン環が互いに結合している。

浸透圧と電荷の問題、その解決

図4bで示されているダイマー型物質では、ヨードを携えたベンゼン環2個が橋で結ばれています。そのベンゼン環のうち1個だけが塩を形成するカルボキシル基を持っており、このカルボキシル基は造影剤塩を形成するのに使われ、十分な水溶性が確実に得られます(忘れてしまっている場合は「もう一つのアプローチ?」を参照のこと)。このようなダイマー型造影剤塩を溶解すると、溶液中の粒子の数は相変わらず2個ですが、ヨード原子と粒子の比は6:2になります。つまり、粒子は2個ですが、ヨード原子の数は2倍です。あるいは別の言い方をすれば、同じ数のヨード原子を得るのに、溶液中の粒子の数は半分ですむことになります。

その結果、そのような造影剤は同量のヨードを持つ一方で浸透圧が低くなります。

ヨード濃度が同じで浸透圧関連の副作用が少なくなることが期待できるわけです。このように低い浸透圧の造影剤は(高い浸透圧を持つ「当初の」イオン性造影剤と比較して)低浸透圧性造影剤と呼ばれることもあります。

このタイプのダイマー型造影剤を作るというのは良いアイデアでした。しかしいくつかの欠点もありました。例えばダイマー型造影剤分子の大きさです。モノマー型造影剤分子より大きいため、造影剤溶液の粘稠度は高くなります。そのため細いチューブやカテーテルを用いて投与するのにより大きな力が必要になります。2つ目の欠点は、これは所詮イオン性造影剤であり、溶液中で陽イオンと陰イオンに分離するということです。そのため、まだ電荷があり、それに関連する問題が存在します。

造影剤溶液中の分子数を減らすためには、別の方法が良いことがわかりました。それは、酸基、すなわち塩を形成する基を取り除き、別の置換基、すなわち「他の化学物質」と入れ替えるという考えです(図5を参照)。

これは言うは易く行うは難しで、塩を形成する基の代わりとなる別の置換基も十分な水溶性を確実に得られるようなものでなければなりません。このような置換基を見つけるのに長い時間を費やしてやっと成果が得られました。そして溶液中でイオンに電離することのない造影剤ができあがりました。そのためこれは非イオン性造影剤と呼ばれています。非イオン性造影剤にはイオヘキソール、イオパミドール、イオプロミドなどがあります。

図5.イオン性モノマー型造影剤(a)の高浸透圧は非イオン性モノマー型造影剤(b)の開発により緩和された。非イオン性ダイマー型造影剤(c)はそれよりもさらに浸透圧が低い。

浸透圧と電荷の問題、その解決

図5bに示したように、この物質のヨード原子と粒子の数の比は3:1です。イオン性モノマー型造影剤と比較して、ヨード含量が同じであっても浸透圧は低くなります(注:これは上で示したイオン性ダイマー型造影剤でも同じことが言えます)。

この非イオン性造影剤は、浸透圧が低いという利点に加えて、イオン性造影剤で生じるいくつかの副作用の原因となる電荷を持たないという利点もあるのです。

今日までに、非イオン性造影剤の方がイオン性造影剤よりも忍容性がかなり高く、副作用も少ないことが証明されてきました。文献には多くの統計データが載っています。しかし覚えやすいようにおおまかな目安としてお伝えすると、高浸透圧造影剤では10%以上に急性の副作用があったのが、1%以下まで下がりました(あるいは覚えやすいようなら、「有害反応の発生率は80%以上減少する」と覚えてもよいでしょう)。

ここで、浸透圧と電荷は全く異なる問題であるという点を再確認することが重要です。上記のダイマー型のイオン性造影剤(イオキサグル酸)は浸透圧の低い造影剤、いわゆる低浸透圧造影剤(LOCM)です。しかし、これはまだイオン性造影剤ですよね。「低浸透圧造影剤」というだけでは、イオン性物質も非イオン性物質も含まれてしまいます。

一方で、非イオン性造影剤といえば、低浸透圧で、電荷やそれに伴う問題がないという利点を持った造影剤を扱っていることを意味します。

しかし造影剤の研究は、単に非イオン性造影剤の開発で終わってしまったわけではありません。なぜなら、イオン性造影剤より忍容性がかなり高いものの、非イオン性造影剤は血液よりもまだ浸透圧が高く、多くはないものの、まだいくつかの副作用があるからです。上記の開発の成果を組み合わせて、イオトロラン(図5c)やイオジキサノールのような非イオン性ダイマー型造影剤を合成することで、浸透圧をさらに低下させることができました。ヨードと粒子の数の比が6:1になり、同じヨード濃度でさらに浸透圧が低くなりました。より大きな分子により、ダイマー型造影剤溶液の粘稠度は増加します。すなわち、同等のヨード濃度では非イオン性モノマー型造影剤の約2倍の粘稠度があります。

低浸透圧のため、予想していたとおり、モノマー型より非イオン性ダイマー型の方が急性の浸透圧関連副作用が観察される頻度は低くなりました。しかし、その他には期待された改善は実現しませんでした。さらに、モノマー型と比較して、非イオン性ダイマー型は血管内投与後、遅発性の副作用がより頻繁に生じることが判明しました(下記参照。「容積浸透圧か重量浸透圧か―何が違う?」)。これらすべてのことおよび複雑な合成による高費用を考慮に入れると、非イオン性ダイマー型造影剤の血管内投与があまり受け入れられなかったのも理解できます―モノマー型は既に極めて良好な忍容性を示しているわけですから!

浸透圧と電荷だけが副作用に影響を与えるパラメータではありません。造影剤分子自体の化学成分もある程度の影響を与えますが、これは造影剤の化学毒性の結果とされています。これについては後ほど詳しく見ていきます。

復 習


イオン性造影剤は浸透圧が高く(虫歯のことを覚えていますか?)、電荷も持っており、その両方が好ましくない副作用を引き起こします。
浸透圧は異なる方法で下げることができます。まず、イオン性造影剤分子に別のヨードを携えたベンゼン環を連結させ、イオン性ダイマー型のイオキサグル酸を作りました。これで浸透圧は低くなりましたが、まだ電荷を持っています。もう一つは、酸基を別の化合物で置き換える方法です。これは電離してイオンになることもなく造影剤分子として十分な溶解度があります。これら2つのプロセスを結び付けることにより、さらに浸透圧を下げた非イオン性ダイマー型造影剤ができましたが、あまり受け入れられませんでした。

容積浸透圧か重量浸透圧か―何が違う?

ところで、「浸透圧」という言葉を何度も使いましたが、これは正確に言うと「重量浸透圧osmolality」です。なぜ、より一般的な「容積浸透圧osmolarity」を使わないのでしょうか? これを理解していただくには、少し詳しく説明する必要があります。溶液中の粒子の数(分子、イオン)はさまざまな方法で表すことができます。化学の授業で「容積浸透圧」という言葉を習ったことを覚えていますか? 1モル濃度(molar:M)の溶液は1リットルあたり1モル(粒子数にして約6×1023個)の溶質を含みます。造影剤で言うと、1リットルの造影剤溶液中に1モルの造影剤粒子が含まれることになります。

水1リットルに含まれる水の分子の数は温度によって異なるので、容積浸透圧は温度の影響を受けます(1リットルの水蒸気を思い浮かべてみてください)。そのため、容積浸透圧ではなく重量浸透圧が使われるのです。1重量モル濃度(molal)の溶液は水1kgあたり1モルの粒子を含みます。kgはkgであり、より厳密と言えます(もし皆さんが1kgの体重超過なら、世界中のどこで測っても、温度に関係なく同じ1kgの超過です)。

面白いことに、重量浸透圧を測定してみると、理論的に予測できる値とは違って、実際には予測より低い値になるかもしれません。なぜでしょう? いくつかの分子が互いに緩やかに結合し、浸透圧を規定する粒子の数が減少する場合があるからです。造影剤塩の場合、完全には電離しないことも考えられます。そのため、重量浸透圧はある程度までは推測できますが、より精度を高めるためには実測する必要があるのです。

実際には、重量浸透圧と容積浸透圧は多くの場合、同じ意味で使われています。正確な使われ方ではないのですが(幸いなことに、とても薄い溶液では両者がほぼ等しくなります)。(訳者注:これ以降、重量浸透圧を単に浸透圧と表記します)

「高い」浸透圧とは?

造影剤の浸透圧はもちろん、その濃度によって決まりますが、造影剤の種類によっても違います。この濃度は、コントラストの原因がヨードであることから、通常、溶液中のヨード量(mg/mL)で表されます。ヨードが多ければコントラストが強く、ヨードが少なければコントラストが弱いということです。

使用されている代表的な造影剤濃度は、ヨード濃度300mg/mLです。同じタイプの造影剤、つまりイオン性モノマー型どうし、非イオン性モノマー型どうし、非イオン性ダイマー型どうしで見ると、基本的にはヨード含量が多いほど浸透圧は高くなります。

参考までに、造影剤中のヨード濃度が300mg/mLだとすると、イオン性モノマー型のアミドトリゾ酸の浸透圧は約1570mOsm/kgです。これは血液の浸透圧である約300(270~320)mOsm/kgの5倍以上です。このタイプの造影剤は、高浸透圧造影剤(HOCM)と呼ばれます。

非イオン性モノマー型(イオプロミド、イオヘキソールまたはイオパミドール)の浸透圧は約600mOsm/kgで、低浸透圧造影剤(LOCM)と呼ばれます。

非イオン性ダイマー型(イオトロラン、イオジキサノール)では約300mOsm/kgですが、なぜ等浸透圧造影剤(IOCM)(若干高浸透圧剤であるにもかかわらず)と言われるのでしょう。

「張度tonicity」という用語もよく使うので、ここで簡単に説明しておきましょう。「張度」は浸透圧に関する言葉で、組織や体液──これは通常は血漿のことですが、その浸透圧と比較して高いか低いかを表わします。溶液の浸透圧が血漿と同じ場合が等張で、高ければ高張、低ければ低張と言います。

復 習


容積浸透圧と重量浸透圧の違いは何でしたか? 重量浸透圧は溶液1kgあたりの粒子数で、容積浸透圧は溶液1リットルあたりの粒子数ですね。
血液の重量浸透圧はほぼ300mOsm/kg。イオン性造影剤の重量浸透圧は最大1800mOsm/kgで、高浸透圧です。低浸透圧とされる非イオン性モノマー型(300mgI/mL)は通常600~700mOsm/kgほどで、これでもまだ血液の浸透圧の2倍です(高張)。非イオン性ダイマー型の浸透圧は約300mOsm/kgで、これは等浸透圧(=等張)ということです。ここまで、よろしいですか?